AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

博物館の遺骨・遺品返還プロジェクト

 前に概要とURLだけ記載して知らせておいたが、アリゾナ州立博物館の次期館長がインディアン トライブに文化遺品や遺骨を返還するために尽力しているという興味深い記事が出ていた。もう少し詳しく紹介しよう。

 アリゾナ州立博物館と次期館長に内定しているパトリック ライオンズ(Patrick Lyons)さんは、通常考えられる博物館の収集・保存という役割とは逆に、発掘された数千もの遺骨と遺品をそれが帰属するトライブに返還するために精力的に働いている。

 プロジェクト コーディネイターのライオンズ氏によれば、グラスホッパー地域返還プロジェクト(GRRP)は、これまでに764体の部分的および完全な遺骨と2,452の集合的・個別的双方の埋葬品を再埋葬することに成功している。ライオンズ氏:「基本的な考えは、それらの遺品は譲渡不能であるということです。これらは移転することができない物です。売買することができるべきではありません。・・・時には、それは大きな仕事です。」

 発掘時に、700体以上の完全な遺骨と数百体の部分的遺体とバラバラの骨がグラスホッパー プエブロの周囲の現場から持ち帰られた。

 返還プロジェクトには、それら祖先の遺骨と文化的に帰属または関係している集団としてホピとズニのトライブ、そして保留地で遺骨と遺品が出土したホワイト マウンテン アパッチのトライブが参加していると、ライオンズ氏は述べている。

 この収蔵遺骨と遺品は、600~700年前に生存していた人々のもので、1963年から1979年にかけて、アリゾナ大学人類学科と州立博物館によって行なわれた考古学野外スクールによって発掘された。

 GRRPは、2014年春に完了する予定である。

 返還の流れは、トライブによって異なることもある。返還された遺品や遺骨を再埋葬することを選択するトライブには、同博物館は、遺骨や遺品がトライブが望む方法で再埋葬されることを確実にするための援助を提供してきた。

 「通常、再埋葬は、諸トライブにとって非常にプライベートな問題と考えられている」と博物館の骨学研究室長でNAGPRAコーディネイターのジョン マクレランド氏は言う。「私たちは、ただ遺品や遺骨の箱を伝統的な宗教指導者たちに渡して、そこから先は彼らが持ち帰るだけのこともあり、あるいは場合によっては、彼らが私たちにコレクションを実際に地中に戻すことを依頼することもあります。」

 過去に再埋葬に個人的に参加したことのあるマクレランド氏は、返還が一部のトライブには感情的なものになり得ると述べた。

(続く)

 「その人を地中に埋葬すると、事物を対象物として見がちな博物館や実験室での経験における以上に、実際にその人と人として関わりをたしかに持ち始めるのです」とマクレランド氏は語った。

 トライブの中には、返還された遺品を再び儀式に用いることを決定するものもある。しかしながら、もし遺品が発掘時に変更を加えられていると、問題が生じることもある。木や皮革のような他の腐食しやすい材料で出来ている品は、害虫による破損を防ぐために砒素や毒薬で処理されていることもあり得る。

 「そのような遺品があるトライブに返還されることになっている際に、トライブはしばしば、それらを儀式での利用に戻すことに関心を抱きます。しかし、もし遺品が毒薬だらけの場合、深刻な問題があります。」[Cf. http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20120209/1328719973]

 同博物館の保存部門の責任者であるナンシー オデガード氏が言うには、博物館の記録を見たり、実験室で遺品の鑑定を行なって、何が起こった可能性があるかを探り出すことが時には可能である。遺品がどのように展示されていたかによって、物理的な手がかりがあることもある。博物館の物品には、ほとんどいつも、番号とラベルが付けられている。[ちゃんとした博物館なら当然のことだね。]

 「トライブの人々との協議をもつ際に、もし彼らが私にそのような課題のどれでも、もっと具体的に取り上げて欲しいと言えば、そうすることはできます」と、オデガード氏は言った。「再利用されるかもしれない文化遺品について、時々、私のできる限りでカタログ番号を取り除くことを依頼されたことがあります。」

 返還は、1990年に制定されたNAGPRA(法)の一環である。しかしながら、アリゾナ州立博物館は、ライオンズ氏によれば、1980年代から返還に関わってきている。マクレランド氏によれば、これまでに少なくとも15の異なるトライブや先住アラスカ民族の村々が同博物館の収蔵品の返還を受けてきた。同博物館は、合わせて47の返還を行なってきており、それには1,734人の遺骨、41,111の埋葬品、そして222の文化的伝承品が含まれる。

 「私の認識では、トライブの人々が強く信じていることは・・・正しいことは、遺骸・遺骨が自然に分解してそれまで辿っていた旅を、まあ言わば、完結できるように地中に戻ることであるということです」と、ライオンズ氏は述べた。

Alison Dorf, "Arizona State Museum's future director works to return artifacts, human remains to tribes," Arizona Daily Wildcat, April 3, 2013. http://www.wildcat.arizona.edu/article/2013/04/arizona-state-museums-future-director-works-to-return-artifacts-human-remains-to-tribes

 

文科省が拙速に間に合わせで作ったマニュアルを○×氏たちが受け容れて、大学や博物館が一部の遺骨や遺品の返還を開始したとしても、それはすぐに時代遅れのマニュアルになるのではなかろうか。

 白老のアイヌ民族博物館だとよいけれど、多分予算がないだろうから、北大の研究センターが、こういう博物館の関係者をこそ招聘して講演してもらえば良かろうと思うのだが。財団でも良いだろう。

(2013.04.30, 0:01)


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2013/04/29/020000

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