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AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

独から返還決定のアイヌ民族遺骨/琉球独立/政策推進作業部会

「独から返還決定のアイヌ民族遺骨 偕楽園で盗掘 北大教授が確認」北海道新聞、3月14日)
 全文は、ここで読むことができる。
P.S.:「ドイツのアイヌ遺骨」に力を入れている毎日新聞ではなくて道新というのが面白い! 記事の執筆者にも注目だ。北海道新聞は、とうとう札医大アイヌ遺骨研究に関する共同通信配信の記事を取り上げなかったようであるが、遺骨返還と「慰霊・研究施設」への遺骨集約に関する方針を変更したのだろうか。)

「現実味を帯びる「琉球独立」 歴史的第一歩を踏み出すか!?」〈週刊朝日〉

2時間の予定で開催されたらしい政策推進作業部会(第29回)から1カ月。今日中に議事概要は公開されるのだろうか。
P.S.:やはり公開されなかった。)

『ウレシパ・チャランケ』No.54(目次)

イヤイライケレー            
  末期資本主義と沖縄           ・・・・・・・・・・・・・・1

オシケオップアイヌ(8)          ・・・・・・・・・・・・・・8

木村二三夫の叫び              ・・・・・・・・・・・・・・12

カムイ達(3)               ・・・・・・・・・・・・・・14

落合准教授講演への抗議・申し入れに関する経過 ・・・・・・・・・・・・22

アイヌ語地名考(14)オコツナイ、オコッペ 
 ――なぜ神武天皇は「二川がつくる水垣郷」を目指したか(2)――
                      ・・・・・・・・・・・・・24
概念の諸構造(12)――群論・自然学・神話論理―― ・・・・・・・・37

ト ピ ッ ク ス               ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45

編 集 後 記                ・・・・・・・・・・・・・46

会報『ウレシパ・チャランケ』一口解説   ・・・・・・・・・・・・・・・・46


1部100円(送料込み)。購読申し込み・問い合わせは、こちら。⇒senjuuminzokukenri1993/yahoo.co.jp(/の代わりに@を入れて下さい。)

U.S. judge rules against tribes seeking to stop Dakota pipeline

U.S. judge rules against tribes seeking to stop Dakota pipeline
By Timothy Gardner, Reuters, March 8, 2017.


(Reuters) - A U.S. judge on Tuesday ruled against Native American tribes seeking to stop the Dakota Access Pipeline as their legal options narrow weeks before oil is set to flow on the project.


Judge James Boasberg of the U.S. District Court for the District of Columbia rejected the tribes' request for an injunction to withdraw permission issued by the Army Corps for the last link of the oil pipeline under Lake Oahe in North Dakota.

印象操作(or manipulation)

 安倍首相が多用し、国会で流行りつつある言葉のようであるが、去る第28回政策推進作業部会の議事概要で「印象操作」だなと感じた一文があった。ブログのペースを落としている間に、書き留めておくことにする。次の2つの文章を比較されたい。1つ目①は、北海道アイヌ協会の加藤理事長が世界考古学会議で行なった演説の草稿が同協会のサイトで公開される前に、同協会の誰か――おそらく佐藤氏であろう――が第28回政策推進作業部会で行なったその演説についての説明である。そして2つ目②は、加藤氏の演説草稿からその説明に対応する部分を引用したものである。読者が比較参照する労をなるべく軽くするために、引用は、短く、部分的に抜いてある。前の部分を比較されたい方は、それぞれの原文に当たって戴きたい。

(略)次に「ほとんどの日本国民は、明治後期、1910年に「北海道」が「樺太」や「台湾」同様「植民地」との認識の下に、国内法「外国人土地法」が制定されたことを理解しておりませんし、翌1911年、ロシア、アメリカ、イギリス、日本との間でインディアンやアリュート同様にアイヌ先住民族であるとの認識の下に、独自の狩猟権を求めた国際条約「猟虎オットセイ条約」が結ばれた歴史があることを理解しておりません」としている。要するに国内外にアイヌ先住民族だということをこの時点ではっきりと国として法律的にも認識して海外と交渉しているということを発言している。「日本国のオリンピックの初参加よりも8年早く、アイヌ民族が1904年のセントルイスオリンピックに「人類学の日」と称した先住民族の付属イベントや競技に参加」して展示された。この前年にも大阪・天王寺で開催された内国勧業博覧会において沖縄の方も一緒に展示された。なお、沖縄はアイヌや台湾と同じく展示するとは何事だ、「土人」ではないということを新聞社を挙げて反論を示している。(略)そして最後に「「世界考古学会議全体会」として、今後の日本国内での先住民政策の取組について国際的な後押しと、継続的なモニタリングを続けて頂き、遺跡や遺構、先祖の営みから将来の先住民族の生き方や精神的、哲学的な価値観を見直し、再活性化するような支援機能を考えて頂ければ幸いと思います」としている。(略)


