AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

北海道新聞社説(9月26日)「民族共生空間 『先住権』の議論足りぬ」

標記の社説(http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/494067.html)より

 国会決議はアイヌ民族にとって、過去の誤った政策で奪われた文化を取り戻し、諸権利を主張できるようになるなど、「先住権」につながる点で画期的な意味を持つ。

 太字にした部分は、奇妙な論理ではないか? 国会決議があろうとなかろうと、アイヌ民族はいつだって「諸権利を主張できる」。

 こちらは、国会決議の抜粋である。

3.また政府としても、アイヌの人々が日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族であるとの認識の下に、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」における関連条項を参照しつつこれまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策の確立に取り組む所存であります。

 もはや、敢えて解説も要るまい。

 ところで、北海道新聞は、国会決議以降、「先住民族の権利」についてどのような「議論」を展開してきたのだったっけ? これからどんどん特集を組んでもらえることと期待しておく。

                                                 ~おわり~

P.S. #1(2013.09.30):
 北海道新聞関係者が新たな読者になってくれたみたいなので、一言追記しておこう。今まで何度も書いてきたことだから、もう良かろうと思ったのだが。

だが、基本構想の具体化の中では、言語の普及に関する言及はあるものの、アイヌ民族の復権に向けた議論はほとんどない。

 その構想の枠組み作りにアイヌ政策に関する有識者懇談会およびアイヌ政策推進会議が果した役割を北海道新聞はどのように評価するのだろう。

 政府の有識者懇談会が、国の政策によって深刻な打撃を与えたとの歴史認識を明確にし、政府に文化復興の責任を求めたのは当然である。

 有識者懇談会はちゃんと仕事をしたが、それ以後のプロセスで変になってきたと言っているように読める。果たして、そうであろうか。有識者懇談会は「文化復興」への「権利基盤アプローチ」をなぜ盛り込まなかったのか。(Cf. http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/2013/09/02/002755)「これまでのアイヌ政策をさらに推進」することは、直線的・連続的に「総合的な施策の確立」につながることだったのか。そもそも、有識者懇談会は、専門的な観点から「これまでのアイヌ政策」の分析・評価を十分に行ったのか。

 北海道新聞は、これまで一貫して有識者懇談会方針を支持してきたのではなかっただろうか。「先住民族の権利」に関する議論が不足しているというのは正しい指摘であるが、その現状は有識者懇談会報告書の延長線上にあるのではないか。「議論足りぬ」と今ごろ言うのであれば――言わないよりましだし、動画サイトのCMで「変わります」とかやっていたからその具体化かもしれないが――有識者懇談会に関するこれまでの評価記事・社説をきちんと検証してもらいたいものである。


P.S. #2(2013.10.01):

 NHK国際放送が9月27日にアイヌの遺骨返還についての特集を海外に向けて放送したそうで、今後数日間は視聴できるとのこと。⇒http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/newsline/201309271620.html

 前日の26日にはアイヌ語復興への取り組みが放映されたようだ。⇒http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/newsline/201309261624.html

 NHKは、こういうニュースを国内向けには流していないのだろうか。


P.S. #3(2013.10.03):

 NHK国際放送のURLを知らせたものの、そのサイトには日本語の解説がない! (文字通りの)出血大サービスで、以下にナレーションの全文を訳出する。

標題:過去の悪事を正す


日本の先住民族アイヌの一部の人々が再び困難な状況に置かれています。19世紀に政府は北方の北海道の彼らの土地を奪い、言語や漁業実践を始めとして、彼らの伝統や慣習を禁じました。今日、アイヌ民族はその遺産のもう1つの部分――祖先の遺骨――を保存するために戦っています。彼らは、[複数の]大学から遺骨を取り戻そうとしています。


NHK Worldの山岸千恵が、この闘いについて報告します。


城野口ユリさんは、80歳のアイヌです。60年近くの間、彼女は自分の祖先の遺骨が戻ることを祈ってきました。彼女は、大学の研究者たちが遺骨を盗んだと言っています。
「私は、私の祖先の遺骨に対して行われた悪行を人々に認めて欲しいのです。」

