AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

NAGPRAの限界と予測される今後の動き

 この2、3ヵ月、個人的に強い関心をもって動向を追っていた事件が2つある。1つはブログでも3回取り上げたこともあるウーンディド ニーの地主による売却問題(直下の3つのURL)で、もう1つは、ブログでは取り上げていない、ホピの精霊が宿ると言われるマスク(お面)のオークションでの売買問題である。
http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20130215/1360857035
http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20130316/1363365287
http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20130331/1364741975
(ブログの趣旨を変更したので、その後の経緯は、未掲載。)

 ホピの事件に関してはここでは初めてなので、簡単に概要を記しておく。先月、フランスのオークションハウスが先住アメリカ人の約70の神聖なお面――そのうちの大半が「カチナ(Kachina)」と呼ばれるホピ民族によって作られたもの――をオークションにかけて売却することを発表した。ホピ民族は抗議し、フランスの法廷にも訴えて法的にオークションをやめさせようとした。お面には彼らの亡き先祖の精霊が宿っており、それは宗教的に神聖なものであると主張した。さらに、それらは元々、ホピなどの先住アメリカ人から盗まれたものであるとも主張された。ホピ民族の抗議に対して、他のインディアン トライブや団体、アリゾナ州の2つの博物館、サバイバル インターナショナルのような国際的NGOからもホピ支援とオークション中止を要請する声が上がり、在仏アメリカ大使館もオークションの中止を外交的に働きかけた。しかしながら、このような抗議運動にもかかわらず、4月12日にお面は総額120万ドルで個人収集家や博物館に買われた。報道記事のいくつかを挙げておく。
"Museums join US tribe to oppose Paris artifact sale"
http://www.globalpost.com/dispatch/news/afp/130403/museums-join-us-tribe-oppose-paris-artifact-sale
"Hopi Katsinam Auction in Paris: A Conversation with the Auctioneer"
http://indiancountrytodaymedianetwork.com/2013/04/09/hopi-katsinam-auction-paris-conversation-auctioneer-148705
"Native American masks auctioned in Paris amid jeers"
http://www.usatoday.com/story/news/world/2013/04/12/native-american-artifacts-paris-court/2076687/ (動画あり)
"'Heartbreaking' Auction of Hopi Katsinam Proceeds in Paris"
http://indiancountrytodaymedianetwork.com/2013/04/13/heartbreaking-auction-hopi-katsinam-proceeds-paris-148791

 ウーンディド ニーに関してはNAGPRA適用の可能性が示唆されていることも取り上げたが、民間人地主による商取引への適用の限界が感じられもする。ホピのマスクに関しては、マスクが米国外で保有されており、オークションも米国の主権が及ばないフランス国内で行なわれたことから、国内法としてのNAGPRAは効力を持ち得なかった。前に書いたこともあるイギリスの大学からアメリカのトライブヘの遺骨返還でも、国境を越えての返還が困難な問題となり、政府や政治家による外交努力が成功裡の返還に欠かせない要素となっていた(http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20120522/1339431680)。

 既にNAGPRAをもつアメリカの先住民族は、このような状況に対処するために国際的な取り決めを求めて取り組みを行なってきているが、今回の事件も影響して、その取組をさらに強化していくことになるであろう。その際に「先住民族の権利に関する国連宣言」が重要な役目を果すことは間違いない。実際、今月下旬にはPFIIが開かれるニューヨークの国連へのアメリカ政府代表部において、国際的な遺骨や副葬品の返還に関するフォーラム(パネルディスカッション)が企画されている。こうした動きとフォーラムについては、また別に書くことにする。

 前に指摘したと思うのだが――どのエントリーだったかは忘れた――、北海道アイヌ協会や他のアイヌ組織が政府と協力して海外に流出している遺骨や遺品の返還に取り組むとすれば、政府は、まず国内の遺骨・遺品をめぐる問題をきちんと解決して、国際的返還を求めうる態勢の整備をする必要がある。また、アイヌ側は、政府にすべてを「お願い」、「お任せ」でも事は進むまい。

 次回は、国際的な返還運動について and/or 「先住民族の権利に関する国連宣言」と遺骨・副葬品問題について投稿する予定。

(Revised: 2013/05/12, 1:40)

 

転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2013/05/11/012519