第28回政策推進作業部会議事概要、3-4ページ。

Cf. 2016-12-08 第27回・第28回政策推進作業部会議事概要

 ほとんどの日本国民は、明治後期、1910 年に「北海道」が「樺太」や「台湾」同様「植民地」との認識の下に、国内法「外国人土地法」が制定されたことを理解しておりませんし、翌1911 年、ロシア、アメリカ、イギリス、日本との間でインディアンやアリュート同様にアイヌ先住民族であるとの認識の下に、独自の狩猟権を認めた国際条約「猟虎オットセイ条約」が結ばれた歴史があることを理解しておりません。

 さらに大戦後は、手の平を返したようにアイヌ民族を民族とも認めないとした公的差別が、戦後1945 年(昭和20)から1991 年(平成3)まで続いてきた事実についても理解しておりません。

 日本国のオリンピックの初参加よりも8 年早く、アイヌ民族が1904 年(明治37)のセントルイスオリンピックに「人類学の日」と称した先住民族の付属イベントや競技に参加していましたが、その意味やその背景が何であるかを知って頂きたいのです。

 1956 年(昭和31)の現行憲法下、ILOから世界各国に照会があった98項目の質問文書「独立国における先住民に関する生活と労働について」に、我が国政府が実態とは全くかけ離れた報告により、先住民族アイヌの存在を無きものとしています。


「『世界考古学会議』全体会での加藤理事長発表原稿」、3ページ。

Cf. 2016-12-30 北海道アイヌ協会、加藤理事長の世界考古学会議での講演原稿

 ①の「そして最後に」以下は②に出していないので不要なのであるが、②の2-4段落に言及していないことが分かるので引用に含めた。私がここで最も注目したのは、赤字で強調している部分である。第28回政策推進作業部会は昨年11月7日に開催されており、この時期には10月中旬に沖縄での機動隊員による「土人」発言が問題となり、それがアイヌ民族に対する差別の歴史と関連付けられる動きが出て来ていた*1。この一文は、アイヌは沖縄のメディアからも差別視されていたという複雑な歴史を指摘したいがための挿入とも読めるが、それ以上に、「土人」発言に含まれる蔑視観によってアイヌ民族琉球を結びつけようとする動きに対する政治的牽制であり、分断の意図をもった挿入であろうと受け止めていた。

P.S.(03.03, 21:42):官公庁はお休みだろうから、週末限定で開けておく。

P.S. #2(03.05, 14:30):2年半前に一度失敗したことであるが、また読者を限定して続けるか、休止しようかと思案中である。暫く、どういう方法で行うか試行錯誤しながらやってみる。

P.S. #3(03.06, 1:30):入口で*2リンダ ロンシュタットの曲*3を使った後、YouTubeで彼女のアルバムをかけたまま某氏の著作の翻訳をしていると、この曲が流れていたから1曲だけの投稿を探し出した。初めて聴いた。こんな感じの曲が好きである。
Linda Ronstadt - Heartbeats Accelerating posted by Mitch S.

 この動画の投稿者はミッチという人だが、某氏の親友で私の友でもある、この前手術をしなければならなかった人がミッチという名前というのも何かの因縁だろうか。

*1:Cf. 2016-10-19 「土人」2016-11-01 日本のメディアは、いつまで「酋長」を使うのか!

