AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

2つの点は、線でつながるのだろうか

 夕べの記事に追記するつもりだったが、少し長くなるので新規投稿にする。

 Globe特集に関する夕べの投稿は予定外のものであったのだが、特集の物足りない内容にやや過敏に反応してしまったかもしれない。あるアイヌの方から、先住民族の遺骨の返還事例が報じられているということで、メールで知らせて戴いたこともあり、その方への返信も込めてという感じで書いた。その方がここを訪れているかどうかは知らないのだが。

 天下の『朝日新聞』が特集で取り上げただけでも、良しとするべきかもしれない。しかし、前週の特集内容といい、タイミングといい、誰かがお願いして書いてもらったものなのか、誰かが書かせたものなのか、などと気にならないこともない。

 わが輩も、海外動向の事例として、Globeが取り上げたペルーやオーストラリアの事例をここで紹介したが、本ブログを始めた元々の趣旨から、それらの分析やコメントは控えておいた。

 一点だけ強調して記しておきたいことは、報じられている両方の事例において、対象となる遺骨や遺品の出所地の現在の国家の政府が重要な役割を果たしているということである。例えば、日本国外の博物館等に歴史的に不当に持ち去られたアイヌの遺骨・遺品、その他の文化財が存在しているとして、アイヌ民族がそれらの返還を要求した場合に、日本政府がどれだけの協力と支援を行うのかということがある。しかし、国内の、独立行政法人になったとはいえ、元国立の諸大学に「保管」されているアイヌ民族の遺骨の返還要求にすら真摯に向き合うことができていない状況で、日本政府が対外的に要求を進めるということはできないであろう。仮に海外の「文化財」の返還要求を行ったとしても、相手先の博物館などからまともに対応してもらえないのではないだろうか。

 しかし、頭の良い政府のお役人や有識者の先生たちが、そんなことを理解していないはずはなかろう。まずは、北海道アイヌ協会が遺骨の研究を了解しているという既成事実を作ることが、ここでも重要となる。ペルーの事例は、ある意味で、日本政府、そして北海道アイヌ協会には都合の良い事例かもしれない。新しい博物館や研究施設を設けて、国際的に共同研究を進めるという条件で、海外に「散逸」したアイヌの「文化財」を日本に持ち帰り、展示することで観光「資源」ならびに研究「試料」とする。遺骨や文化財は、そこまでの「帰還」にしかならず、元来の地に戻されることはないかもしれない。

 これはわが輩の単なる憶測にしかすぎないと断わった上で敢えて記すことにするが、実際にその計画は進んでいるのではないかという気がしている。一つは、例えば、「民族共生の象徴となる空間」作業部会の第10回会合(平成23年1月27日)で、本来(と言うべきか、最近は)海外に存在する「アイヌ資料」の調査を主に行ってきている名古屋大学名誉教授の小谷凱宣氏を招き入れて、「アメリカ合衆国における対インディアン政策について」報告させていることである。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/shuchou-kukan/dai10/gijigaiyou.pdf
http://kaken.nii.ac.jp/d/r/40111091
http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20110218/1297961440

 もう一つは、これも例えば、アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会の第5回会合(平成21年2月26日)における次の発言である。

札幌医科大学のイチャルパ、供養祭と言いますが、遺骨の返還、更にはDNAのレベルでのアイヌ古人骨による研究申し入れについての話し合いなど、取組は進めてきているところです。これらの取組は、不当な方法で収集されたアイヌの人骨の返還などに関わる先住民族の権利に関する国連宣言第12条の具体的な取組でもあると思っています。この取組の更なる推進と、東大や京大などの国内外の大学他に分散し、保管されているアイヌの人骨について、先住民族の先祖の尊厳回復と今後の研究、アイヌ文化、歴史の理解促進、啓発の意味合いを込めて、象徴的な施設を早急に国民の理解を得て国の責任のもとに設置していただければありがたいと思っています。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainu/dai5/5gijigaiyou.pdf

 これら2つの点は、まったく無関係の独立した点であろうか、あるいは、どこかでつながる線となるのであろうか。

 まぁ、日本の場合は、返還要求される物が多すぎて、対外的な返還要求は、パンドラの箱のようなものか。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20110609/1307550168

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