AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

NAGPRA公聴会と「国立アメリカンインディアン博物館法」

 3つ前の記事の"Who Owns the Past?"で、もう一つ思い出したことがあったので、NAGPRAと「国立アメリカンインディアン博物館法」について少し書いておこうと思う。

 NAGPRAが成立した1990年の連邦議会下院内務・島嶼問題委員会の公聴会(7月17日)で、この問題に関して下院に提出されていた3つの法案のうちの1つの提出者、フロリダ州選出のチャールズ ベネット下院議員が陳述しているが、その中に次の点が含まれていた。

 彼が法案を提出したのは、National Geographic(『ナショナル ジオグラフィック』)誌の1989年3月号に掲載されていた"Who Owns Our Past?"――1語違いである!――という記事を読んで触発されたからであると述べている。その記事には、ケンタッキー州の農場にある650以上の先住アメリカ人の墓に対する冒涜的な行為が描かれていた。墓が暴かれ、副葬品が盗まれて売却され、死者の遺骨が農場に散乱していたということで、同議員は、農場主の「死者に対する不道徳で品性のない扱いに憤慨した」ということである。

 ついでだから、もう少し引用すると、彼は、続けてこのように陳述している。

私たちの多くは、私たちの愛する人々のお墓に"Rest in Peace"(安らかに眠れ)と刻みます。残念ながら、国として私たちは、私たちの主要な先人である先住アメリカ人のお墓に同じ尊敬の念を示すことに失敗してきました。

 北大の開示文書に関する先月20日の新聞記事を見て、この国の議員たちは何を思った/何も思わなかったのであろうか。非常に興味あるところである。今はどのように機能しているのか、いないのか、知らないが、たしか、何とかの超党派議員の会というのがあったような――。国会とは、「立法」の府だったとも思うのである。

 この公聴会とNAGPRAが成立した1990年の前年、1989年の11月28日には、「国立アメリカンインディアン博物館法(NMAIA)」が大統領の署名を得て、法律となっていた。そして、この公聴会の翌日、90年の7月18日には、同法の下での最初の遺骨返還(先住ハワイ人遺骨)がスミソニアン協会から行なわれることになっていた。法案を起草し、NMAIAの立法に主要な役割を果たしたコロラド州選出のベン ナイトホース キャンベル議員――当時、唯一の先住民議員――が、ベネット議員の陳述の前に短い陳述を求められ、その中で次のように述べている。

アメリカインディアンたちがそれらの遺骨に対する権利を有していると知りながらも、遺骨が長期に渡って研究されるべきであると考える博物館や考古学者、そしてその他多くの人々の間に抵抗がある場合に、私たちがその遺骨を保持[キャンベル議員自身がインディアンであるためにreturning(返還)ではなくretainingと言ったと思われる――D. X.]するための確立された手続きがないという理由でそれらの遺骨を取り戻せない時、そのことが彼らに多大なトラウマと悲痛をもたらしてきました。

 さて、そのNMAIAには、次のように書かれている。時間の都合で、一部分だけ記す。続きは、また書くかも、書かないかも。

「国立アメリカン インディアン博物館法」
公法101-185(1989年11月28日)、103 STAT. 1336


SEC. 2. 議会所見
(6) 陸軍軍医総監(Surgeon General)の命により、戦場と埋葬地からおよそ4,000体のインディアンの遺骨(human remains)が陸軍医療博物館(the Army Medical Museum)へ送られて、後にスミソニアン協会に移管された。
(7) 考古学的発掘、個人の寄贈、そして博物館の寄贈を通じて、スミソニアン協会は、さらにおよそ14,000体のインディアンの遺骨を取得してきた。
(8) 第(6)、(7)段落で言及されている遺骨は、長い間、自らの祖先に適切な安息の地を提供しようと決意しているアラスカ先住民族の村々と先住ハワイ人コミュニティを含めて、多くのインディアントライブの関心事であった。
(9) そのような遺骨の起源を確定することが、その関心への取り組みにとって不可欠である。


SEC. 5. 博物館運営委員会(Board of Trusteees)
(e) 運営委員会への初期の任命
 (2) (1)の段落の(c)項[=理事会Board of Regentsによる任命の8人]および(d)項[ヘイ博物館の運営委員から任命される15名]の下で任命される23名のうち、少なくとも7名は、インディアンとする。
(f) 運営委員会へのその後の任命
 (2) 特別規則 −−(1)(c)項の下で任命される23人のメンバーのうち、少なくとも12人は、インディアンとする。

 白老に建設予定の博物館の基本構想を検討する新たな委員会が文化庁によってつくられたようである(http://www.bunka.go.jp/bunkazai/minzoku_kyosei/index.html)。この博物館でのアイヌ民族の遺骨・副葬品の扱いについて、どのような議論がなされるのだろうか。

先住民族の権利に関する国連宣言」
Article 18
Indigenous peoples have the right to participate in decision-making in matters which would affect their rights, through representatives chosen by themselves in accordance with their own procedures, as well as to maintain and develop their own indigenous decisionmaking institutions.
Article 19
States shall consult and cooperate in good faith with the indigenous peoples concerned through their own representative institutions in order to obtain their free, prior and informed consent before adopting and implementing legislative or administrative measures that may affect them.
第18 条
先住民族は、独自の意思決定制度を維持しかつ発展させるだけでなく、自らの権利に影響を及ぼす事柄における意思決定に独自の手続きに則って選出された代表を通じて参加する権利を有する。
第19 条
国家は、先住民族に影響を及ぼし得る立法的または行政的措置を採択して実施する前に、彼/女らの自由で事前の情報に基づく同意を得る目的で、先住民族独自の代表機関を通じて当該の先住民族と誠実に協議および協力を行なう。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20120415/1334423083