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AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

「グレート・ディベーター 栄光の教室」

 Yahoo!GYAO!で6月14日まで「グレート・ディベーター 栄光の教室」(☜ここをクリック)が無料視聴できます。直前の、ディベートのない会議の記事の下に追記しようかと思ったけれど、それはあまりにも皮肉過ぎるだろうから新規投稿にする。

■内容・ストーリー
1935年アメリカ、テキサス州マーシャル。人種差別が色濃く残るこの街には「白人専用」施設があふれ、黒人たちは虐げられていた。この歪んだ社会を正す方法は「教育」だけ。そう信じる教師トルソンは、黒人の若者に立派な教育を施すという夢の実現に向け、ディベート(討論)クラスを立ち上げる。そして、彼の熱意に触発された、勇気ある生徒たち。やがて討論大会に出場し始めた彼らは、黒人というだけで経験してきた悲しい過去や秘めた怒りを「言葉」という武器に託し、大勢の観客たちの心を動かしてゆく。だが、彼らの活動が、人々の注目を集め始めていた矢先、トルソンの言動を「過激すぎる」と問題視した学校側は、ディベート・クラスにまで圧力をかけ始め……。
■キャスト・スタッフ
デンゼル・ワシントン フォレスト・ウィテカー デンゼル・ウィテカー ネイト・パーカー ジョン・ハード ジーナ・ラヴェラ
製作:トッド・ブラック 監督:デンゼル・ワシントン 脚本:ロバート・エイゼル 撮影:フィリップ・ルースロ 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
■視聴時間
02:07:08
(C) 2007 THE WEINSTEIN COMPANY, LLC All Rights Reserved
■配信期間
2017年5月15日~2017年6月14日

どこかで聞いたセリフが出て来たよ⇒「多数派が反発している間は実現しない」(00:55:14)。「多数派の支持が必須となることです」(1:50:30)
まるで「有識者」のT氏や某協会の理事長は、この映画を観ていたかのようだ!

「善悪を決めるのは多数派ではなく、人の良心です」(1:50:40-44)「私たちは決して負けてはなりません、多数派という暴君の前に」(1:50:55-51:00)「正義なき法は法にあらず」(1:55:08)

第9回アイヌ政策推進会議

 前3回の政策推進作業部会の議事概要が公開されないまま、第9回アイヌ政策推進会議が開催されたようである。密室の談合とか秘密会議とか批判されようがお構いなしに開き直ったという感じか。今日という日にこんな悪態をつきたくはなかったのだが。
 リンク先の資料はまだ何も読んでいないから、何も書かない。

平成29年05月23日  第9回アイヌ政策推進会議が開催されました。 (議事次第・配布資料 )

アイヌ政策推進会議(第9回)議事次第

日時:平成29年5月23日(火)14:10
場所:総理大臣官邸 2階 小ホール

1.開会

2.議 事

(1)政策推進作業部について
(2)意見交換
(3)その他

3.閉会

(配布資料)
資料1-1 政策推進作業部会報告(概要)
資料1-2 政策推進作業部会報告
資料1-3 政策推進作業部会報告(関係資料)
資料2   小・中学校教育におけるアイヌに関する教育の充実について
参考資料1 アイヌ政策推進会議の開催について
参考資料2 アイヌ政策推進会議名簿
参考資料3 「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」報告(平成21年7月)で提言された政策等の推進状況について
参考資料4 大学等におけるアイヌの人々の遺骨の保管状況の再調査結果
参考資料5 研究RT最終報告書(概要・本文)

 資料の一つひとつにリンクを張ることも可能だが、そこまでする必要もなかろう。

「琉球人骨問題を考える」シンポジウム


今はお知らせのみ。

こちらも⇒「沖縄の人権侵害告発 国連宛て報告公表、研究会がシンポ」琉球新報、2017年5月22日 06:30.

