AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

「アイヌ尿」と未成年者の同意

 一つ前の記事に「追記」としても良いのだが、1本の記事として書くことにする。

 前の記事でも部分的に引用したが、「材料と方法」の項(22ページ)で「アイヌ尿」という言い方に初めて出合った。アイヌ以外の人の尿は、それぞれ何と呼ぶのだろう。非アイヌ尿、和人尿、日本人尿、韓国人尿、エンチゥ尿、チベット尿、モンゴル尿、モゥホーク尿、ナヴァホ尿、ラコタ尿・・・??? とても面白い。きっと「アイヌ●」、「アイヌ汗」、「アイヌ唾液」などという言い方もされるのだろう。

 それは措くとして、同じ部分に、同意を得た被験者に「浦河の1名(13歳)」という未成年が含まれている。

 日本も批准している「子どもの権利条約」でも、13歳は、まだ「子ども」である。この条約には、「アイデンティティ保全の権利」(8条)や「 マイノリティの権利」(30条)などが規定されている。いわゆる系統関係研究には、集団に対する心理的影響や人としての「保全」の問題が関係している。

 ところで、今日もあまり時間がないゆえに、2010年にアメリカで発表された論文の一部だけを訳出して紹介しておきたい。上記のことを考える材料となるであろう。同論文は、アメリカ連邦政府の助成を受けて医療研究機関で行なわれた研究が「貯蔵された生物物質を用いる遺伝学研究用の研究計画と同意様式において、同意、生物物質(試料)に対する統制、秘密(匿名)性、結果の公表という課題にどのように取り組んで」いるかを調査に基づいて分析したものである。今ここでは、敢えて論文の出典は記さない。

最後に、[調査した]研究のどれも、子どもが法的に成人した時、従って、法的に研究への参加への同意を与えたり拒否したりする能力を有すると定義されるようになった時にその子どもから同意を得ることについて言及していなかった。さらに、これらの研究は、この省略の理由を説明していなかった。子どもは、自分の親が自分に代わって行なった決定には賛成しないかもしれず、また、自分の生物物質(試料)の研究利用の一部には反対するかもしれない。もし彼/彼女らの物質が彼/彼女らが大人になってからも利用され続け得るのなら、その物質を用いる継続研究に対する同意を求めて彼/彼女らに連絡を取ることが、自律に対する尊重という倫理原則を満たす唯一の方法であるのかもしれない。(略)この問題が私たちが検証した文書においてまったく取り上げられていなかったことは印象的である。

 そもそも、13歳の少年または少女からどのようにして、どのような「事前の十分な情報に基づく同意」が得られたのか、ますます興味深いことである。論文の受理が10年前であり、「アイヌ尿」が採られたのが同年または前年くらいと推測すると、この少年または少女は、今23歳前後の成人である。同研究によって採取された検体は、今どうなっているのであろうか。

 上記の論文には、次のような議論もある。

2点目として、すべての研究が、研究から全般的に退出する権利について述べていたが、ほぼ30%が、生物物質を用いる研究に具体的に関連してこの権利について語ることを怠っていた。最近の連邦控訴裁判所判決は、この省略は自分の生物物質の研究利用をやめさせる個人の権利を制限する可能性があると示唆している。よって、生物物質を取り戻す権利に具体的に言及することが、研究への参加に関するこの基本的権利を保全するために必要であるだろう。

 ここで言及されている判決とは、2007年と2008年の「ワシントン大学 v. カタローナ」である。

 上記引用(訳)中の太字は、わが輩による。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20121031/1351611304