AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

『ニュージーランド ヘラルド』紙の遺骨返還請求訴訟に関する記事について

 さすがに一晩にたて続けに3本投稿したせいか、検索キーワードに引っかかったせいか、昨日は、本ブログ開設以来2番目のアクセス数を記録した。だが、悔しいかな、まだPFIIでの「日本政府代表の発言」を抜けなかった! 以下は、加筆修正版である。(最終更新:6/25 01:05)

"Japan's indigenous Ainu battle for return of ancestors," The New Zealand Herald.
By Simon Scott 5:30 AM Saturday Jun 22, 2013
http://www.nzherald.co.nz/world/news/article.cfm?c_id=2&objectid=10892182

 6月22日(土)の早朝に上の記事が出ていたのだが、私は、深夜ヘトヘト状態でパソコンを切ろうとしている時に気づいた。翌日に読むつもりで通知記事だけ投稿したのだが、遺骨返還問題が海外紙にかなり詳しく取り上げられていることに大いに興味をそそられ、結局、半分眠った頭でざっと読んで、加藤忠理事長のコメントに次のようなコメントを書いた。英文の和訳は、オリジナルには付けてなかった。加藤氏が話した通りの元の日本語でないことは言うまでもない。

 ニュージーランド国民向けの記事の方が、日本のメディアが「国民の理解」のために配信する記事よりも詳しいのではないかな。
 私は、誤解していたのかもしれない。加藤忠理事長は、「議事概要」にも出ていたが、遺骨の問題は「深刻な人権問題」であって、「イチャルパを執り行えるように」「すべての遺骨をできるだけ早く返還して欲しい」と述べているようである。「もっとも重要なことは、私たちの先祖の魂を慰めることであると信じている」とも述べている。

Tadashi believes that the taking of the Ainu remains is a "serious human rights issue" and he wants to see all the bones returned as soon as possible.
忠は、アイヌ遺骨の奪取は「深刻な人権問題」であると信じており、彼はすべての骨を出来る限り早く返して欲しいと思っている。

"As soon as possible, we want the remains of our ancestors returned so we can perform icharupa, says Tadashi. "I believe the most important thing is to comfort the souls of our ancestors."
「出来る限り早く、私たちは、イチャルパを執り行えるように祖先の遺骨を返して欲しいと思っている」と忠は言った。「私は、最も大事なことは私たちの先祖の魂を慰めることであると信じています。」

 返還先と慰霊の場所は、「集約施設」ではなかったのですね。海外メディアにそうは言えなかったとか、そこは書かないでということではないのですよね。
 スコット記者は、加藤理事長がどこへ「返還」して、どのように「慰霊」すると言っているのかを書いて欲しかったな。


 この時点で私は、この記事は、北大開示文書研究会か、最近アオテアロアマオリとの交流研修に行ってきた団体による働きかけで書かれたのではないかと推測していた。だが、どうも前者ではないようである。後者については分からない。
  
 近くノルウェーを訪問するという某大学のアイヌ学生や海外交流に出かける若者を念頭に置きながら、次の日の午後に、次のように追記を書いた。
 このような記事が海外メディアに載ることは歓迎すべきことである。アイヌの若者を含めて「文化交流」に出かける人々も、この問題について尋ねられることにもなるだろう。そのためには、しっかりと勉強して自分の意見を持って出かけないといけないということになる。ただ漠然と出かけて行って、「海外の先住民族が高い意識をもって文化保存に取り組んでいることに感動しました」などというお決まりの感想――それも悪くはないが――とは違ったものを私たちも聞くことができるかもしれない。

 しかし、気になることがあって昨晩もう一度、記事を読み直してみた。主な読者は、ニュージーランドや海外の人々である。遺骨返還問題をフォローしている者にしてみれば、書かれていないこともつないだり埋めたりして読んでしまう。だから、加藤氏の発言に対する上のようなコメントを書きもするが、海外のまったく予備知識がない読者がその記事を読んだら、どういう印象を受けるのだろうかと気になったのである。私は、その記事を北米先住民族のニュースサイト経由で知ったから、現在の問題が北米先住民族にも知られることになったと思う。しかし、正確に知られたかどうかは疑わしい。
 それで、通常、記事に付随しているコメント欄に問題点を指摘しておこうと思ったのだが、コメント欄は付いてなかった。23日の午後10:44の時点で、フェイスブックで388人がその記事を共有していた。

