AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

人骨のクリーニング

 これから書こうとしている問題に関しては、わが輩は、まったくの門外漢、素人である。専門家から見れば滑稽なことかもしれない。しかし、どうも怪しい雰囲気なので、ちょっとだけ調べたことをメモしておく。

 また、後半の博物館収蔵品の殺虫剤汚染の問題については、この国でも博物館関係者の間では既に知られていることで、対策が取られているのかもしれない。その辺のことについても、わが輩は無知である。ただ、いつの日になるのかは分からないが、アイヌ民族の遺骨や埋葬品が返される日に備えて、こういう問題も考えておかなければならないのだろうとは思う。

 1月29日の本ブログ記事で2011年12月17日の「朝日新聞」の記事について触れた(http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20120129/1327770740)。この記事に、次のような件がある。

国立科学博物館新宿]分館は来春までに茨城県つくば市に移転する予定で、荷造りを前に人骨の分類やクリーニングが続く。

 人骨のクリーニングについては、前にどこかで読んだことがあると思っていたが、こちらに言及がある。⇒http://pub.ne.jp/ORORON/?entry_id=4066756 他に北大でもクリーニングの話があると聞いたり、読んだりした記憶があるのだが、メモを取っていなかったので出所が定かではない。事の真偽のほどは、一応、保留としておく。

 科学博物館の記事に戻る。12月の記事で「来春」と言えば、立春も過ぎたし、桜の季節としても、もうすぐだが、1万体の人骨の分類とクリーニングとは、もの凄い仕事量になるのだろうと思う。なぜまた、この時期に急いで行なわねばならないのだろうかとも思う。下で紹介するように、骨のクリーニングについて読んでみると、非常に慎重を要する作業のようであるし、引越しでバタバタと忙しい時期にやるには、ちょっと大変だろうと同情してしまう。もっとも、考古学・人類学の学生たちには、人骨のクリーニング作業は「楽しい一時でも」あるらしい(http://kisoukouzou502.blog.fc2.com/blog-entry-49.html)。発掘後の人骨と博物館の保管室に置かれた頭骨とでは、クリーニングの方法が違うのかもしれないとも思える。

 ここで一つ関連情報を挟むと、北大開示文書研究会のサイトに昨年6月のシンポジウムでのパネルディスカッションのようすが新たに掲載されている(http://hmjk.world.coocan.jp/sympo2011/panel.html)。その中で、パネリストの一人、城野口ユリさんが次のように発言されている。

元の場所の土やほこりが、お骨に少しでも付いているんではないかと思うんです。血のつながった親子の情愛というのかな、それを示すのに、そんな元の土地の土・ほこりの付いたままのお骨を戻してあげたいと思っています。人間としての愛情です。

 アイヌ政策推進会議の作業部会では、遺族の判明する遺骨は返還するという方針で文部科学省が中心となって調査を始めたのに、城野口さんのような気持ちに応えようとするのであれば、なぜ、このタイミングにクリーニングなのだろうか。科博は、東京都内から出土したものだから関係ないと言うのかもしれないが、いずれにしても、分類もするようであるから、今でなくても良いのではないかと思えるのである。ましてや、北大までもがクリーニングを考えているという「噂」が聞こえてくるのはなぜなのだろうと不信感が湧いて出る。タイミングの悪さは、偶然の一致だろうか?

 余談だが、「不信」と言えば、梅棹忠夫司馬遼太郎との対談で、自分は「文化とは不信の体系だ」と言っていると語っているのを数日前に某古本屋で立ち読みしたばかりだ(梅棹忠夫『日本の未来へ――司馬遼太郎との対話』日本放送出版協会、2000年、p. 46)。

 1月4日の記事「人骨からのDNA抽出作業と採血の「同意」獲得過程の実際」(http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20120104)で紹介した動画の中で、ミイラの足を切るシーンが出ている。それは、表面には触った人のDNAが混じっている可能性があるからだとナレーターは言っていた(04:38辺り)。とすると、骨を掘り出した人たちのDNAが混じっている可能性もあるのではないのだろうかと考えていた。