[児玉作佐衛門の映像を背景に]最近の政府調査が明らかにしたところでは、日本の11の大学が1,600人以上のアイヌの人々の遺骨を保有しています。研究者たちは、19世紀後半に主として人類学研究のために墓地から遺骨を奪取し始めました。


[杵臼の墓地を背景に]アイヌ民族の一集団がここの低地の区画に埋葬されていました。城野口さんは、研究者たちは親族の同意を得ずに墓を暴いたと言っています。
「この辺ずっとにたくさんの穴がありました。」
城野口さんは、研究者たちがこの村[コタン]の彼女の祖父母や他のアイヌの人たちの遺骨を1955年頃に掘り出したと言っています。


城野口さんのお母さんは彼女に、北海道大学が遺骨を持っていると話しました。お母さんは亡くなる少し前に、自分の娘に遺骨を取り戻すように懇願しました。


城野口さんは、他のアイヌと協働して北大を訴えました。
「絶対に戻してもらうよ。(←日本語の通り。)全部を取り戻せるかどうかは問題ではない。だが、もし1本の骨でもあれば、それを欲しい。」


北海道大学当局は、政府の政策に従って遺骨を返還することを考慮すると述べている。


アイヌ政策推進会議を背景に]政府は今月、基本政策を提示しました。各大学は、もし直系の子孫を特定できれば、遺骨を返還するべきであるとしています――ほとんどの事例において困難な、あるいは不可能なことです。それ以外の場合、政府は、遺骨を北海道に建設予定の「慰霊施設」に保存する計画です。基本政策はまた、一部の遺骨をさらなる研究のために利用することを考えるとも述べています。


しかし、城野口さんや他の原告は、遺骨がかつて埋葬されていた場所に戻されることを望んでいます。


一部の国々――例えばオーストラリア――は、遺骨をそれが由来する元の共同体に返還する政策を導入しています。


こちらの国際法の専門家[苑原氏]は、国連宣言もまた、先住民族の遺骨を返還することを国家に課していると言います。彼は、日本の指導者たちは、国際法に従って、アイヌの人々がこの件について決めることができるようにするべきだと論じています。
「政府は、諸大学が――当時はほとんどが国立大学でしたが――、なぜ、どのようにして遺骨を収集したのか調査してはっきりさせるべきです。政府は、起こったことに対して謝罪し、補償をも申し出るべきです。」


城野口さんは、謝罪は絶対必要なことだと言っています。「もし各大学と政府が謝罪して、二度とそのような酷いことをしないと約束すれば、私たちはようやく穏やかな気持ちに収まるんだわ。」[「収まるんだわ」だけ日本語から。]


アイヌにとって、彼らの遺骨の返還は正義の問題だけではなく、癒しの問題でもあります。彼らは、日本の指導者たちに、過去の悪事を正すことにコミットしている姿勢を示して欲しいのです。
(山岸千恵、北海道浦河より報告。)


日本政府関係者によれば、アイヌ共同体の子孫への返還も含めて、遺骨の返還方法についてさらに検討するとのことである。


P.S. #4(2013.10.04):

感想:

①例えばN.Z.ヘラルド紙がやっていたように、北海道アイヌ協会の見解も紹介するというのが通常というか、常套なのだろうが、これにはまったく登場していない。なぜ? 取材側が無視した? 協会側が拒絶した?

②インタビューに登場している大東文化大学の苑原教授が何と発言しているのか、一言一句を聞いてみたいものである。想像するに、取材前の打ち合わせから実際の収録まで、かなりの時間を費やしたであろう。だから、この一言で判断はできないが、"He argues Japanese leaders should follow the international law to allow Ainu people to decide on this matter."(彼は、日本の指導者たちは、国際法に従って、アイヌの人々がこの件について決めることができるようにするべきだと論じています。)というナレーションの"allow"以下についてだけでも、もう少し突っ込んで聞いてみたいものである。殊に、北海道アイヌ協会の「この件について」の見解を考え合わせると、映像から受ける印象以上の意味合いが込められているようにも思えて仕方ない。

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