P.S.(05.24):最近は他人のブログを訪問して味わう時間もなかったけれど、某読者のブログから久しぶりに2つほど訪ねてみた。いいブログを書いてるなというのが率直な感想。今日という日をきっかけに、ひっそりと自分の人生を振り返り書いていくブログを作ったりできると良いのだが・・・。「聞いて下さい、私の人生」を・・・とか。

アイヌ遺骨の所有権 (w/ P.S. X 2)

 5月16日に北大開示文書研究会の共同代表をはじめとする7名の連名で「アイヌ人骨研究利用に関する札幌医科大学への質問書」が札幌医科大学の担当者に提出された後の記者会見で、次のようなことが述べられている。

医大からひとつ、口頭ですけれども言われたことは、(遺跡調査時に発掘され、そのほかの遺物とワンセットにされて)文化財としての遺骨というものがあって、それは(調査を実施した各自治体)教育委員会所有権があるのであって、「わたしたち(札幌医科大学)には所有権はありません」とおっしゃってましたね。その言葉に納得したわけではありませんけれども。従って、「教育委員会の了解を得て研究が行なわれたのである(から札幌医科大学の対応に問題はなかった)」というふうに医大のほうは話をしておりました。「北海道アイヌ協会の了解も得た」とも言っていました。

 私は、札幌医科大学文化財保護法の庇護の下に逃げ込んだなという印象を持ったのであるが、そもそも教育委員会に[遺骨に対する]所有権がある」のかということを問いたい。回答が出るのはまだ先のようでもあるし、北大開示文書研究会他の関係者からもっと情報が公開されるのを待ちながら、今週以降、もし時間と体力とやる気があれば、このことについて書くかもしれない。(2017/05/22:rev.)


P.S.:その前に、2つ前(後で1つ前になる)の「ご質問にお答えして」の最後で参照している文献について少し補足しておきたい。

 「久しぶりに流し台の下のタンクの中を覗き込んだらバカバカしくなって」と書いたのが11月26日の深夜(27日になっていた)だったから、その夜に気づいたことである。この記事のP.S. #4で書いたように、検索で挙がってきた写真を見ていたら、そこにどこかで見たことのある外国人の写真があった。それから辿ると、2013年11月15日~17日に開催された「北海道大学サステナビリティ・ウィーク2013 国際シンポジウム『先住民文化遺産とツーリズム-生きている遺産の継承と創造-』」の案内に行き着いた。そこに、ジョージ ニコラス氏とジョー ワトキンズ氏の名前がある。2人は、IPinCHというカナダの非営利法人の代表とメンバーである。IPinCHはThe Intellectual Property Issues in Cultural Heritageという団体の略称で、邦訳すると「文化遺産における知的財産問題」となる。この方たちを含む報告者の講演録(または報告)は、普段訪れない北大のアイヌ・先住民研究センターのサイトに不慣れなこともあるせいか、サイト内のどこにも見つけることができなかった。「研究成果」のページの冒頭には「『先住民族の権利に関する国際連合宣言』などの翻訳もおこなっています」とも書かれているのだが(2016年11月25日時点で。)北大の研究センター教員も入っていたラウンドテーブルの「報告書(案)」(この時点では、まだ「中間報告」)でも「社会への還元」が強調されているが、詰まるところ、それは政府から配分された多額の予算を使って海外から次々と研究者を呼び、交流会をもち、論文を書いてそれまでという感じを受けた。
 「A Double-edged Sword(諸刃の剣)」のシリーズは、2つ前の記事で参照したカナダのバンクーバーで2015年にIPinCHによって開催されたシンポジウム報告書を基に適宜、解説と補足を加えたりしながら書いていたのであるが、あまりに長くなりそうだったし、研究資源豊富な研究者たちはその報告書に気づいてオリジナルのシンポジウム報告書を読んだり、録画を観ていることだろうと思うと、途中で作業が虚しくなって中断してしまったというわけである。そのシリーズの中で言及した国際シンポジウムというのが、この2015年のシンポジウムであり、IPinCHによって開催されている数々のシンポジウムや講演会などの活動の1つであった。さらに、常本照樹氏も賛同者に署名していた「聖地および文化的景観としての先住民族の祖先埋葬地の保全に関する宣言」も、同団体主催のシンポジウムの中で採択されたものである。そういうわけで、常本氏がその文書に署名していた背景も推察できたというわけである。
 これはもう「「歴史の抹殺」!――やはり変わる気のない「人骨学者」」でつながりを書いたことではあるが、「A Double-edged Sword:遺伝人類学と先住民族の権利(3)」でフィリップ ウォーカー(Phillip Walker)が批判的に取り上げられているのを見て、同センターの若き考古学者はドキッとしたのではないかと思っていた。このシリーズの(3)以外にも、ウォーカーについては、2012年1月28日の「人体『標本』返還と脱植民地主義(先住民族の「遺骨」と原爆犠牲者の臓器)」でも言及している*1
 最後に、IPinCHのシンポジウムで興味深いのは、講演者がそれぞれ冒頭の挨拶で"unceded territory of ~"(~の割譲されていない領土)と述べて、開催の地の先住民族に敬意を表することである。私は、ここで「未割譲アイヌモシリ」と書いたことがあるが、北大に招かれた2人がその時にそういう挨拶をしたのか、常々、研究センターの方々がそういう意識を持たれているのかは、知る由もない。