 もし実際に「元の場所の土やほこり」が遺骨に微量でも付着していたら、骨を傷つけてDNA鑑定を行なうより前に、付着した土壌の分析によって発掘地を割り出すことはできないのだろうかと思う。そもそも墓荒らしという犯罪なのだから、警視庁や北海道警が調べたら判ることではないのかな? 「科捜研の女」の沢口靖子さんなら割り出せるかもしれない。

 もちろん、こうした考えは、「元の土地の土・ほこりの付いたままのお骨を戻してあげたい」という遺族の気持ちに反するからボツではある。だが、そういう犯人探しの手がかりを消してしまおうとしているのではないかと疑われるような変なタイミングで、今クリーニングはしない方が良いのではないか。

 「クリーニング」について少し調べてみると、面白い情報にも遭遇した。こちらは、洗浄剤の広告である。頭蓋を茹でる時に肉、脂肪、脂を溶かすのに効果的だとある。(http://www.taxidermy.com/cat/15/skull.html

 一方、こちらは、アメリカの人骨売買会社。1987年以前にアメリカに入ってきていたコレクション用の人骨の大半はインドからのものだったが、その年にインドが輸出を禁止したために、その後は中国がインドに取って代わって主要供給国となった。しかし、北京オリンピックの直前に中国も人体組織の輸出を止めてしまい、その後は供給を増やす国はないとのこと。しかし、インドと中国から輸入されたかなりの数の人骨がアメリカにまだ残っており、市場で自由に売買されているとのことでもある。一部の州と先住アメリカ人の骨などを除いては、人骨の売買は違法ではないと説明している。この会社は、骨は「茹でたり、漂白してはならない」と上のサイトとは違うことを書いている。http://www.boneroom.com/faqs/bones.html
http://www.boneroom.com/faqs/maceration.pdf

 興味深いのは、「骨のクリーニング」の方法を説明したこちらの文書である。

キュレーションのために動物の標本を作る場合でも、法医学的事件の分析のためであっても、すべての骨の表面は、完全にクリーンにされなければならない。付着している軟組織は昆虫を引き寄せたり、死亡時の外傷をわかり難くすることもあるので、除去しなければならない。脂肪分は臭い、骨に染み込み、埃や垢を付着させるので、除去しなければならない。

 そして、DNA鑑定とクリーニングの関係が出てくる。科学捜査事件からのDNAや毒物学の標本は、骨を茹でる前に取るのが望ましいとしながらも――それならば、科学博物館でも、もうDNAサンプルも取られているのだろうかと考えたが――次のような但し書きが続く。

しかしながら、茹でることで実際には最終的なDNA収量を増やせることになるかもしれないので、クリーニングが既に行われた後の遡及的サンプル抽出は実行可能であると最近の研究が示唆してきたことは特筆されるべきである。

http://archlab.uindy.edu/documents/CleaningBones.pdf

 こういうことも考えられているのだろうか。いずれにしても、刷毛とエアブラシでシュッシュッとやるだけではなくて、クリーニングにも幅広い方法がありそうである。それで、朝日新聞が報じる科学博物館では、どんなクリーニングをしているのだろうかと疑問がわく。


★殺虫剤汚染された博物館収蔵文化財の返還作業で生じる問題

 完全にクリーニングされていない人骨には虫が来るということだが、博物館に収蔵されている遺品などの文化財も同じらしい。だから殺虫剤を使う。しかし、どのような殺虫剤が使用されているのか、それにはどのような毒性があるのか、特に規制が厳しくなる前に用いられていた殺虫剤は大丈夫なのか、等々、先住民族に返還される文化財の虫除けに使用された殺虫剤の問題がアメリカで提起されている。

 かじかむ手を休めた時、小指の付け根がキーのどれかを押してしまい、途中まで入力した記事が消えた! 幸い、バックアップ機能で保存されていたのでここまで来たが、この問題については後ほど追記することにして、一旦、ここで中断して投稿することにする。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20120207/1328625822