AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

現在、過去、未来

 第3回アイヌ政策推進会議の議事概要議事概要を読んでの、若干の感想を記しておきたい。

●枝野内閣官房長官が開会挨拶で次のように述べている。

アイヌ政策については、政府の重要政策の1つであるという認識の下、政治主導で本会議を立ち上げ、アイヌの方々のご意見も伺いながら、総合的かつ効果的な政策の立案・推進に努めてまいりました。

 「本会議」=アイヌ政策推進会議を立ち上げたのは民主党政権かもしれないが、政策推進会議は、自民党政権下で立ち上げられた有識者懇談会報告の枠組みの中で、その提言のほんの一部を検討してきただけで、何か「政策」を「立案」したのか?「推進」というほどの勢いもなかろう。

今日はその結果をお伺いし、これをさらなる政策推進につなげていく大事な会議であると思っております。

 そのために「従来の作業部会に代え、政策推進作業部会を開催」、その部会長は常本委員とのこと。この方の重要性と発言力が増す一方のようであるが、部会での方法は、「必要に応じて、部会の下に検討チームを開催」ということで、このやり方も、また同じ。しかし、「政策推進会議」の下に「政策推進作業部会」というのも笑ってしまうが、その部会のさらに下の「検討チーム」。(かつて、北海道ウタリ協会が要求した「アイヌ新法」が必要かどうかを「検討」するだけで、政府は、たしか11年くらい費やしはしなかったか?)政治の制度的アジェンダ(institutional agenda)を設定する場から、また一段と遠ざけられた格好だ。(だから、下に書くように、加藤理事長も少々焦っているのだろうか。)官僚たちの常套手段のように見えるが、枝野官房長官、「政治」もどこへ「主導」して良いのか迷い込んでいるのでは?だって、「引き続き、皆様方のご意見を伺いながら、豊かな共生社会の構築に向けて努力をしていきたいと思っております」と言いながら、先住民族政策が「修学旅行の誘致みたいな話」のレベルで語られているのですから。

北方政策における啓蒙・啓発、修学旅行の誘致みたいな話とアイヌの問題と、いい意味でリンクをさせられないかという指示を、北方の部門の方にも出したいと思っております。

北海道アイヌ協会理事長の加藤氏の発言だと思われるが、次のように述べている。

2010 年12 月3 日に超党派の議連の会があったのですが、今、調査自体がこんな状況であるから、私は「100 年前と何も変わっていないと思います」ということを言わせていただいたのです。

 知里幸恵さんの時代から「今も何も変わっていないということ」のようだが、彼のこれまでの言動と矛盾しているのではないだろうかと思いながらも、これが最新の、今の考えであるとすれば、アイヌ文化振興法の失敗を高らかに宣言しているということになるのでしょうな。

●一方で、その後で発言されている(アイヌと思われる)方は、こんな風に言われている。

この両方の報告書にも「先住民族」という言葉が基本的に書かれており、5年、10 年前を考えると、本当に考えられないようなことで、私たちの仲間は皆心から喜んでおります。

 この方は、次のようにも言われている。

世界の仲間の思い、そして、このアイヌ民族の思いが、先住民族の権利宣言として採択をされ、日本も賛成いただきましたが、これは特別に先住民族に特化したものではありません。

 文末の意図が、ちょっと分り難い。

日本が人権理事会において日本国憲法を引いて演説されましたように、世界のリーダーシップを取っていただくように、心からお願いをしたいと思います。

 本当に良いの?それで「世界の仲間の思い」に応えられるの?

●これも誰の発言かは明確ではないが、修学旅行誘致のレベルと変わらない低レベルの話だ。「事業」があれば、事足れりとは。

客観的に見て日本は、もう多民族国家になっているわけなので、その象徴としてアイヌ事業があれば、それは我々日本人として世界に誇れる、我々は少数民族問題、あるいは先住民族問題にきっちり対応しておりますと誇れるような方向を目指していただけたらと思います。

●これは、上田札幌市長の発言だと思うが、「ここはアイヌの土地だった、土地なんだということをしっかり普通に認識できるようにということで、工芸家の皆さん方にお手伝いいただきながら」、地下歩道に「アイヌ文様のタペストリーを12 枚ほど掲げて」いるとのこと。
 さて、「ここはアイヌの・・・土地なんだということをしっかり普通に認識でき」たら、そこからどうするのかな? これこそ、政策推進会議のテーマとされるべき課題では?


 時間がなくなってきたので、それぞれの委員の発言には注目すべきものもあるので、直接読まれたし。⇒http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/dai3/gijigaiyou.pdf

横田委員については、こちらも⇒
http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20110131/1296459230

推進会議の目的を遂行するためにそれぞれの分野で専門性をもっているとみなされて選出されたはずの会議本体のメンバーのうち半分の6人もが作業部会から外れている。・・・・今日現在で公開されている推進会議の記録では、本体の会議は8月に2回目が開かれただけであり、作業部会の決定事項をただ追認するだけの会議に成り下がっているのではないかとさえ思われる。
http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20101110/1289318463

●タイトルの「現在、過去、未来」は、冒頭に書いた蒸し暑さのことではない。渡辺真知子の「迷い道」(http://www.youtube.com/watch?v=6iJ3FyI_Bfw)を貼り込もうかとも思ったが、枝野官房長官の発言のことでもない。アイヌ民族の遺骨のことである。

 あちこちの大学等に「保管」されているというアイヌ民族の遺骨について、「保管」されるに至った過去の経緯をしっかりと検証して、謝罪・賠償を行わなければならないという主張がある。そして、「共生の象徴空間」の施設への遺骨の集約も研究も許さないという主張もある。あまり明瞭に聞こえて来ないと感じているのは、このブログでも取り上げたことがあるが、現在、着々と進行中の「アイヌ人骨」の研究をめぐる諸問題についての見解である。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20110810/1312909016

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