P.S. #2(05.23):先に少し書いてくれた人がいます。

【札幌医大側の論理】

所有権は教育委員会にあり札幌医大教育委員会から委託を受け預かる、つまり民法の寄託契約(民665以下)に基づき保管しており、医大側は教委にのみ善管注意義務保管義務を負い第三者のアイヌ(遺族にも)責任はないというのだ。

*1:この記事は、いずれまた、「人骨学者」たちの主張を批判する際に再度参照することになるだろう。

日本の中の韓国・朝鮮文化財を考えるビデオ上映・勉強会

日本の中の韓国・朝鮮文化財を考えるビデオ上映・勉強会


■日時:6月4日(日)午後2時00分~4時30分
■会場:大阪経済法科大学・東京麻布台セミナーハウス(4F中研修室)
■DVD上映 韓国KBS制作「崔泰成(チェ・テソン)・李允錫(イ・ユンソク)の歴史紀行」
第1部 千年の記憶・・・九州(博多、名護屋城、加唐島、熊本城) 2016/10/30、
第2部 火の地  ・・・鹿児島(薩摩焼、知覧、種子島桜島)  2016/11/6
*通訳・解説=李洋秀さん
■参加費 500円 <予約不要>

【講師略歴】李 洋秀(い やんす)
1951年生、在日韓国人二世。「日韓会談文書・全面公開を求める会」事務局次長、「韓国 ・朝鮮文化財返還問題連絡会議」世話人大阪経済法科大学客員研究員。
主な論文に、「韓国側文書に見る日韓国交正常化交渉」(季刊『戦争責任研究』53~57号)、「日韓会談と文化財返還問題」(季刊『戦争責任研究』72号)。
編著に黄壽永編『韓国の失われた文化財』(三一書房、日本語版)。
 1997年からKBSテレビ(韓国放送)の日本側コーディネーターとして100本以上のドキュメンタリー番組制作に関与。

(呼びかけ)韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議+東アジア歴史・文化財研究会 
(連絡先):☎03-3237-0217・080-5079-5461 Fax03-3237-0287 E-mail: kcultural_property@yahoo.co.jp
     URL: http://www.asahi-net.or.jp/~vi6k-mrmt/culture/korea/index.html

 直上のURLの先に、「文化財の返還 その歴史的変遷」という有用な年表があります。(英文の情報は前に入手していたのだが、翻訳するのが面倒だった。これで、将来、手間が省けそう。)

P.S.はてなブログは書き易い。だが、「アクセス解析」には不満がある。「アクセス数」となっているが、実際はビュー数だそうだから、アクセクして書いても、真の反響が分からない。昨日も今日も、3つほどの時間帯に「アクセス」が集中している。同じ数人があちこちの記事を閲覧しているだけというのも、無きにしも非ず――もちろん、その方たちに文句を言っているのではない。

P.S. #2(05.22, 0:40):東京での会だからと思って下書きに戻したら、読者から「削除しないで」と抗議が来た!(笑)

ご質問にお答えして(百々・篠田両氏の琉球調査)+P.S.

