AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

ブラジル先住民の血液試料、1瓶85ドルで売買

 ヤノマミ人の血液採取問題にはまだまだ興味深いことがたくさんあるが、2つ前の記事の注3で紹介したDavid Humeのサイトと、この問題をまとめたRobert BorofskyとBruce Albertの著作(Yanomami: the Fierce Controversy and What We Can Learn from It)を紹介するに止めて、この話題からは一旦離れることにする。
http://books.google.co.jp/books?id=eI3OcMf94M4C&printsec=frontcover&dq=Yanomami:+the+fierce+controversy+and+what+we+can+learn+from+it&hl=ja&ei=2KgETp2dKrDimAXD4N3RDQ&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=1&ved=0CCsQ6AEwAA#v=onepage&q&f=false

 なお著者の一人、ハワイ パシフィック大学(Hawaii Pacific University)の人類学者、ボロフスキーは、アメリカとカナダで血液の返還を求める4,000人を超える人類学の学生の署名を2009年1月の時点で集めていた。彼は、アルジャジーラのインタビューで次のように述べている。

ヤノマミの血液問題は. . . 人類学の深い問題の象徴です。人類学者は、彼らが研究する人々の関心を本当に気にかけているのか、あるいは、その人々を自分たち自身の利益を推し進めるために利用することに関心があるだけなのか。
The Yanomami blood issue is ... a symbol of a deep problem in anthropology: Do anthropologists really care about the concerns of the people they study, or are they just interested in using the people to advance their own interests?

Gabriel Elizondo, "Bitter fight over Brazilian blood: Why the Yanomami tribe want blood samples taken by US scientists back, " ALJAZEERA (Last Modified: 28 Jan 2009 21:55 GMT).
http://english.aljazeera.net/news/americas/2009/01/2009127195645873350.html

 コーネル大学でのセミナーで、「血液試料の問題は、1960年代末だけに限られてはおらず、1970年代、1980年代、1990年代にも起こっている」ことと、「ヤノマミ人たちは誤った情報を与えられ、血液は科学のために利用されたが、彼らの健康ケアのためには利用されなかった」という指摘がなされていたが、ここに70年代から90年代の事例を紹介する2007年のニューヨーク タイムズの記事がある。また、上掲書の259ページには、1960年代や70年代の調査基準が低かったという指摘に対して、チャグノンが1995年にも適切なインフォームド コンセントなしに血液試料を採取しようとしたことが証言されている。

 ブラジルのカリチアーナ(Karitiana)人の居住地に最初の研究者たちが血液採取に来たのは、彼らが外部の世界と継続的に接触を保つようになって間もなくの1970年代末であった。1996年には別の研究者チームがやって来て、もっと血液を提供すれば見返りに医薬品を提供すると約束した。そこでカリチアーナの村人たちは再び、血液採取のために並んだ。

 しかし、その約束が果たされることは一度もなかった。カリチアーナ人の村にもインターネットが入り、一つの発見に彼らは激怒した。研究者たちの最初の訪問時に集められた彼らの血液とDNAが、世界中の科学者にアメリカの企業によって一試料あたり85ドルで売られているという事実の発見であった。

 カリチアーナ人は、血液売買の中止を求め、「彼らの人としての保全(personal integrity)の侵害」に対する補償を要求した。西アマゾンにある313人のカリチアーナ人のリーダーは、次のように述べている。

「私たちは、かつがれ、嘘をつかれ、そして搾取された。」
「そのような接触は、私たちにとって非常に有害でした。そして、医療と科学に対する私たちの態度を損ねてしまいました。」

 カリチアーナのすぐ南のスルイ(Surui)人とヤノマミ人も、似たような経験をしており、彼らもまた、Coriell Cell Repositoriesというニュージャージー州に本部を置く非営利団体による血液とDNAの配給の中止を求めていた。この団体は、人間の遺伝物質を貯蔵し、研究者の利用に提供している。彼らは、試料は研究者から合法的に取得され、国立衛生研究所の承認を得ていると述べている。さらに、カリチアーナや他のアマゾンの土着人民から血液とDNA試料を取得してきたフランスの類似したセンターと同様に、Coriellは、研究結果を商業化したり、試料を第三者に移譲しないと合意した科学者だけに標本を提供しているとも述べている。

 ブラジルの人類学者であるデボラ ディニズ(Debora Diniz)は、カリチアーナ人や他の人々の経験は、「科学者たちが今もなお、いかに異文化間の対話の用意が出来ていないか、そしていかに科学が脆弱な人々に対して権威主義的な方法でふるまうか」を表していると論じている。

 記事の全文は、こちら⇒Larry Rohter, "In the Amazon, Giving Blood but Getting Nothing," NYT (June 20, 2007): http://www.nytimes.com/2007/06/20/world/americas/20blood.html
http://www.nytimes.com/2007/06/20/world/americas/20blood.html?pagewanted=2


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20110625/1308927655