AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

礼拝所及び墳墓に関する罪

 盗掘されたアイヌ民族の遺骨に関する新しいブログサイトが立ち上げられたようである。数日前に知人から教えて戴いた。こちら⇒「さまよえる遺骨たち アイヌ墓地「発掘」の現在」(http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/

 アイヌ民族の遺骨問題に取り組んでいる人々は、こちらにもいる。
アイヌ民族の遺骨の盗掘と収集という歴史的犯罪の真実の解明と返還、謝罪、慰霊、賠償について」(http://asahikawaramat.blogspot.com/2010/04/16-2009812.html
「ピリカモシリ」(http://pirikagento.jugem.jp/

 この問題に取り組んでいる団体は他にもあるのかもしれないが、今のところ、わが輩が把握している団体でネット上に情報を提供しているのは上記の3つである。

 ところで、今となっては問題の盗掘自体は時効の対象かもしれないが、墳墓発掘は当時かられっきとした犯罪であった。現行の刑法第24章「礼拝所及び墳墓に関する罪」には次のように規定されている。

公布:明治40年4月24日(法律45号)
施行:明治41年10月1日


第二十四章 礼拝所及び墳墓に関する罪

礼拝所不敬及び説教等妨害)
第百八十八条 神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し公然と不敬な行為をした者は、六月以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金に処する。
2 説教、礼拝又は葬式を妨害した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金に処する。


(墳墓発掘)
第百八十九条 墳墓を発掘した者は、二年以下の懲役に処する。


(死体損壊等)
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。


(墳墓発掘死体損壊等)
第百九十一条 第百八十九条の罪を犯して、死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

 同章タイトルと同じ記事が「ウィキペディア」に掲載されているが、この問題が「適用例」などに出てこないのは、やはりこれまで、この問題が犯罪として広く社会に理解されてこなかったことを反映しているのであろうか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A4%BC%E6%8B%9D%E6%89%80%E5%8F%8A%E3%81%B3%E5%A2%B3%E5%A2%93%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E7%BD%AA

 アイヌ民族の遺骨の発掘が「盗掘」であったことは、現在の人類学の最先端を担っている(このブログにも何回か登場して戴いている)篠田謙一氏も認めておられる。

明治、大正、昭和を通じて、人類学者は各地で人骨の収集に励みましたし、現在でもそれは続いています。・・・・ただし、過去における人骨の収集方法には今の基準で考えて適切ではないものもありました。特にアイヌの人たちの人骨の収集に関しては、時代的な背景を考えると無理もない面もあるにせよ盗掘と思われても仕方のないものもありました。率直に言って私たち人類学者には反省すべき点があります。
(篠田謙一『日本人になった祖先たち』、日本放送出版協会、2007年、142ページ。変色した部分は、わが輩による。)

 青字に変色した部分を読むと、「反省」がどの程度のものなのか首を傾げたくなるが、ここでは赤字部分への注目に限定しておこう。

 因みに、上記「さまよえる遺骨たち」に紹介されている植木哲也『学問の暴力―アイヌ墓地はなぜあばかれたか』(横浜市、春風社[←春秋社ではない]、2008年)の第1章に幕末のイギリス領事館員らによるアイヌ墳墓盗掘事件の経緯が手際よくまとめられているが、当時のイギリスには今日まで改定を経ながら存続している「埋葬法(Burial Act)」というのが存在していて、そこでも墳墓の盗掘は犯罪であった。(http://www.legislation.gov.uk/ukpga/Vict/20-21/81/section/25

 当時のイギリスではそれだけ墳墓盗掘が横行していて社会的な問題となっていたということでもあろうが、かの有名なシェークスピアは、死後、後世に自分の墓が盗掘されないように碑文に呪いの言葉を記していたらしい。

Good friend, for Jesus' sake forbear,
To dig the dust enclosed here.
Blest be the man that spares these stones,
And cursed be he that moves my bones.


良き友よ、お願いだから(=イエスのために)慎しまれよ
ここに葬られし遺体を掘ることを。
これらの墓石に触れぬ者に恵みあらんことを
わが骨を動かす者に呪いあれ。

http://www.docstoc.com/docs/24334936/Shakespeare-Epitaph

 死後に後世まで墓を荒らされないためには、このような「呪い」をかけるか、人を圧倒して寄せ付けないような巨大な墓にするしかないのだろうか。

追記(2011/05/12):わが輩としたことが、遺骨問題に取り組む団体に北海道アイヌ協会を含めていなかった!(インターネット上での情報提供は、あまり行われていないようではあるが。)2005-2006年の活動のフォローアップは、どうなっているのだろう。http://www.ainu-assn.or.jp/about05.html

追記2(2011/05/13):

(旧)刑法 (明治13年太政官布告第36号)


公布:明治13年7月17日
施行:明治15年1月1日(明治14年太政官布告第36号による)
廃止:明治41年10月1日(明治40年4月24日法律第45号刑法の施行による)


第7章 死屍ヲ毀棄シ及ヒ墳墓ヲ發掘スル罪


第264条 埋葬ス可キ死屍ヲ毀棄シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス


第265条 墳墓ヲ發掘シテ棺槨又ハ死屍ヲ見ハシタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス


2 因テ死屍ヲ毀棄シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス


第266条 此章ニ記載シタル罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス


http://ja.wikisource.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95_(%E6%98%8E%E6%B2%BB13%E5%B9%B4%E5%A4%AA%E6%94%BF%E5%AE%98%E5%B8%83%E5%91%8A%E7%AC%AC36%E5%8F%B7)#s2-7


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20110512/1305135974

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