 ☆さま、今朝戴いたご質問に、私の保存ファイルからお答えいたします。このブログの基本原則でもありますが、どちらもインターネット上で入手可能でした。1)は、現在はアクセス不能になっているようです。強調は、私の追加です。

1)百々幸雄氏:

 (略)野外でできる仕事はないだろうかと思案していた学部1年生の時、たまたま旧解剖棟の資料室で塩竃市の洞窟から発掘された頭蓋骨とめぐり合いました。薄明かりの中に不気味に輝いていた骸骨の顔に惹かれて一生の仕事が決まったといってよいと思います。(略)

 (略)大学や博物館にない資料は自分で発掘して集めました。これがたまらなく面白くてとうとう定年まで止められず、これからも息の続く限りは続けていくことになると思います。

 (略)最初は1985年から5年かけて行った北海道伊達市の離れ小島にある有珠モシリ遺跡です。この調査では北海道の続縄文時代の人骨がたくさん発見され、東日本の縄文人が続縄文人を経て北海道のアイヌに繋がる系統関係を明らかにしました。

 次に1992年から6年間、琉球大学との共同研究で奄美諸島沖縄本島、それに宮古八重山諸島風葬墓の調査をしました。この調査では、アイヌ琉球人が同系であるという従来の説を否定するような結果が得られました。この問題は現在も論争が続いておりますが、私たちはやるだけのことはすべてやったので今でもびくともしていません。
(略)
 このような研究が一体何の役に立つのかと誰もが疑問に思うだろうし、私自身も苦慮しております。“かつて中央から 蔑まされ、時には鬼や獣にさえ例えられてきた東北地方や北海道の住民が、実は日本列島固有の日本人である縄文人の血をより強く引いている人たちに他ならない”という事実を明らかにしたことに多少の価値があるのではないかと思っております。40年もやった割には私の研究には特に目新しいことはありません。日本の人類学は百年以上の歴史がありますので、ほとんどの事はもうすでに誰かが言っております。新しい研究方法を用いて可能な限り多くの資料を調べ、先人の説を補強したり検証したりしたといったところでしょうか。
 東北大学では10名以上の大学院生が研究室に来てくれました。いずれも“がらくた”ばかりでしたが、金メッキや銀メッキをしてどこかに売り飛ばすことができました。(略)


「フィールドに出た解剖学者 東北大学大学院医学系研究科 人体構造学分野教授 百々幸雄」 http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/34601/2/dodo-yukio(2)-06-07-0004.pdf

2)篠田謙一氏:

Abstract Yonaguni-jima is the westernmost island in Japan. Because of the geographical position of this island, it is considered to have played an important role as a route of migration from the southern part of Asia to the Japanese archipelagos. In order to investigate the genetic structure of the ancient Yonaguni people and to assess their genetic relationship with other East Asian populations at a molecular level, we analyzed the hypervariable regions (HVR) 1 and 2 of the mitochondrial DNA (mtDNA) from 16 tooth samples excavated from the old tomb of Suubaru, located on the north coast of the island. This tomb, which belongs to the early modern to modern periods, contained 32 graves. The distribution of mtDNA haplotypes among the skeletal remains obtained from the cemetery indicated the existence of several different maternal lineages. The mtDNA sequences can be tentatively classified under specific haplogroups on the basis of mutations in the HVR1 and HVR2 regions. The frequencies of these haplogroups were compared with those of haplogroups present in Asian populations. The fact that the haplogroup M7a was found at a high frequency and that dominant haplogroups of Northeast Asian populations were found among the Suubaru people indicates that the Okinawa mainland had an enormous influence on the formation of the modern people in Sakishima Islands.

(略)


Materials and Methods


Archaeological site and specimens
The human skeletal remains used for the analysis were obtained from the old tomb of Suubaru, which is located toward the north coast of Yonaguni-jima (Figure 1). As a part of the airport expansion project that was undertaken in Okinawa Prefecture in 2004–2005, the site was fully excavated by the government to obtain any items
of cultural significance that may have been buried. At least 77 skeletons were excavated from 32 graves. On the basis of the funerary objects procured, it was concluded that the tomb belonged to the early modern to modern period.
The skeletons excavated generally had a lower face and long head—a characteristic similar to that observed in the modern Okinawa population (Figure 2). The average height of the skeletons was estimated at 157.5 cm for males and 144.6 cm for females, indicating that the ancient humans were fairly short in stature. Further, periostitis was observed in the lower limb of many of the skeletons; this indicated that the people had been exposed to severe environmental conditions
(Doi, 2007).
A total of 16 remains obtained from 12 graves were selected for the DNA analysis. Of these samples, 3 were collected from a single skeleton in order to verify the authenticity of the retrieved DNA. Almost all the samples were collected from the surface of the tomb chamber.
(略)


