AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

2012年のアイヌ社会に関する2大出来事

 今日、デンマークコペンハーゲンにあるInternational Work Group for Indigenous Affairs (IWGIA)からThe Indigenous World 2013という年鑑が届いた。IWGIAとの出会いは、事務局長(Director)を務めていた故アンドルー グレイ(Andrew Gray)さんとの出会いを通じてだった。彼はイギリス人の人類学者だったが、先住民族の権利のための活動家でもあった。だが、大変惜しまれることに、1999年5月8日、ヴァヌアツ沖の嵐の中で飛行機事故に遭い、43歳でこの世を去ってしまった。(先日、思い出を綴った久保田さんは、38歳だったと記憶している。)
 その後しばらくは知った名前が編集委員名簿に載っていたが、今日届いた年鑑の編集委員欄には、もう一人も知った名前がない。時の流れを考えれば当然のことである。次々と若い世代が跡を継いでいる。

 The Indigenous World 2013の222-227ページが日本に割かれていて、223-225の実質2ページにann-elise lewallenさん(名前に大文字を使用しないことを流儀としている感じなので、そのまま記す)が"The Ainu"を、後ろの半分に"The Okinawans"をKelly Dietzさんが執筆している。

 PFIIで日本からの参加という点では日本政府代表の一人舞台だったが、lewallenさんも、よほど書くことに困ったのだろうか、「2012年にアイヌ社会に影響を及ぼした主要な出来事」のトップにアイヌ民族党結党("Birth of the Ainu Party")を挙げている。そういう評価をする関係者がいてもおかしくはないし、それにとやかく言うつもりもない。だが、やや贔屓目に過ぎるのではないかと思うのである。

Although Shimazaki's bid was unsuccessful -- she came fourth after the Japan Communist Party candidate -- she told supporters she was pleased with their collective efforts in this first-time challenge. As Shimazaki was required to run as an independent rather than list her affiliation with the Ainu Party because of the political outsider status of the party (see endnote 2 on Japan's electoral system), observers suggest that she was disadvantaged among Ainu and wajin supporters of Ainu indigenous rights, many of whom were unaware that an Ainu representative was on the ballot. (p. 224)

 確かに、「共産党候補に次いで4位」ではあったが、やはりこの書き方は不十分だろう。こちらと比べてみると、その違いがよくわかる。
「・・・7,495票、小選挙区の中では最下位(第4位)、3位の共産党候補にも2万票以上の差をつけられました。票数でいうと惨敗です。」(http://yaplog.jp/koshidakiyo/archive/333)

 アイヌ民族党が政党要件を満たさなかったことで無所属として立候補せざるを得なかったことによって、アイヌと和人のアイヌ先住権支持者の多くがアイヌの代表が立候補していることに気づかず、それが不利な条件となったということであるが、そうだろうか? アイヌの権利支持者であれば、立候補のことは知っていたはずだと思うが。

 いずれにしても、lewallenさんは、来年の年鑑には何と書くのだろう。今から楽しみになってしまう。

 2大出来事の2つ目が「医学研究とアイヌ祖先の遺骨の問題(Medical research and the problem of Ainu ancestral remains)」である。「3人の北海道アイヌの高齢者」が北大を訴えたことが記されている。
  私はまだ、3人目の原告のお名前も性別も年齢も知らないため、英語で"elder"と書いてよいものかどうか躊躇していたのだが、3人目の個人情報は外に出ているのだろうか。


P.S. (2013.07.04):
 Web上でも読めると知らせて戴いたので、紹介しておきます。先にこちらを見るべきだった! わざわざ入力する手間を省けたのに。http://www.iwgia.org/images/stories/sections/regions/asia/documents/IW2013/Japan.pdf

 ついでながら、北大の研究センターが下のような講演会を企画していることも知らせて戴いた。

CAIS公開セミナー2013
先住民族の権利に関する国連宣言」の国内実施:アメリカの経験と先住民族世界会議(WCIP)2014への展望

国連宣言の実施状況等を審議するために2014年9月に国連が開催する先住民族世界会議(WCIP)に向けて、これまでのアメリカの経験を踏まえ、同宣言の国内実施についてわかりやすく講演していただきます。

報告者:リンゼイ・ロバートソン(オクラホマ大学法科大学院附属先住民法政研究センター長)
日時: 8月3日(土) 14:00~17:30閉会予定 (13:30開場)
会場: ACU(アキュ) 大研修室1606
    札幌市中央区北4西5アスティ45 16階 (札幌駅地下直結)

リンゼイ ロバートソン教授⇒http://www.law.ou.edu/content/robertson-lindsay

"Freedom 101 - Lindsay Robertson - Indian Affairs" posted by OU IACH at http://youtu.be/pjw_tI6hAXk

タイムリーな話題も:「ジェンダー憲法
"Freedom 101 - Lindsay Robertson - Gender and the Constitution" posted by OU IACH at http://youtu.be/h-jMDvDr2QI

消費税増税、いや、そもそもアイヌ民族に対する課税がもつ意味について語ってもらっても面白かろう。
"OU Law Professor Lindsay Robertson Testifies Before Congress About Tax Reform" posted by UofOklahomaLaw at http://youtu.be/WQVVPdwHfvw


P.S. #2:
 昼間、時間がなくてロバートソン教授の参考情報だけを投稿しておいたが、べつに私は、北大の研究センターの企画の宣伝をしているわけではない。
 「先住民族」には国連の権利宣言が適用される先住民族とされない先住民族――こちらにアイヌ民族が入る――という世界史に挑戦するダブルスタンダードを設定した有識者懇談会報告書を出し、それと引き換えにこのような講演会を行うことができる予算の増額や懇談会メンバーの地位を確保した人々――少なくとも当時はそう見えたし、その後の経緯もそれを物語っているように見える――が、どういう思惑で、こういうテーマで語らせるのだろうかと、どうしても考えてしまう。それを知る由もないが、研究センターの中での人選過程にとても興味がわくのである。先住民族の実態がないと言われた人たちの前で、何を「わかりやすく」語ってもらおうというのだろうか。

 ロバートソン教授のConquest by Law: How the Discovery of America Dispossessed Indigenous Peoples of their Lands[法による征服――アメリカの発見がいかにして先住民族から土地を剥奪したか](New York: Oxford University Press, 2005)は、北米インディアン法の基本文献の一つにも挙げられているが、北海道の「発見」と「開拓」がいかにアイヌ民族の土地や文化を奪ってきたかと比較しながら語ってもらうとよいだろう。

 「先住民族に関する世界会議」準備会議が明示した4つのテーマ(先住民族の土地・領域・資源、先住民族の権利の実行のための国連の行動、先住民族の権利の実行、自由で事前のインフォームドコンセントに対する権利を含む発展/開発のための先住民族の優先事項)についても、しっかりと語ってもらうと良いだろう。もちろん、NAGPRAに至る米国内での先住民族のイニシアティヴや国際的な遺骨返還を求める動向についても。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2013/07/02/234851

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