AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

Frank C. Dukepooが残した言葉

 先月紹介したホピの遺伝学者、F. デュークプー(Frank Dukepoo, 1944-1999)は、ヒトゲノム多様性プロジェクトが登場した頃、郷里のホピの人々に助けを求められ、35年間行ってきた研究を止めたそうである。彼は、そこで自分自身の決断(選択)をしなければならなかった。

 1999年2月にウィスコンシン大学ミルウォーキー校で開催された「人類学、遺伝的多様性、倫理」と題されたワークショップで、彼は興味深い話をしている。このワークショップから間もなく彼は亡くなっており、ワークショップの内容を公開する記録サイトは、彼に捧げられている。("Anthropology, Genetic Diversity, and Ethics," A workshop at the Center for Twentieth Century Studies, University of Wisconsin-Milwaukee, February 12-13, 1999. Organized by Trudy Turner. http://www4.uwm.edu/c21/conferences/geneticdiversity/index.html

 ワークショップの最初のセッション「人間集団の特定に関する諸課題(Issues Relating to Population Identification)」では、3つの課題が提示されていた。
1. Who should identify human groups for genetic study: scientists, group representatives or governments?(遺伝子研究の対象となる人間集団を誰が確定するべきか。科学者、集団の代表、あるいは政府か。)
2. Should researchers try to avoid using socially defined group boundaries in designing genetic studies? Why or why not?(研究者は、遺伝子研究を考案するにあたって社会的に定義された集団の境界を用いることを避ける努力をするべきか。)
3. What about nested human groups in which research on a part may have implications for the whole?(集団の一部に対する研究調査が集団全体に対する意味合いをもつかもしれない入れ子状態の人間集団についてはどうか。)

 最初のスピーカーはデュークプーであった。最初の課題について彼は、インディアンの視点から「遺伝子研究は存在するべきか」と問い直すことを提起した。決定を行うのは「白人」である。インディアンの言い分は、「そもそもなぜそれを研究するのか」ということである。「どういう理由で、何の目的のために?」その研究に正当性はあるのか。守られそうにないあれこれの約束が行われているのではないか。初っ端から研究の優先事項について異なる価値観や視点が存在している。

 誰が優先事項を設定するのか。誰がどの方向へと決めるのか。すべて一方的だ。私たちは、過去、500年間、コロンブスが1493年にあの手紙を書いて以来ずっと研究対象者の役を務めてきている。そして彼らは、さらに来続けた。この研究の関連性・必要性は何か。空っぽの約束か?

 インディアンが研究・調査されたいかどうかを私たちは彼らに尋ねるべきである。もし彼らが対象となりたいと言えば、そこから始めるべきだ。

 ヒトゲノム多様性プロジェクトが登場した時、ホピの人々に助けを求められ、Dukepooは、35年間研究してきて、動物実験や体細胞交雑研究の段階まで来ていた先天性色素欠乏症(albinism)の研究を一時停止し、その後も再開することはなかったそうである。これからフィールドワークを行って血液試料を採取するだろうという一歩手前であった時に、HGDPが登場した。彼は、そこで自分自身の決断をしなければならないと気付いた。彼は、なぜ自分の研究を中断したのか。「少なくともこの件では、自分の同胞とともに行動する際に、政治的に、あるいは科学的にクリーンでありたかった」と言う。Dukepooにとって、その決断は容易なものではなかったが、彼はその決断を後悔しなかった。それは、夜中に寝返りをうって眠れない夜を過ごさずに、自分の郷里の人々を助けることができたから。

