AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

ハワード マーケル氏インタビュー:公共善と死者の権利

 以下に紹介するのは、科学ライターのディヴィッド ドブズ(David Dobbs)氏のハワード マーケル(Howard Markel)氏ヘのインタビューの一部である。マーケル氏はミシガン大学の医学史研究者であり、昨年大きな話題となったツタンカーメン王の遺骸のDNA分析の結果についてアメリカ医学会の機関誌のJournal of the American Medical Associationに長文のコメントを寄稿した人物とのことである。マーケル氏にとって、ツタンカーメン王の遺伝子分析は、どれだけ自由に研究者が死者から情報を得ることが許されるのか、そして我々が死者の願いやプライバシーに対してどれだけの責任を負っているのかという難解な問題を提示することになった。

 ミイラのDNA分析によって得られる医学分野の知識や歴史上の知識の増加について語った後、問題がそれほど簡単で明瞭なものではないことを指摘する。そして、「私たちは皆、そのような身体への侵入(bodily intrusions)から得られる価値が私たちがなさねばならない倫理的、道義的、宗教的妥協を超越するのかどうかを問わねばならない。個人のプライバシーの権利と考慮に対して公共の善を比較検討しなければならない」と述べる。

 ツタンカーメンのケースについては公共の善の方が重たかったという考えを示しながらも、研究調査のために死体を発掘するという行為が増加していることに対して複雑な心境を述べている。

 さらに、実際に科学と死者の両方に対する責任のバランスを取る例として、新型インフルエンザのウイルス研究を例に挙げ、2つの別々の研究チームの調査方法の是非について語っている。

 そして最後に、ドブズ氏が次のように問う。(わが輩にとってはここが最大の関心なので、上の要約が大まかすぎるという方には申し訳ない。)

一つの文化の諸権利が侵害されるかもしれない状況はありますか。私には、博物館によって保持されているアメリカ先住民族の遺骸・遺骨に関する数年前の論争が頭にあるのですが。

 マーケル氏の答え:

そこには多くの文化的・社会的課題に加えて、同意と由来(出所)の問題がありました。これらのアメリカ先住民族の遺物のほとんどは、盗まれたものでした。それらは、掘り出されたり、発見されたりして、それから秘蔵されたり、売られたりしました。まず始めに、これらの物を誰が「所有する」のかという法律的な問題を解決しなければなりません。


一部のミイラの遺骸に関して、このことは今も問題であると考えられます。何百万人もの観光客と同じように、私も大英博物館でミイラを見ることが好きです。でも同時に、それらを見ながら少し気分が悪くもなります。多くは、何の正式な許可もなしにイギリス人探検家たちによって自分の墓から引き離されて、持ち帰られたのですから。長い間、ある国を征服したり、探検した場合に、見つけた物を取得することができるというのが慣行でした。私たちの博物館は、そのような物で溢れています。今日、それをすることはできません。そして恐らく、それらの身体からDNAを抽出することは新たな侵入や奪取となるだろうという感覚があります


私たちはかつて、これらのことについて考えませんでした。しかし、私たちは今日、当然そうあるべきですが、それらについてもっと考えています。このことの何も、ミイラに関してさえ、通常の予想通りに決まりきったことではありません。

David Dobbs, "Questions for: Howard Markel," The Responsibility Project (October 26, 2010) (http://responsibility-project.libertymutual.com/q-and-as/questions-for-howard-markel?src=keyword_s=msn_K=Dna_C=Ethics_G=DobbsMarkel_DNA_M=broad#fbid=EgYGOiL4yB8&src=keyword_s)


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20110608/1307467160

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