AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

第5回アイヌ政策推進会議

 これまた、いつのことか分からないが、9月11日開催の標記会議(別名:アイヌ民族をしっかり守る会議)の「議事概要」が公開されている。⇒http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/dai5/gijigaiyou.pdf

 わずか54分間――細かく記されている――の短い「儀式」で、どれが誰の発言かも分かりやすい。

P.S. (2013.10.05, 23:30; revised 10.06, 13:30; last revised 10.07, 1:30):

 2ページ以降の「意見交換」の発言者(敬称略)を推測してみると、発言順に、加藤、高橋、上田、丸子、横田、中野、阿部、大西、あとの3つは短くて判断不能、となる。

 それにしても、官房長官は、メディアに向けてだけでなく、この会議の冒頭でもアイヌの各出席者を前にして「アイヌという先住民族について私たち日本としてしっかりと守り、そして、推進している姿を海外の皆さんにも見ていただける良い機会としたいと思って」いると述べていたとは! 驚きは、それだけではない。その発言に対して、議事概要から削除されたのでなければ、(何を「推進している」のか目的語がないなどというのではなく、)誰も何も発言していないことである。

 菅官房長官は、(既に書いたように、何からかは分からないが、)アイヌ民族を「守る」ということを――もしかしたらそれだけだったかもしれないが――非常に強く思念していたようだ。政治指導者たちは、まだまだILO 107号条約のメンタリティーから抜け出せていないようだ。かつての「旧土人保護」政策から「アイヌ保護」政策へというのが、今「オールジャパン」態勢で推進されつつある「日本型アイヌ政策」の本質ということであろうか。

1,635 体が全国の大学に放置されている状況です。長官には、人として扱っていただきたいのです。何とか一日でも早く安心させたいという思いしかないのです。ですから、何とかスピードアップを図っていただきたいのです。長く延ばしても何もいいことはないと思いますので、このことをよろしくお願いしたいと思います。

 加藤理事長のものと思われるこの種の発言については何度も取り上げてきたから同じことは繰り返さないが、「スピードアップ」して「慰霊施設」に遺骨を移動したからといって、それで事が解決するわけではないことは政策推進作業部会での文部科学省提案からも明らかであろうに。一人ひとりの遺骨を「人として扱って」返還を目指すために何が必要なのか、本当に考えておられるのだろうか。「慰霊施設」が出来た後の状況に対応するための態勢づくりには取りかかっておられるのだろうか。この種の発言を読むたびに、とにかく「施設」さえできればそれで「遺骨問題」は解決だという思惑が感じられるのである。

 「人として扱[う]」ということで、祖先の遺骨や遺品の返還運動に携わってきたアメリカ インディアン女性の言葉を思い出した。並べて記しておく。

 [遺骨や文化遺品の]返還諸法の作成における主要な政策の成果ともっとも厳しい戦いは、先住民族の人間化――すなわち、私たちにも埋葬されて、埋葬されたままでいて、私たちの同胞と財をそれらを所有したがる人々から取り戻し、そして、私たちが選ぶ方法と用具で崇拝するという人間の権利があるのだという法的な承認――でありました。
―――スーザン ショーン ハルジョ=Suzan Shown Harjo (Cheyenne & Hodulgee Muscogee)

「誰が祖先たちを代弁するのか――スーザン ショーン ハルジョ博士とのパネルディスカッション」(2011年8月21日)
"Who Speaks for the Ancestors? Panel Discussion with Dr. Suzan Shown Harjo." Embedded here with many thanks to IndianArtsCulture.
http://youtu.be/I63m1JtDr1w

(上記発言の引用源ではない。)


 高橋知事も、「アイヌの方々の遺骨問題」について、「何としても、スピードアップをして」検討を進め、「全国共通の課題として、国のイニシアチブを心から期待」すると発言している。その他の施策では他の出席者からも「立法措置」に言及がなされているが、「全国共通の課題」である「遺骨問題」、そして今後出土する「アイヌの方々の遺骨」に関しては、誰も「立法措置」の「り」の字も口にしていない――するわけがないし、できるわけがないことも承知の上で書いている。

 さらに、議事概要の中で最も"jaw-dropping"発言の一つが、こちら。わざわざ東京から、このことを言うために北海道まで足を運んだとは、ご苦労なことである。前にも批判したことがあるが、大事なことは言わないという条件で「名誉職」を請け負っているのだろうか。(ところで、この種の会議のメンバーには金銭的報酬はあるのかな? あるとすれば、1回の出席でいくら?)