DNA Extraction and purification
The tooth samples were dipped in a DNA-OFF solution for 5 min to eliminate contamination, rinsed several times with DNase-/RNase-free distilled water, and air dried. When the samples were completely dry, they were pulverized in a mill (Multi-beads shocker MB400U; Yasui Kikai, Osaka, Japan).
DNA was extracted in 2 steps by using a DNA extraction kit (Mo Bio Co.). The pulverized tooth powder (0.3 g) was placed in a 15-ml conical tube and demineralized in 5 ml of 0.5 M ethylenediamminetetraacetic acid (EDTA). The samples were rotated and incubated at 37°C for 12–15 h. After digestion with proteinase K (0.5 mg/ml), the resultant pellet was used for DNA extraction. The eluted DNA (approximately 50 mμl) was amplified by PCR, without prior processing.


Ken-ichi Shinoda and Naomi Doi, "Mitochondrial DNA Analysis of Human Skeletal Remains Obtained from the Old Tomb of Suubaru: Genetic Characteristics of the Westernmost Island Japan," Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. D, 34 pp. 11–18, December 22, 2008.

関連記事:「聖地および文化的景観としての先住民族の祖先埋葬地の保全に関する宣言」

P.S.

 明治以降、アイヌ人骨を用いた研究論文は500編以上発表されている。しかしその結果は、研究者には共有はされたものの、アイヌの人々に知らされることはなかったし、研究者もそこから得られた知見を積極的にアイヌの人たちに向かって発信しようとはしなかった。このことが今なお、アイヌの人々の間に研究者に対する不信感を残す結果となっている。この点は研究者が反省すべき点である。(略)人骨という倫理問題が付帯する対象を扱っている研究者が社会全体への成果の還元を疎かにすることは、将来にわたる研究基盤を失う重要な問題であることを自覚すべきであろう。少なくとも自然人類学の分野では、研究者を育てていくシステムの中で、倫理の部分をどのように教育していくかを真剣に考える必要がある。


篠田謙一「人骨標本と人類学」『学術の動向』(2015.5/前掲)、19ページ。

社会還元の関連:この点は、ラウンドテーブルの「報告書(案)」にも出ていたが、やはりこの人の主張だったようである。しかし、この点を北海道アイヌ協会の加藤理事長も強調しているようにはなっているが、基本的にこの方の認識は誤っていると思われる。まず、明治以降のアイヌ人骨を用いた研究論文がそのままアイヌに知らされなかったから「研究者に対する不信感」が残っているという勘違いがある。そしてそこから、それらの論文が知らされていたら、そのような不信感がなかったのではないかと考えているかのようである。「報告書(案)」のところでも書いたが、それらの多数の論文がどのような前提(偏見)に基づいて書かれていたのか、そして流布された範囲でどれだけの被害をもたらしたのか、この方は検証した上で述べているのであろうか。仮にそれがもっと広く社会に知らされていたら、アイヌへの被害は、むしろもっと拡大していたかもしれないのではないか。

Japan is an ethnically stratified society where those called "Okinawans" and "Chinese" often suffer discrimination. Injecting constructions of genetic differences that map onto these folk terms may have consequences that such studies may not intend.


Joan H. Fujimura and Ramya Rajagopalan, "Different differences: The use of 'genetic ancestry' versus race in biomedical human genetic research," Soc Stud Sci. 2011 February; 41 (1), p. 17, fn. 26.

 例えば、今日、こういう認識の方が重要であろう。

DNA “hype” is problematic. The popular perception that ancient DNA analysis is a highly specific and precise venture is largely the result of an oversimplification of the results, with less attention paid to the nuances inherent within the data. That it can provide absolute answers is often a fallacy. What is often ignored in media stories is that factors such as sample size and type of DNA (mtDNA vs. whole genome) can affect interpretation of research results and the ensuing conclusions that are shared with the public. Mis-information and misinterpretation of genetic data by scientists, the public, or by specific interest groups, can detrimentally affect Indigenous groups whether by omission, oversimplification, or downright error.