*2:答えは、先週、最後のヒントで変えたものと同じなのだが、分からないとのことなので変更した。

*3:♫Just One Look♫

札幌医科大学との「覚書」の報道についての覚書(+P.S. X4)

 2つ前の札幌医科大学でのアイヌ遺骨のDNA研究に関する新聞記事にいくつもの疑問が湧いてきて気が散って仕方がないので、覚書として書き留めておく。

 ブログに貼り込んだのは産経新聞の記事で、その時点でこれが一番詳しいということのようなのでそれを使用した。その後、現在までにそれ以上の記事を目にしていない。発信元は共同通信(2/26)と聞いていたが、同社の記事は僅かに2段落、そしてそれを利用したものと思われる西日本新聞京都新聞も同じ内容であった。

 しかし、3カ所ほどを巡り巡って手元に届いた掲載紙が今のところ不明の記事は、北海道アイヌ協会の解説を含めると6段落で、インターネット上に出回っている記事よりも量が多い。産経新聞の記事でも、後半の2段落が抜けている。この2段落には、札幌医科大学長と覚書を交わした加藤理事長の名前が出ていて、佐藤氏のコメントも出ている。また、山梨大教授のコメントも出ているが、名前(安達登氏であろう)は伏せられている。上の方の段落には「国立科学博物館の研究者」も出ているが、これが篠田氏(であろう)ということも伏せられている。妙に政治的な仕掛けの臭いがする。

 遺骨のDNA研究によって「アイデンティティーを調べる」という佐藤氏は、まったく見当違いをしている。彼がそう信じているのか、信じ込まされているのかは分からないが、どちらにせよ問題である。そして、「研究開始当時、地域ごとの同意は必要とされなかった」と「山梨大大学院の教授」は述べているが、研究は2010年から行ったようであり、この発言も批判的に検証される必要がある。「『嫌がっているものを無理にしてはいけないと思っている』とし、アイヌの意向を尊重する考え」ということは、今後は行わないということなのか。これまでに取得した遺伝情報は、どうするつもりなのだろうか。

P.S.(03.02, 14:50):解説を含めて6段落の記事は、沖縄タイムスに出ていたとのことである。「本土」あるいは「内地」の新聞は、全文を出さなかったということか!?

P.S. #2(03.03, 2:10;rev. 03.03, 21:40):なぜ「本土」/「内地」のメディアが全段落を、さらにはもっと掘り下げた記事を載せられなかったのか。それは、一つには現在のアイヌ遺骨をめぐる攻防への意味合いを考慮しているということがあるだろうし*1、また、かつて東村氏がアイヌ遺骨の扱いに関して「研究者も新聞社も共犯関係である」と表現したように、アイヌの遺骨や血液からDNAを採取して「日本人の起源」を研究する研究者と、その研究成果を無批判に「社会に還元」してきたマスメディアが「共犯関係」にあることに気付いているからではないだろうか。各紙それぞれが、そのような研究をこれまでどのように広めてきたのかを検証してみるとよいだろう。

 ヘッセを読んだ後、下手な文章を書く気になれなくなっていたので、もっと世俗的な読み物に戻ろうと思い、現在、ボブ ウッドワードの『権力の失墜〈1〉―大統領の危機管理』 (日経ビジネス人文庫、2004年)を読んでいる。「覚書」の記事が出た時には、カーター政権誕生直後のワシントン ポスト紙との駆け引きの部分を読んでいた。まあ、読み物としては、こっちの方が面白い!

P.S. #3(03.04):

最高に有効なスパイ活動とは密告のことである。問題はただかかる活動を絶対に隠しおおし、頑として活動の有無を否定しつづけることである。それは何もりっぱな道徳とか哲学上の争点とかではないのだ。


「理念は常にウソが裏切る」上掲書、127ページ。

P.S. #4(03.04, 13:40):新規投稿が上にあるから埋もれるかもしれないが、話を戻して、ここにいくつか付け加えておく。

北海道ウタリ協会札幌医科大学との「覚書」自体は、榎森進氏の『アイヌ民族の歴史』に載っている。

②私は、この報道について(記事そのものを見る前)知った時、記事中で言及されている2人の研究者と北海道アイヌ協会が別に「覚書」を交わしていて、それが出て来たのかと思った。だとすれば、スクープ記事だなと。
③記事の価値は、ある読者が「ミソ」と書いてきたが、「関係者への取材で分かった」とされている部分であろう。(+タイミングもあるが、それは、ある効果を狙ってのことであろう。)また、その記事を北海道新聞が取り上げていないということから見えてくるさまざまな、恐らく「予期されざる結果」を見せてくれていることであろう。
④かくなる上は、フォローアップ記事で、その「研究成果」がどの論文・著作となったのかも出して欲しい――もうそれは分かっていて、既に検証している人たちがいるみたいだということが、私は使っていないが読者に教えられるツイッターの投稿でチラッ、チラッと見えてくる。