 自分自身の科学的な側面はと言えば、自分には「気をつけよ」と言うホピの優勢な遺伝子が存在しているのだと。

 彼は、ヒトゲノム計画を見て、ホピの同胞に予告した。その計画は、塩基配列決定や遺伝子マッピング、あるいは機能ゲノミックスで止まることはないだろうと。

 彼は、ヒトゲノム計画の5ヵ年計画委員会に加わるように招聘され、スミス小委員会に配属された。そこの会合に出ながら、これはもうすべて決定済み、すでに詳細に練り上げられていて、彼らはただ、その細目を話し合っているだけだという印象をもった。そこで彼は、一つの質問をした。その計画においてインディアンの試料を得ることを提案するのかと。彼はワークショップに参加している科学者たちに尋ねた。「あなたたちは、インディアンの人々に対して、彼らがこの研究に参加したいかどうか尋ねることを考えてみましたか」と。当時彼が得た答えは、ノーであった。問題の繊細な性質のために、敬意を示す丁重なジェスチャーとして関与することを考えてみたことがあるかとも尋ねた。答えは、ノーだった。彼は、それ以上尋ねなかった。彼が考えるには、当時まだインディアンの血液(DNA)試料は採取されていなかったが、しかし1999年現在、そのプロジェクトでインディアンのDNA試料が取得されているところを見ると、ヒトゲノム計画推進者たちがインディアン トライブにその計画を売り込むためにどのような手順を使ったのかとても知りたいものだと言っている。

 2つ目の課題について、彼は次のように述べた。
 「社会的に」ということは、インディアンにとって、ここに追加できるもう一つのカテゴリーかもしれない。皆さんは、「遺伝(子)的に定義されたデーム(genetically defined demes)」について語りますが、それには疑問が存在します。それがどのように社会的単位と重複するのかとか。だけど、それにインディアンという構成要素を含めると、政治的実体(独立体)についても語ることにもなります。そういうわけで、政治的実体も定義されるべきです。そうすることは、インディアン集団をカテゴリー化する際に役に立つでしょう。私は、ホピ人は、多くの事がらを混合してもっていると知っています。だけど、一人のホピ人は、政治的にホピ人なのです。文化的に、その人はホピ人なのです。そして、私たちの儀式ではホピのことがらを行います。あなたたちは、社会的に定義しました。しかし、文化的には定義していません。あるいは宗教的に、あるいは精霊的に(spiritually)は定義していません。これらは、インディアンの人々に関係していることです。ホピに関しては、私たちはみな、別々のクラン(氏族)の中で混ざり合っています。しかし、私たちが儀式を執り行うときは、私たち皆が一体となります。私たち皆を団結させるのは「社会的に定義された集団」ではなく、「宗教的に定義された集団」であり、私たちの霊的、スピリチュアルな部分なのです。それが、私たちが共有しているものです。

 プエブロやズニといった他の人々の儀式の場へ行くと、私は、招き入れられます。参加するためではなく、そこの一員としてです。プエブロ人の間で私は、自由に動き回れます。そういったことが人々を一体化します。たとえもし生物学的に異なっていて、異なるDNA配列を持っているかもしれないとしても。インディアン社会では、私たちには取り組まねばならない別のことがあります。それは、紋切り型の呼び名をつけるとすれば、私たちを定義し、私たちが知っている、あの文化的な要素であり、宗教的なものであり、儀式です。

 3つ目の課題については、短く引用しておこう。研究調査における「匿名」性について、彼は指摘する。
 「私が提起している問題は、私たちは匿名性について語りますが、他の側面が存在しているということです。それは、インディアンのことについて知っているインディアンがいて、私たちが利用するネットワークが存在しているから、これらのことの内容を分ってしまうのです。だから、それは非常に難しいということが、私が提起している問題です。

(http://www4.uwm.edu/c21/conferences/geneticdiversity/dukepoo.html)

Dukepooを紹介する他のサイト:

"Ancestors of Science, Frank C. Dukepoo" (by Next Wave Staff), Science, September 10, 2004(http://sciencecareers.sciencemag.org/career_magazine/previous_issues/articles/2004_09_10/noDOI.12636345855867773498)

"Celebrating Minority Scientists"
Frank C. Dukepoo (http://www.lilburnes.org/Students/Scientists/4thB/Frank%20Dukepoo%20%20%20%20%20Jada%20Rodrigues.htm)


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20110712/1310398214

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