AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

第8回「政策推進作業部会」議事概要

 6月1日開催の標記作業部会の議事概要がアップロードされている。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/seisakusuishin/dai8/gijigaiyou.pdf

 有識者懇談会にいろいろと意見書を提出した諸団体は、どうしているのだろう。今回も、いくつか我田引水のような発言が目につく。

◎追記:遺骨の取り扱いをめぐる意見を抜粋しておく。

アイヌの人骨に係る検討
 大学等における人骨の保管状況などの調査と並行して、政府において、調査後の人骨の返還に向けた進め方の検討を速やかに進めるとともに、尊厳ある慰霊が可能となるように、関係者の理解を得ながら、人骨の集約施設の在り方、慰霊への配慮の在り方、研究との関係などを検討・整理する必要があるとしている。

・ 人骨の集約施設について、慰霊と研究がうまく両立しないようなイメージがあるが、ここで言う研究には二つの側面がある。
 一つは、アイヌの人たちがどのような生活をしていたかという、まさにアイヌ民族の過去を知るための研究。もう一つは、あまり情報がない人骨であっても、研究を進めることによって様々な情報を得ることができ、返還に向けた推定が可能となることもある、そういう意味での研究。
 あくまでアイヌの方々のための研究ということで、この二つが両立するような形をつくるべきであると考えている。

・ どのような形で人骨を返還するのか、何か考えがあるのか。
・ まだ検討が進んでいないのではないか。過去には、当時のウタリ協会の支部が、その地区のアイヌの方々の代表という位置づけで、その地域から得られた人骨の返還を受けた例があるが、現時点において北海道アイヌ協会をそのような形で位置づけることができるのかといわれれば、その当時に比べれば難しくなっているのではないか。
 それに代えて、その地域で一括して遺骨を受けることができる団体、集団があり得るのかということは、かなり難しい問題。現時点では、請求者は個人であることを前提に検討しているが、それに加えて、集団ないしは地域の代表を想定すべきかどうかについては、アイヌ協会とも御相談をさせていただきながら、検討しなければいけないことだと思っている。
アイヌの人骨の関係については、アイヌ政策推進会議への報告案に盛り込んでいただきたい。また、調査と並行して、検討を早めていただきたい
・ 調査については、今年の12 月までに回答が集約されることになっているが、その後、その結果に基づいて次のステップに進むことが可能となるように、具体的に詰めておくべき問題点については、並行して検討を進めなければいけないと思っている
・ 伝承者の人材育成については、是非とも盛り込んでいただきたい。人材育成は、総力を挙げて取り組まなければならないことだと思う。

 最後の2行は、「人骨」についての発言ではなさそうだが、わが輩がいつか提案を書く時のために、ここに入れておく。それにしても、これ(↓)の意図するところがよくわからない。笑ってしまいそうだが、悩めるわが輩も、そこへ行けば悩みが解消するかな・・・。

・ ポロト湖とその横にあるポント沼は一体だと思っている。汚染されていない湧水が、ポントにもある。
 今は蛇口をひねると水が飲めるが、昔はそうではなかった。湧水のあるところに集落ができた。そういう場所をどういうふうに利用するかということ、悩める人のために利用するのがよいと思っているし、悩んでいる人が考える場が必要だと思っている。
 野外の博物館という感覚で考えるとよいのではないか。

 「考える人」のような像をたくさん作って、いや、「悩める人」を募って、ポーズを取ってもらう? そんな野外美術館も面白いかな。(茶化しているようで申し訳ないが、ある地のある大学キャンパスで多額の資金をつぎ込んで実施し、頓挫した「野外美術館」を思い出してしまったものだから。)

 あと二つ三つ書いておく。

 アメリカ政治制度の中で機能不全の官僚機構の権化のように批判されることの多いインディアン局(BIA)。そんな組織が欲しいらしい。こういう批判を予期したのか、誰かがやんわりとフォローしている――ちょっとピンボケのようでもあるが。

・ 例えばアメリカにはインディアン局があり、台湾には原住民族委員会がある。日本にもそういうものがあれば、すごくスピーディではないかと思う。
・ そういった組織が一旦でき上がれば、スムーズに進む面もあるのだろうが、組織ができるまでには、諸外国でも紆余曲折がなかったわけではないと聞いている。
 ただ、委員の指摘の趣旨は、政府が一体となってスピーディに進めるべきだということだと思うので、それはまさにそのとおりだと考えている。