 最近、興味深く読んだ記事に琉球新報「京大に琉球人骨26体 昭和初期から未返還 学者収集」(2017年2月16日 06:30)と、「百按司墓『県文化財に』 今帰仁教委要望 琉球人骨、県と協議も」(2017年2月17日 11:46)がある。
 数年前、ブログで先住民族の遺骨返還運動を取り上げ始めた頃、旧知の琉球人の研究者にお尋ねしたことがあった。その方は超多忙の方なので、「注視しておきましょう」ということだった。
 琉球では「先住民族」(の視点からの取り組み)に関する理解がまだ広がっていないところもあり、またそれに対する拒否感もあるようである。だが、上の2本の記事を読んで、遺骨を掘り返した「研究者」を見れば、それは決して無関係ではないし、また台湾からの返還に関しても、「国際的返還」と無関係ではないだろう。
 もう少し、後で追記したいことがあるが、一旦ここまでにする。

*1:現時点で北海道新聞は、この件に関して沈黙しているようである。

国連人権理事会

Sources: U.S. considers quitting U.N. Human Rights Council
By NAHAL TOOSI and ELIANA JOHNSON 02/25/17 08:52 PM EST


With Trump at helm, US takes seat at UN rights council
By Ben Simon, AFP, February 27, 2017.

キース ハーパーの行方に注目!

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アイヌ遺骨、ルーツ調査でDNA研究 協会と札幌医大が覚書

アイヌ遺骨、ルーツ調査でDNA研究 協会と札幌医大が覚書 「事前説明なし」と発掘地域アイヌは反発産経新聞 2017.2.26 19:55)


北海道内で遺跡調査などの際に発掘されたアイヌ民族の遺骨が、アイヌのルーツを調べるDNA研究に使われていたことが26日、関係者への取材で分かった。北海道アイヌ協会が、遺骨を保管する札幌医大(札幌市)と覚書を交わし、研究も了承。ただ発掘地域のアイヌは、覚書や研究について知らされていないと反発している。

 アイヌの遺骨を巡っては2012年以降、研究目的で保管していた北海道大に子孫らが返還を求めて提訴。昨年、札幌地裁で和解が成立し、遺骨を地元で再埋葬した。原告側は「アイヌにはコタン(集落)で死者を弔う習慣がある」と主張。アイヌ協会元幹部は今回の研究をコタンの子孫とみられる人に「一切周知していない」としており、遺骨の扱いが議論を呼びそうだ。

 札幌医大によると、千歳市浦河町平取町などで発掘された約250の遺骨を保管。10年から国立科学博物館の研究者と山梨大大学院の教授が古い身元不明の骨約100個でDNAサンプルを採取した。人類の移動を調べ、アイヌが北海道に先住していたことを証明する目的という。

P.S.:今回発覚したものとは別の札幌医科大学北海道アイヌ協会との「覚書」については、2014年秋に20ページ(原稿用紙にして80枚)まで書いてそのままにしておいた論稿がある。こんな感じである。

北海道アイヌ協会札幌医科大学の「アイヌ人骨」研究「覚書」
――「モデルケース」を検証する――


1.はじめに
2.札幌医科大学におけるアイヌ「人骨」の保管状況と一部の返還事例
3.北海道アイヌ協会札幌医科大学との「覚書」
4.「単一民族国家」の法としての埋蔵文化財保護法
5.パンドラの箱を開けた北大
6.死者の権利
7.政府(厚生労働省文部科学省)基準
8.UNESCO基準
9.NCAI基準
10.結論

 これにUNDRIP規準と、その後の研究に基づいて昨年夏に書きかけてそのままになっている「先住民族の人体組織研究ガイドライン」(現在9ページ、原稿用紙で約36枚)をくっつけると――単純に付け足すということは難しいが――、薄い本くらいにはなりそうだ。でも、気力はあっても、時間と体力が不足しているのである。

P.S. #2(03.01, 0:20):もうずい分前になるからはっきりと記憶していないが、ブログには出してなかったと思うので、上の3の節をここに抜き出しておくことにする。

