AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

ロンドン自然史博物館:トレス海峡諸島先住民族への遺骨返還に合意(完訳版)

 以下、ロンドン自然史博物館の2011年3月10日付プレスリリース(報道発表)<http://www.nhm.ac.uk/about-us/news/2011/march/museum-returns-remains-to-torres-strait-islands95251.html>より:

 ロンドンの自然史博物館評議会は、オーストラリア北岸とパプア ニューギニアの間の200以上の島からなるトレス海峡諸島(TSI)に138柱の祖先の遺骸/遺骨を返還することに合意した。
 これは、オーストラリアへの単一の遺骨返還としては最大のものであり、同博物館にとって、遺骨返還に対する新たな協同的アプローチをもたらす画期的な決定である。

 決定は、同博物館とTSI共同体とオーストラリア政府との18ヶ月間の対話に基づいている。博物館とトレス海峡諸島民は今後、遺骨に対する責任をどのように移管するか、そしてどのように遺骨のケアを行い、将来の研究の利用に供するのかについて同意するために共同作業をすることになる。

 互いの関係を深めるため、同博物館は、科学と博物館の技術を共有し、先住民族の視点が博物館の将来の活動にどのように情報をもたらすことができるかのより深い理解を形成するために、博物館で働く職業実習に一人のトレス海峡島民を雇うことを申し出た。

新しいアプローチ
 リチャード レイン(自然史博物館科学部長)のコメント:「対話と相互尊重を通じて、私たちのチームがTSI共同体と密接に作業を行い、英国で初めて、これまで激しく対立してきた事がらにおいて返還請求に対する新しいアプローチの方法を実際に示すことができたことを喜んでいます。

 「先祖の遺骨の返還を考えることは、人類の多様性と起源の科学的研究に対する博物館のコミットメントと、遺骨に関する意味、価値、そして敬意/務めについての異なる文化的視点とのバランスを取ることを要求する複雑かつ繊細な問題です。

 「評議の中で、評議員たちは、同共同体が遺骨に対して持つつながりの強い感情を認め、遺骨のケアに対する共同体の継続的責任に特に留意した。」

 ネッド ディヴィッド(TSIの伝統的所有者=Traditional Owner)の共同体を代表してのコメント:
 「トレス海峡伝統所有者たちは、私たちの先祖の遺骨を返還するという自然史博物館評議会の決定に深く感激しています。

 「この決定は、大きな感動で迎えられ、海外の収集機関が私たちの先祖の魂/霊を安息につかせることの重要性を承認することのける一つの突破と見なされています。

 「私たちは、返還過程におけるこの第一歩と、私たちの文化的責務を促進し、自然史博物館との長期的かつ世代を超えてのパートナーシップをも結ぶ関係を発展させるために博物館とさらに協働する機会を歓迎します。

 「オーストラリア政府の援助を受けての、自然史博物館からの私たちの先祖の帰還は、現在進行中の海外からのトレス海峡諸島先住民族の先祖の遺骨返還における意義深い前進を記し、トレス海峡諸島先住民族にとって、過去に私たちの人々に対して行われた不正義からの癒しの過程における重要な一歩です。

 トレス海峡島民
 約6,000人の島民がオーストラリア北岸とパプア ニューギニアの間の274のトレス海峡諸島に住んでいて、4万人以上がオーストラリア本土に住んでいる。

 トレス海峡の伝統的な人々はメラネシア人に起源をもち、彼らは2つの異なる言語を話す。すなわち、東部諸島ではメリアム マー(Meriam Mir)語、そして西部と中部の諸島では同一言語の方言であるカラ ラゴー ヤ(Kala Lagaw Ya)語かカラ カワ ヤ(Kala Kawa Ya)語のどちらかを話す。

 TSI遺骨
 同博物館は、141の遺骨と軟組織の起源を決定することができた。博物館は、特定の島からの由来がはっきりしている19人の個人を確定した。そして、起源は明らかではないが、トレス海峡諸島の島やニューギニア南部、あるいはオーストラリア北部が起源であることが合理的に確かであると言える119の遺骸・遺骨も確定した。

 所蔵物には、世界の他の地域からの3人の遺骸・遺骨も含まれている。2人のヨーロッパ人と1人の東アジア人であるが、これらは、今後も博物館が保有し続ける。

 TSIの遺骨はどのようにして博物館に到達したのか?
 先祖の遺骨の多数は、マビウアグ島民(Mabiuag Islanders)にとって神聖なプル(Pulu)島の洞窟を起源としている。遺骨は、その共同体がキリスト教に改宗した後に宣教師にそそのかされて移動された。博物館は、1884年にそれを商人から買い取り、そして同年にジョン ダグラス(トレス海峡の元英国政府駐在官)から寄贈を受けた。

 博物館の遺骸・遺骨コレクション
 自然史博物館は、1881年の創設以降に収集されたおよそ2万体の遺骸・遺骨のコレクションを有する。その一部は先史時代に遡るものであり、コレクションの半分以上は英国内から収集されている。

 標本には1本の歯から髪の標本や単一の骨、そして完全な骨格まであり、考古学上の発掘や医療機関や探検家からの寄贈など、さまざまな由来をもっている。

 コレクションの遺骸・遺骨は、博物館と客員研究員によって利用されている。彼らは、人類の進化と変異から病気、医学、科学捜査法、等々の幅広い課題を研究している。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20110315/1300120995

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