G. Nicholas and A. Walker, "Towards a Better Understanding of Indigeneity and DNA," DNA and Indigeneity: The Changing Role of Genetics in Indigenous Rights, Tribal Belonging, and Repatriation (Symposium Proceedings, Vancouver, British Columbia, Canada, October 22, 2015), p. 56.

倫理教育の関連記事:「札幌医科大学との「覚書」の報道についての覚書」

「歴史の抹殺」!――やはり変わる気のない「人骨学者」(w/ P.S. X 3)

 アメリカやオーストラリアなどでは、過去に大学等の研究機関が収集した先住民の遺骨を埋め戻すrepatriationが行われている*1。これは先住民と研究者の間に政治家が関与した結果、実施された施策だが、一見、人道に則ったこのような解決方法は、歴史の抹殺にもつながりかねない危険性を持っていることに注意する必要がある。文字を持たない社会の成り立ちや現在の集団との関係を知るためには、人骨はほとんど唯一の情報源である。そのような人骨を研究者が永久にアクセスできない環境におくことの危険性*2を認識すれば、将来にわたって人骨標本が私たちの社会の成り立ちを考える上で有益な情報を提供できる環境を整備することが必要となるはずである。


人骨標本と人類学 - J-STAGE Home
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/20/5/20_5_15/_pdf
篠田謙一 著 - 2015

 あとで整理しなおすが、取り急ぎ、この記事のP.S. #2とP.S. #3(特にその中のフィリップ ウォーカー(Phillip Walker)の発言)と比較されたい。フィリップ ウォーカーの論文は、先日言及した(今は下書きに戻している)記事でリンクしておいた北大遺骨返還室の副室長、岡田氏が数多く参考文献に挙げていたことに気づかれた方もいるだろう。

P.S.(05.19, 22:45):「先住民と研究者の間に政治家が関与した結果」⇒そういう政治家さえいないこの国で、先住民族と国家の間に人類学者が関与して、歴史ではなくアイヌ民族を抹殺しようとした歴史はどうなるのか? そもそも、歴史って死ぬのか? ここここで取り上げた問題も、篠田氏にしてみれば、歴史を「抹殺」から救うためなのであろうか、それとも?

 「整理しなおす」と書いたが、2015年の論文のようでもあるし、急いて書くこともなかろう。アイヌ政策の遺骨返還方針が転換されようとして、今は「政治家」もどきの動きをしているのではないのだろうか。

 とうとうアイヌ総合政策室は、「議事概要」を今週も公開しなかった。政府用語では「議事概要」とは会議の議事の概要を記録するものではなく、会議が終わった後に辻褄の合うように、また有力「有識者」の都合のよいように書き換えられるものの呼称であるようだ。

 ところで、面白い話を耳にしたのであるが、最近、某医大に酔っぱらった感じのトドが迷い込んだらしく、死んだ後は自分の存在が消えないように剥製にしてもらうと申し出たそうである。トドの詰まりは、自由意思による献体と不法な墓荒らしで得られた「標本」との違いを理解できていなかったらしい。

P.S. #2(05.20):アイヌ人骨研究利用に関する札幌医科大学への質問書と記者会見のようす。読むべし。

P.S. #3(05.20, 22:50):上の引用に脚注1・2の形で若干のコメントを入れたが、それ以外にもっと大きな問題があることは明白である。

*1:相変わらず、同じことを繰り返している。この浅薄な認識については過去にもとりあげた。また、遺骨を埋め戻すことはreburialといい、repatriationと同義ではない。なぜこれだけ英語のままなのか。日本語にすると「埋め戻す」とならないからか?

*2:研究者の特権意識プンプンである。1行目にある「大学等の研究機関」もそう言って盗掘したり、わずかな金銭や物品で買収して遺骨を奪取したのではなかったか。その危険性を回避するために、そして外部の人間から聖域を守るために、ハワイイの事例などでも分かるとおり、秘密裡の場所に埋め戻されているのである。