AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

比較参照せよ:「アイヌの多数の人々の意」?

 昼間にある人から尋ねられたことについて少し前に検索していると、北大のアイヌ・先住民研究センターによる調査の報告書(「北海道アイヌ民族生活実態調査報告 その2」)に出くわした。それで、遺骨に関する項目を再確認してみると、こういう結果となった。

 この調査では、「20歳から80歳の人々の・・・あわせて120人(札幌市60人、むかわ町60人)を対象者として選ん」でインタビュー形式で質問が行われている(11ページ)。その中に、「国や北海道に望むアイヌ政策」ということで、「大学等に保管されている遺骨を国が慰霊する施設を作る」ことについてどう思うかという項目がある。得られた回答は、いくつかのカテゴリーで分類されて報告されている。

 「第1章 世代によるアイヌ多様性」(執筆者:野崎剛毅=國學院大學北海道短期大学部准教授)では、「表1-18」にその項目がある。ここでは、青年、壮年、老年に分類され、それぞれ順に、5人(17.2%)、10人(23.8%)、12人(29.3%)、合計で27人(24.1%)となっている。(35ページ)
 「第2章 大都市と農漁村部におけるアイヌの生活」(執筆者:品川ひろみ=札幌国際大学短期大学部准教授)では、「表2-16」に同質問項目があり、札幌13人(25.5%)、むかわ14人(27.5%)、全体27人(24.1%)なっている。(57ページ)
 「第3章 アイヌジェンダー」(執筆者:小野寺理佳=名寄市立大学保健福祉学部教授)の「表3-16 国や道に望むアイヌ政策 ○(賛成)と答えたひとの数」には、上の第1章の青年、壮年、老年の数が、それぞれ男女別で示されていて、その順の男・女の順で、2人・3人、4人・6人、5人・7人、そして合計は27人となっている。(74ページ)
 この第3章には、「アイヌのための政策であるため、すべてについて賛成意見が多い」(74ページ)というコメントが挿入されているが、これには首を傾げたくなる。回答者の24.1%の賛成であるだけでなく、全部で15項目の質問事項のうち、「工芸織物技術が次の世代に受け継がれるように技術の向上、人材育成を図る」(23人)、「土地資源をアイヌ民族に返還する」(24人)に次いで3番目に少ない「○(賛成)と答えたひとの数」なのである。
 その一方で、「遺骨の慰霊については、『施設をつくるのは税金がかかる。それこそ税金の無駄遣い』(30代男性)や、『アイヌ側ができればお金を集めて自分たちで慰霊碑の設備を。自分たちでやらなきゃだめだと思う』(40代男性)といった慎重な意見がある」との声が特記されている。(76ページ)
<小内透(編著)『現代アイヌの生活の歩みと意識の変容――2009年 北海道アイヌ民族生活実態調査報告書――』(北海道大学アイヌ・先住民研究センター 2012)http://www.cais.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2012/04/ainu_report2L_all.pdf
(注)アイヌ政策推進会議の「北海道外アイヌの生活実態調査」作業部会が出している「『北海道外アイヌの生活実態調査』作業部会報告書」(平成23 年6月)<http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/jittaichousa/houkokusho.pdf>とは別物である。


 第11回「政策推進作業部会」の「議事概要」にはこのような発言が記録されている。

前回の部会でも話があったが、遺骨の返還・集約を進めるにあたって、「アイヌの多数の人々の意に反して象徴空間への集約や研究利用を強行するつもりはない」とあえてここで記述する理由がわかりにくい。アイヌの人々の意に反して強行するつもりはないというのは、慰霊施設以外のほかの施策にも共通することではないのか。そもそも慰霊施設は、有識者懇談会において北海道ウタリ協会が機関決定を経て行った政策提言に含まれていたもの。その意味で「アイヌの多数の人々」の意向と受け止められていたはずである。
http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2013/05/29/003440に引用。)


P.S.:
 「現代アイヌ(を研究する)研究者の生活の歩みと意識の(突然の)変容」を研究するアイヌのグループが結成されるとのニュースはまだないかな?


追記(2013.07.28)

反応 No. 1:サンプル数が120では「科学的」調査研究とは言えない。真の「多数の賛成」という結果が得られるまで、もっともっとサンプル数を増やす必要がある。(遺伝人類学者)

反応 No. 2:4人に1人以下の賛成で「多数の賛成」と解釈するというのは、「ダブルスピーク」そのもの。(イギリス文学、オーウェル研究者)

反応 No. 3:当協会の見解に結論を合わせてくれて大変ありがたい。更なる研究成果を期待している。これからも調査には協力を惜しまない。(某協会関係者)

転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2013/07/26/011820