3.北海道アイヌ協会札幌医科大学との「覚書」

 「札幌医科大学保管のアイヌ人骨の受入・管理・返還等についての覚書」(「覚書」)の前文には、「人体・人骨に係る研究」について、「当事者と遺族並びに関係者との合意に基づいて行われ、人間の尊厳に十分な配慮をもって行われるべきものである」とされ、同大学における「アイヌ人骨の受入れ・管理・返還等に関わるこれまでの合意や調査は不十分であったため、アイヌ人骨に関する一切の責任に伴う基本的事項について」、両者間で「覚書」が交わされたとの経緯が記されている。
 「覚書」の内容は、次の5項目から成っている。
1.札幌医科大学(以下、札医大)に保管されているアイヌ人骨については、すでに提出した資料の見直しと出自の調査を進め、すみやかに北海道ウタリ協会に報告するものとする。
2.札医大にあるアイヌ人骨の保管と供養ならびに研究のあり方については、故人の尊厳とアイヌ民族の誇りを常に意識し北海道ウタリ協会と札医大が協議のうえ、双方が合意できる形で進めていくものとする。
3.今後、札医大におけるアイヌ人骨の受入・管理・返還その他についての基本方針については、北海道ウタリ協会と札医大との間で協議をおこなうものとする。
4.札医大保管のアイヌ人骨を用いた研究成果は、積極的にアイヌ民族はもとより広く一般に公開し、また将来北海道の医療にたずさわる本学学生等にも北海道の先住民族であるアイヌ民族についての正しい理解に供するよう努めていくものとする。
5.上記事項ならびにその他の事案が生じた場合は、必要に応じ日本人類学会、関係教育委員会および他の関係者・関係機関とも協議をおこなうものとする。


 札医大におけるイチャルパについては、2004(平成16)年10月7日付けの加藤忠理事長から今井浩三学長宛ての「アイヌ民族の遺骨について(照会)」(北ウ第209号)という文書の中で、北海道大学に収集された遺骨に対して当時既に行われていた「慰霊」が参考として言及されており、これがその後の札医大でのイチャルパのモデルとされていると思われる。
 その後、なぜ北大と北海道ウタリ協会との間で、少なくとも札医大レベルでの取り決めやそれに類する合意文書などが交わされなかったのであろうか。2004年当時には北大がモデルとされていたにもかかわらず、今日のアイヌ政策推進会議では札医大がモデルとされるに至っている。さらには、文部科学省の2011年~2012年の調査で11大学が判明した時点で、北海道アイヌ協会は、なぜ札医大に行わせたのと同様の経緯等の報告を各大学に提出させなかったのであろうか。文部科学省から各大学に提出が求められた回答事項は、この文書を参考に作成されたのであろうか。
 以上のように、さまざまな疑問が尽きないが、「覚書」そのものの内容についても、いくつもの疑問が生じる。第一印象を一言で言えば、「人体・人骨に係る研究」の手順について具体的なことは何も明示されておらず、「モデル」となるには甚だレベルの低いものと言わざるを得ない。第1項で「北海道ウタリ協会に報告」された調査結果は、そこから先、どのように取り扱われるのであろうか。これは、協会と他地域のアイヌ協会(旧支部)や協会に所属していないアイヌ民族との問題である。第2項の「研究のあり方」で言及されている「故人の尊厳とアイヌ民族の誇り」の問題、それの「意識」するだけの問題、そして第3項にも出ている「北海道アイヌ協会と札医大」だけの間の「協議」という代表性の問題、「今後」の「基本方針」をどのように向上させていくのか、単なるマニュアルではなく、政府との協定にもっていく方針、第4項の研究成果の還元の方法とそれに伴うプライバシー確保の問題、「知識生産」に関わる非対称の力関係をどう是正し、それを「正しい理解」にどう含めるのか、等々。まとめて言えば、この「覚書」は、今日の「人体・人骨に係る研究」の倫理基準に適合しているであろうか。アイヌ民族は、この「覚書」で十分と認めるのであろうか。公益法人化した北海道アイヌ協会ならびに旧支部は、この「覚書」を「承継」するのか、それとも独自の「覚書」を要求しても良いのではないか。
 しかし、第18回「政策推進作業部会」で公表されたことは、札医大での取組を賞賛し、モデルとして持ち上げた上、遺骨の研究に関して北海道アイヌ協会の理事会が決定し、既に人類学的研究が実施されたことがあるということであった。
 また、北海道アイヌ協会は、札幌医科大学アイヌ遺骨に関しても、何も解明しないままに、なし崩し的に遺骨の研究許可を「覚書」によって与えたことが示唆されている。

(以下、略。)