常本委員の御尽力で大変いい提言が出されておりまして、我々としては、そのいずれも基本的に支えていきたいですし、推進していただきたいと思っております。しかし、その中で、所々に書かれてはいるのですが、余り強調されていないことがあります。それは、世界の先住民族との連携です。
(中略)
・・・世界の先住民族はいろいろな問題を抱えていますが、その中で、日本はこういう取り組みをしているということを知ってもらうことが、実は、世界の先住民族にとって逆に励みになって、日本はそういうことをやっているのか、日本に行ってちょっと調べてみようということにもなって、アイヌ民族のところを訪ねてくる先住民族の代表もふえてくると思います。

 ご希望通りに、世界に「少なくとも英語でも発信」してくれたNHK国際放送は、アイヌ政策推進会議や北海道アイヌ協会から賞賛されるに値しよう。
 "jaw-dropping"⇒http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20130128/1359305342

 これ(↓)が、「『先住民族の権利に関する国際連合宣言』における関連条項を参照しつつ」、「総合的な施策の確立に取り組」んできた結果というのだから、本当に開いた口が塞がらない。自然の中で泥んこになって遊べる場所や「都会の人生をもう一度見詰め直してみませんか」と「おもてなし」の言葉を投げかけている地域は、北海道まで行かなくても、日本全国あちこちにありますがな。

私どもは、このキャンペーンでまずアイヌ文化に関心を持っていただき、その奥にある自然との共生というようなアイヌ民族の生き方に触れる中で、「ぜひ北海道にお越しいただき、都会の人生をもう一度見詰め直してみませんか」というようなメッセージを出していきたいと思っております。


 2010年にアルジャジーラが放送した報道特集番組で、加藤忠北海道アイヌ協会理事長が「謝罪という言葉は使われていないが、謝罪は済んだ」という旨の発言を世界に向けてしたことを某ニュース誌で紹介したことがある。それ以後、その報道映像にアクセスしていなかったのだが、上の「英語でも発信」提言で思いついて検索してみると、その映像がそのままであったり、一部だけ抜粋されたりして、あちこちで貼り込まれて利用されているのを知った。これは、ちょっと意外であった。その報道映像とは、こちら(↓)である。YouTubeにもアップロードされている。YouTubeの英語によるらしき"Ainu People"の動画リストには、なんと1,645本も収められている。大学に保管されている遺骨の数と同じくらいというのも、なんだか変な感じである。以下にリンクを貼った記事の中に一時代前の映像があり、懐かしい人たちが登場しているから、末尾に貼り込んでおく。

"101 East : Japan's Ainu" by AlJazeeraEnglish
http://youtu.be/iA7BILX-q4I

http://www.aljazeera.com/programmes/101east/2010/02/20102310593859776.html

http://www.aljazeera.com/news/asia-pacific/2010/02/20102465020204126.html

http://newsink.net/ja/client/japans-ainu/

http://worldfocus.org/blog/2010/02/22/japans-indigenous-ainu-people-struggle-to-keep-way-of-life/9780/

http://www.dailymotion.com/video/xr8o1v_101-east-japan-s-ainu_tv

http://www.dailymotion.com/video/xr8ntd_japan-improves-relations-with-ainu_news

http://www.japanprobe.com/2010/02/08/al-jazeera-english-reports-on-japans-ainu-community/

http://didanashanta.com/2013/09/another-museum-for-the-ainu-japans-indigenous-people.html