 サイモン スコット記者の記事は、原告の紹介の後に市川弁護士のコメントにかなりのスペースを割いてはいるものの、それに続けて、管理が杜撰であったために返還が困難であるという北大の言い分や上記の加藤氏の見解を並べて紹介した後に、アイヌ文化の衰退についての8段落がある。

 遺骨返還問題に関する現状を知らずにこの記事を読んだ海外の読者は、あたかも小川さんや城野口さんたち、アイヌ原告団北海道アイヌ協会(加藤忠理事長)が一体となって返還を求めているという印象を受けたのではないだろうか。そうであれば、これはむしろ懸念材料であり、同記者および同紙に対して、もっと詳しいフォローアップ記事を求めるべきだろうと思う。

 この記事は、どのような経緯で書かれたのか。取材は、スコット記者が日本語で行なったのか、通訳が入っていたのか、などの疑問も湧く。一応、特定の名指しは避けておくが、いよいよ海外向けの情報戦が始まったのかもしれない。"Disinformation"――バフィー セントメリーさんの歌が思い出される。


 取り敢えず、加藤理事長が「人権問題」だと認識していることは理解できた。この発言も、加藤氏もしくは他の北海道アイヌ協会からの代表の発言であろう。

団体に返還して果たしてよいのか。これはよくないと思っているけれども、ただ、1,600体もあるものをいつまでも放っておいてよいのか。大きな人権問題だと思う。何もしていないまま5年が経っている。先住民族と認められて5年が経っているが何もできていない。言葉を躍らせても物事はできない。そうではなくて、実際にやることだと思う。何もせずに議論していても始まらない。
「第10回『政策推進作業部会』議事概要」より

 そして、このような発言もであろう。

一緒に埋葬された副葬品については、きちんとやってもらえると思うが、1,600体程もある骨を人間として早く慰霊施設に入れてもらいたい。その上で研究者も入れながら返還に向けて調べていけばよいわけで、慰霊の関係を1日でも早く進めてもらいたい。
「第11回『政策推進作業部会』議事概要」より

当時発掘したものは名前が書いていないところから発掘してきているのであり、容易に分かる訳がない。DNA鑑定しか方法がないのであれば、それはすごく時間がかかる話。時間をかけてやるのであれば、最初に施設をつくるのが先で、それから研究者が鑑定を行えばよい。
「第11回『政策推進作業部会』議事概要」より

 サイモン記者は、このような記録の下調べをした上で記事を書いたのだろうか。

 米国のNAGPRA制定過程の記録を読むと、「人権問題としての遺骨返還」という言葉と認識が繰り返し出てくる。加藤理事長や北海道アイヌ協会の幹部の方々には、ぜひとも「人権問題」としての認識を強く持って、「人権問題としての遺骨返還」に関する立法まで目指して欲しいものである。行政府のガイドラインだけで終わらせてはならないでしょう。


P.S.ニュージーランド ヘラルド紙の編集者へ意見を送ることができた。

P.S. #2(2013.06.25, 22:55):
 昼間、「さまよえる遺骨たち」ブログをちょっと覗いたら、上の記事の「解説」というリンクが張ってあってビックリした。先日のアメリカのフェイスブックでリンクを見つけたときも、瞬時驚いた。
 書きかえて少し整理したとはいえ、「解説」にはなってないな。NZH紙から何か反応が来たら、ついでにもう少し書くことにしよう。

 昨日(24日)は、"Against the Wind"ブログを書き始めてからちょうど3周年目だった。ブログ開始の1ヶ月少し前、最近、狸小路に支店が開いたらしい中古パソコン店から19,800円で買ったデスクトップPCでここまで書いてきた。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2013/06/23/025826

広告を非表示にする