AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

尿からもアイヌの系統分析!

 今朝、ある方から情報を戴いた。深謝。取り急ぎ、わが輩の反応を記す。

抄録
JC ウイルス (JCV) DNA の系統解析によりアイヌの起源を解明することを目的として, 北海道の3地域(浦河, 白老, 旭川)に住むアイヌ30名から尿を採取した。尿から検出された JCV DNA (n = 13) は5つのゲノム型 (MY-b, MY-x, MX, EU-a/Arc, EU-c) に分類された。MY-b, EU-a/Arc, EU-cは過去に近隣の人類集団から検出されたが, MY-xとMXは今回初めてアイヌから検出された。得られた知見から, (1) 東北アジアから渡来した複数の人類集団が現代アイヌを築いたこと, (2) ヨーロッパ人に近縁の東北シベリア先住民の祖先集団が現代アイヌの中核を形成したこと, (3) 縄文人を形成した集団や新規な東北アジア系集団も現代アイヌの形成に寄与したことが示唆された
http://ci.nii.ac.jp/naid/130000091549
文字の変色は、わが輩による。

 「示唆された」だけか・・・。科学者特有の慎重な物言いであろうが。
 下のリンクから論文本文のダウンロードへも進める。2003年の論文のようである。https://www.jstage.jst.go.jp/article/asj/111/1/111_1_19/_article/-char/ja/

 30名のアイヌからの遺伝情報。以前書いたデュークプーの言葉が思い出される。

私が提起している問題は、私たちは匿名性について語りますが、他の側面が存在しているということです。それは、インディアンのことについて知っているインディアンがいて、私たちが利用するネットワークが存在しているから、これらのことの内容を分ってしまうのです。だから、それは非常に難しいということが、私が提起している問題です。
http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20110712/1310398214

 アイヌの間ではどうなのだろうか。
 いずれにしても、こうした研究に対応するために、アイヌの組織的対策が早急に必要ではないのだろうか。

◎追記1:
 恐らく、篠田氏は言うであろう。「このアイヌの人たちのデータは全部で[30]人分のサンプルから得られた結果ですので、確定的な話ではありません。もう少し例数を増やさないと比較データとしては使えないでしょう」と。

◎追記2: 
 ウイルスのDNA解析ということで、尿を採取されたアイヌ自身のDNA解析ではないようだから、遺骨や血液からの研究とは少し異なるようである。
 「尿は提供者の同意の基に集められた」(22ページ)とあるが、その同意を得た際の説明文書を見てみたいものだ。
 「アイヌであることの認定は自己申告によった」(同)らしいが、これも面白い。わが輩が自己申告してオシッコを検査してもらったら、どうなるのだろう。ならば、起源についても、アイヌ民族の古来からの伝承によっても良いではないか。
 「-20℃で保存された」(同)という「尿検体」は、その後どう扱われた/扱われているのだろう。もし今も保存されているのなら、あるいは廃棄処分されたのなら、その辺のこともきちんと説明された上で同意の取得が行なわれたのだろうか。
 さらに重要なことは、この30名の個人的な家系分析ではなく、アイヌという集団に関する研究であり、その結果がさまざまな政治的・社会的な影響をもたらすことを考えれば、30名の家族やコミュニティに対する説明と同意の取得が求められよう。これは、なされたのであろうか。

◎追記3:
 実際、データ規模が小さいことは自覚されているようで、要するに、太字部分が主目的だったのである。

 本稿で解析したデータは規模が小さいため、アイヌの起源に関して早急に結論を導くと、誤りを犯す可能性がある。それにもかかわらず、アイヌの起源に関して推論を試みたのは、いかにJCVゲノム型解析がアイヌの起源の解明に役立つかを示したかったからである。・・・・アイヌの起源に関して最終的な結論を得るために、将来、本格的なプロジェクトが実施されることを期待する。(31ページ)


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20121029/1351485056