AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

チーフ ジョゼフ:「息子よ、耳をふさげ」

 1879年1月14日、現在の合衆国北西部に位置していたネズ パース(Nez Percé)ネーションのチーフ ジョゼフ(Chief Joseph)が、なぜ1877年に合衆国軍隊に対して戦争を宣言しなければならなかったのかを説明して合衆国議会で行なった演説の一部である。チーフ ジョゼフの一隊は、4ヶ月間、1,300マイル以上にわたって、カナダへ逃避しながら合衆国軍に対してゲリラ戦を遂行した。そして、チーフ ジョゼフは、国境に達する直前で降伏することとなった。(ネズ パースと言えば、お馬の背に跨ってパカパカとその戦いと苦難の旅路を日本人女性の大学院生――だったと思うが――が辿る姿を番組にしたNHK教育TVの「日曜何とか」だったか、TBSの「新世界紀行」だったかの放送を1980年代後半、帰国して間もない頃に見た覚えがある。その方は、今は東京の某大学の教授をされているようである。)

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(前略)

「私の父は、[条約]協議会を退席した。ネズ パースの他のバンドのチーフの中には、条約に署名した者もいた。そしてスティーヴンズ知事は、彼らに毛布の贈り物を渡した。私の父は、仲間の人々に贈り物を受け取らないように注意した。その理由は、「しばらくすると、彼らは、あなたたちが自分の国に対する支払いを受け取ったと主張するだろうから」と彼は言った。それ以来、ネズ パースの4つのバンドが合衆国から年金を受けてきた。私の父は多くの協議会に招かれて、彼らは懸命に彼に条約に署名させようとした。しかし彼の決意は岩のように固く、自分の故郷を署名によって手放そうとはしなかった。彼の拒絶は、ネズ パースの間に意見の対立を生じさせた。

8年後(1863年)に次の条約協議会が開かれた。ローヤー(Lawyer=法律家/弁護士)という名のチーフが、とても雄弁家だったので、この協議会を主導し、ほとんどすべてのネズ パースの国土を売り渡した。私の父は、出席していなかった。彼は、私に言った。「白人との協議に入るときは、自分の国のことを常に覚えておきなさい。それを譲り渡してはならない。白人は、おまえたちを騙して国から追い出すだろう。私は、合衆国から何の支払いも受け取っていない。私は、決して私たちの国/土地を売ったことはない。」この条約においてローヤーは、私たちのバンドからの権威を得ずに行動した。彼には、ワロワ(Wallowa)[蛇行する水路]の国を売る権利はなかったのだ。そこは常に私の父の仲間の人々に帰属していて、他のバンドがそこに対する私たちの権利を争うことは一度もなかった。他のどのインディアンも、ワロワに対する権利を主張することはなかった。

どれだけの土地を私たちが所有していたのかをすべての人々に理解させるために、私の父は、その周りに棒を立てて言った。「内側は、私の人々の郷里である。白人は、外側の土地を取ってもよい。この境界の内側で、すべての私たちの人々は生まれた。その境界は私たちの父たちの墓を取り囲んでいて、私たちは決して、これらの墓を誰にも手渡すことはない。」

(略)

合衆国は再び、条約協議会を求めた。私の父は、目が見えなくなり、弱ってもいた。彼はもやは、彼の人々の代弁をすることができなかった。私がチーフとしての父に代わったのは、その時だった。

(略)

この後まもなく、私の父が私を迎えに来させた。私は、彼が死にかけているのを目にした。私は彼の手を握った。彼は言った。「息子よ、私の体は、私の母なる大地に還りつつある。私の魂(spirit)はもうすぐに、偉大なるスピリット チーフに会うことになる。私が逝ってしまったら、おまえの国のことを考えなさい。おまえは、この人たちのチーフなのだ。彼らは、自分たちを導いてくれるようにおまえを見る。おまえの父は決して自分の国を売らなかったということを常に覚えておきなさい。おまえの郷里を売り渡す条約に署名することを求められる時はいつでも、おまえは耳を塞がないといけない。もう何年かすれば、白人たちがおまえたちの周りに溢れていよう。彼らは、この土地に目を付けている。息子よ、私の遺言を決して忘れるな。この国にはおまえの父の体が抱かれている。おまえの父と母の骨を決して売り渡してはならない。」私は父の手を押さえ、私は命をかけて彼の墓を守ると彼に告げた。私の父は微笑んで、魂の地へと旅立った。[強調は追加。]

私は、あの蛇行する水路の美しい谷に彼を埋葬した。私は、あの土地を世界のすべての他の土地よりも愛している。自分の父親の墓を愛さない男は、野生の動物より悪い。

"My Son, Stop Your Ears"
http://legal-dictionary.thefreedictionary.com/My+Son,+Stop+Your+Ears


P.S.(2013.06.23, 23:20):唐突に、なぜチーフ ジョゼフ?と思われたかもしれない。昨晩ある調べ事をしていて出くわして、太字部分を読みながら、遺骨返還裁判の城野口さんのお母さんとの約束の話と重なるように思えたから、背景を少し含めて訳出した。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2013/06/22/232649