"The Despised Ainu People - Japan" posted by Journeyman Pictures at http://youtu.be/CjBYtYAOsJc

 確かに、「ちょっと調べてみようということにもなって」、各国の先住民族の指導者たちが、各大学の遺骨保管庫や国立民族学博物館その他の博物館などに所蔵されている諸外国の先住民族文化財などを調べに来てもらうと良いかもしれない。


 いずれにしても、9月11日の会議は主催者と裏方の「周到な準備と円滑な会議運営」、「適切な調整作業」のおかげで成功裡に終わり、参加者たちは皆、この種の会議における「経験の蓄積と、意見調整における成熟ぶりを強く感じ、大いに感動」して帰路についたことであろう。(Aさん、無断引用をお許し下され。)

                                                       ~おわり~


P.S. #2 (2013.10.09):

☆前にこちら(http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2013/05/06/132748)で紹介した東村氏の論文末尾に非常に興味深いことが書いてあった。

児玉の業績を称えたある記事は,その後の動向をはからずも予言したものとなっており,不気味である.「同教授の教え子の中から,すでに百五十人の博士が生れ,これらの人々の協力で集まった多くの資料は,今後数十年間学者が研究を続けても骨や文献に困らないほどだという」(『朝日新聞』北海道版1959.3.20「アイヌの骨と三十年」,強調引用者).「今後数十年」はまたくりかえされるのであろうか.(p. 14)

 こうした日本の研究者間のつながりは、国際人権法という新しい分野でも生まれつつあるようで、そういう「教え子」たちの知識人エリートが現実政治の中でこれから果たしていく役割に注目するのも面白そうである。次世代の研究者の仕事でもあろう。
P.S #2-1:もっとも、「教え子」たちにもそれぞれ個の売り渡してはならない魂や良心というものがあろうから一概には言えないとも付け加えておく必要があろうが。Cf.「研究者の義理と関係のネットワーク」<http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20121110/1352556628>)

★古き懐かしき上の映像を見て思い出したことであるが、野村義一さんがニューヨークの国連本部で演説をしたのはよく知られているが、これは日本語によるもので、議場には国連の通訳を介して伝えられた。ジュネーヴ国連作業部会で、下手な代読者を介さずに自分で英語で声明を読み上げて、「英語でも発信」した最初のアイヌのことはあまり知られていないだろう。この歴史的事実について、本ブログの読者にだけこっそりとお教えしたいところなのだが・・・。(その後は、何人もアイヌが自分で「英語でも発信」している。)

☆「議事概要」中の「国連で・・・専門家として加わって」いたという御仁の発言に、ある方からコメントが届いた。直接コメント欄に投稿してもらえるとありがたいのだが。抜粋する。

それにしても、何をいまさらですが、「世界の先住民族はいろいろな問題を抱えていますが、その中で、日本はこういう取り組みをしているということを知ってもらうことが、実は、世界の先住民族にとって逆に励みになって、日本はそういうことをやっているのか、日本に行ってちょっと調べてみようということにもなって、アイヌ民族のところを訪ねてくる先住民族の代表もふえてくると思います」というのはなんなのか。これって、”日本は先住民族政策先進国だよ、学びに来てね”ってことですが、文字通りトチXXてるとしか。反面教師として見るべきところならたくさんあるでしょうから、そのためにも、[略=公開には不穏当かもしれないので]いかにひどい扱いをしてきたかという[略=上に同じ理由]にするのがよいのではないかと思えてきます。

 何となく北大の開示文書の黒塗りみたいで分かり難いかな。


P.S. #3 (2013.10.17, 22:03):
 とんだヘマをやらかしていた。本文とP.S.の文脈で分かるだろうとはいえ、上のP.S.の発言者順リストから肝心要の横田氏が落ちていた。入れたつもりではあったのだが。
 ついでながら、そのことを知らせてくれた方の推理も参考に、明確にしていなかったその後の2人の発言者も訂正した。

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