AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

7体のアメリカ先住民の頭骨、イギリスの大学から返還

◎(2012/05/22, 22:56)

 2012年5月20日のLos Angeles Times記事によると、アメリカ先住民の頭骨7つが連合王国(英国)のバーミンガム大学からカリフォルニアのトライブに返還された。頭骨がどのような経緯で同大学に存在していたのかは不明瞭とのことであるが、その返還は、その種の出来事としてはカリフォルニア州では初めてのこととのようである。

 問題の頭骨は、英国のバーミンガム大学医学部の解剖学科で忘れ去られていた鍵のかかった金属キャビネットの中にあった。その中に、昨年、一人の研究者が、カリフォルニア州中部海岸の先住アメリカ人の遺骨と書かれた黄変したラベルが付いた7つの頭蓋骨を見つけた。

 今月上旬、その頭骨といくつかの骨の断片が箱に詰められ、ロンドンのヒースロー空港でロサンゼルス行きのジェット機に非常に慎重に搭載された。静かな儀式の中で、遺骨は、放浪の始まりから1世紀以上の後に、サン ルイス オビスポ郡で再埋葬された。

「遺骨は自主的に米国を離れたのではありません」と、700人ほどの小さなサリナン トライブの精神的指導者のジョン バーチ氏は言った。「遺骨は拉致され、そして今それは故郷に戻ったのです。」

先住民族の遺骨や遺品のトライブヘの返還は、常に平坦な道とは限らない。1990年のNAGPRAや同様の州法は、外国の機関には適用されない。それでも、バーミンガム大学は、返還を「道義的な選択」とみなしていると、同大学の医歯学部の生命倫理学者のジューン ジョーンズ氏は述べた。同学部は、アボリジニの遺骨をオーストラリアへ、そしてマオリの遺骨をニュージーランドの集団へ返還しつつある。

「これは、光栄なことです」とジョーンズ氏は言った。「事の本質は、文化や信仰に対する敬意の問題なのです。たとえその文化や信仰が、たまたま私たちのものではないとしても。」

サリナン人の遺骨がどのようにして、いつバーミンガムに辿り着いたのかは、わかっていない。唯一の手がかりは、「R. W. サマーズによってカリフォルニア州、サン ルイス オビスポ郡のアヴィラ付近の墓から発掘」と書かれた手書きのラベルから得られた。

サマーズは、1881年から1898年の死去に至るまでサン ルイス オビスポにいた英国国教会派の牧師だった。彼はまた、先住アメリカ人の遺物を幅広く集めた熱心なアマチュア考古学者でもあった。

サマーズは鉄道敷設のために発掘を行っていた労働者から遺骨を入手したのかもしれないと考える者もいる。

サマーズのコレクションの多くは、後に大英博物館が取得し、今もそこに収蔵されているが、当該の頭骨は、どうやってか、バーミンガム大学で眠ることになった。遺骨が研究の対象とされた形跡はないと、ジョーンズ氏は述べている。

遺骨の故郷を探して、ジョーンズ氏は、同地方に先祖が住んでいたと知られているインディアン集団のチュマシュ インディアンのサンタ イネズ(Santa Ynez)バンドとサリナン トライブに電子メールを送った。サリナンの長老の一人、バーチ氏がそれに返信した。ダイアン フェインスタイン上院議員(民主党カリフォルニア州選出)、ロンドンのアメリカ大使館、そして同州の先住アメリカ人遺産委員会の支援で、バーチ氏は官僚機構の藪を通り抜けた。

「遺骨を合衆国内に持ち帰ることが大きな問題でした」と、遺産委員会のプログラム分析担当者であるディヴ シングルトン氏は言った。「私たちが知る限り、これは、カリフォルニアでのこの種の出来事としては初のことでした。」

シングルトンによれば、チュマシュ人は、大英博物館に今もある200以上の項目の返還を求めることに関心を表明している。

5月9日、ジョーンズ氏と遺骨がL.A.空港に到着した。サン ルイス オビスポでは、カリフォルニア ポリテクニックの名誉教授で人類学者のロバート フーヴァー氏が検死官事務所で待っていて、頭骨が「極めて明確に先住アメリカ人のもの」と確認した。フーヴァー氏によれば、遺骨は「先史」時代のものであるとのこと。遺骨を傷つけることを避けるために、DNAその他の試験は何も行われなかった。

他の先住アメリカ人が埋葬されている静かで秘密の場所での儀式で、バーチ氏が短く語った。抑えた太鼓の音がした。彼は約25人のトライブの参列者の集りの方を向いていて、数人の地元の官吏が傍らで観ていた。頭骨が西を向いて地中に埋葬された。

「故郷に帰りました」とバーチ氏は言った。


文中の太字化は、わが輩による。
記事の全文は、こちら:
Steve Chawkins, “Native American skulls repatriated to California from England,”Los Angeles Times, May 20, 2012.
http://www.latimes.com/news/local/la-me-adv-skulls-20120520,0,421863.story


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20120522/1339431680