② 国民理解の現状
 アイヌの方々が北海道に古くから住んでいることは全国で知られているが、歴史的な背景、文化に対する知識は漠然としている。道内と道外の認知度を比べてみると、道外では情報発信が盛んとは言えないが、道内においても必ずしも深い理解のレベルには至っていない。
 アイヌ文化振興法の施行から15 年経過し、普及は着実に進展してきているものの、一般の国民の認知度には未だ課題があると整理している。
③ 目標の設定
 このような現状を踏まえ、次の二つの目標を設定している。
 ・ 日本の先住民族の文化として、アイヌ文化に親しみを持ってもらう。
 ・ アイヌの歴史や文化を理解し、アイヌ文化の伝承や普及啓発の取組を応援してもらう。
 二つの目標を踏まえ、認知や理解の度合いに応じて、「認知」から「興味・関心」段階の層には、「入り口」「広く伝わる」手段を、「興味・関心」から「理解」の層には、「受け皿」「深く伝わる」手段を活用して、「認知」から「興味・関心」、更には「理解」へとレベルアップを図っていく方策が必要としている。

 啓発の技術論議に終始しているようだが、その中身、「何を」について議論しないとだめなのではないか? 「財団」という、まさにお膝元で起こった今般の「副読本問題」、あるいは上の遺骨をめぐる「歴史的な背景」の問題は、ここでのこうした議論とどう関わっているのだろうか。

・ 国民の理解を深めるため、有識者懇談会の先生方に講演会を開いていただきたいという要望をしていたと思うが、これが今回入っていないのはなぜか。

 答え:○○○がなくなったから、または○○○が剥げたから。

◎追記2(2012/07/07, 23:54):

 内容は詳しくは分らないが、一部の遺骨の返還に向かって話が進められていることは確かなようで、そのことは報告書に含められそうである。

 遺骨に関する引用部分に色付けをした。2つ目の引用(囲み)は、第7回に欠席していた篠田氏の発言だろうと推測する。今回は、「人骨の集約施設」が論じられるということで出席か。「二つが両立」と言うが、この2つ目の段落はもっと明瞭な矛盾点を含んだもっと長い発言だっただろうという「推定が可能」である。公開までにかなり修正が加えられたのではないだろうか。
 「アイヌの方々のための研究」・・・「アイヌの方々」が何と言うかだな。自分たちのためではないと言うのなら、「アイヌの方々」が「返せ」と言えば返すのだろうな。もっとも、「返還に向けた推定」のためのDNA採取を済ませれば、形質人類学者が何と言うか知らないが、遺伝学者は遺骨は要らないということになるのかもしれない。6月26日の記事と合わせて他にも論じたいことはあるが、しかるべき時のために、わざともったいぶって、今は黙っておく。
 1993年、いわゆる「国際先住民年」の正式名を決定する際に最初に出された案が"The International Year for the World's Indigenous People"だったが、それ(〜のための)を先住民族は拒否し、"The International Year of the World's Indigenous People"となった。(話が長くなるので、Populations/People/Peoplesについては省略する。)

 遺骨返還へ向けて「具体的に詰めておくべき問題点」は多々あり、文科省の調査と「並行して検討を進めなければいけない」という見解には賛成である。しかし、あくまでも「アイヌ協会と[の]御相談」らしい。アイヌ協会は、「慰霊と研究」施設への集約という方針を変えていないのでは?

 返還は、遺族が判明したいくつかの遺骨の1回きりの返還とはせずに、継続的な課題として取り組むべきである。「集団ないしは地域」への返還も考慮されているようであるから、当然、そのように考えられているものと受け止めたい。もしそうであれば、返還協議の相手とみなされているアイヌ協会や他の関係者/団体は、もっと積極的な取り組みと準備をするべきではないのだろうか。「アイヌの方々のため」にやってもらうのではなく、遺骨返還担当の「人材育成」もその一つであり、S大学がやらないのなら、T大学が文科省から予算を取って「総力を挙げて」やってもよいのかもしれない。いずれにしても、「アイヌの方々」が何と言うかである。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20120706/1341586000