AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

「作業が困難だとして返還を早々に断念し、慰霊施設にまとめて納骨することは断じて許されない。」北海道新聞社説(10月20日)

 帰宅したら、ある方から道新の社説を知らせるメールが届いていた。先日の、5体の遺骨の返還ミスをフォローアップする社説のようである。

作業が困難だとして返還を早々に断念し、慰霊施設にまとめて納骨することは断じて許されない。

情報提供氏曰く、「ようやくこう書いたか。最初から集約施設など『断じて許されない』と書いておけばよかったものを。」

 今日も省エネである。後半部分を抜粋する。

 今回発覚したような取り違え疑惑が生じるようでは、返還手続き自体、信ぴょう性を失いかねない。

 保管する11大学には遺骨と収集記録の照合や埋葬地、個人の特定などに慎重を期して対応することを強く求めたい。

 作業が困難だとして返還を早々に断念し、慰霊施設にまとめて納骨することは断じて許されない。

 遺骨返還をめぐっては、高橋はるみ知事が今月、菅義偉官房長官に慰霊施設の設置を20年から18年に前倒しするよう要請した。

 官房長官から前向きな回答を得たとされるが、北大では今年3月にも、個別の箱に複数の頭骨を収めるなどのずさんな管理が発覚している。

 知事がこうした状況を知ったうえで前倒しを要請したのであれば、なし崩し的に決着を図ろうとしていると受け取られても仕方ない。

 遺骨が大学に保管されていることで祖先の供養が妨げられ、憲法が保障する信教の自由が侵害されているとして、北大は日高管内浦河町出身のアイヌ民族から返還訴訟も起こされている。

 政府は遺骨の問題を大学任せにせず、アイヌ民族有識者の委員会を設置して助言を得るなど、返還が適正に行われるか、外部の目でチェックする必要がある。

 先祖の遺骨を自分たちの元に返してほしいという当然の願いをこれ以上、踏みにじってはならない。先住民族の尊厳にかかわる問題だとの認識を持ち、返還作業を着実に進めてもらいたい。


「社説 アイヌ遺骨 返還の信頼性が揺らぐ」北海道新聞、10月20日
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/499046.html

 道新の風見鶏(風向計)が少し向きを変えたかな。
 
 私の最初の感想:北海道アイヌ協会の幹部は、この社説をどう読んだだろうか。
 そう思い込まされたかもしれないということはまったくないとは言えないとしても、「作業が困難だとして返還を早々に断念し、慰霊施設にまとめて納骨する」というのはアイヌ協会にも当てはまると、この社説は含意しているのだろうか。

 「政府は遺骨の問題を大学任せにせず」と言うけれど、北大や東大は政府任せにしているし、アイヌ政策推進会議のアイヌの委員たちも政府任せ。(先日亡くなった藤圭子さんが「あなた任せのブルース」というのを歌っていたが、今日は埋め込みはやめておく。)

 「有識者の委員会を」という意見も政策推進作業部会で出ていたな。政策推進委員会や作業部会自体が「有識者の委員会」ではなかったのか?(かつて「あれは無識者懇談会だ」と批判していた人も、「有識者」の椅子に次第に馴染んできているように見えなくもないが・・・。)「有識者の委員会」が手に負えなくなって、また別の「有識者の委員会」で、か。(当地でも今日、2つほど「有識者会議」の報告に関するニュースが流れていた。今この国に(自体体も含めて)一体いくつの「有識者会議」があるのか、誰か正確な数を把握しているのだろうか。)

 それにしても、このような状態で「集約施設」に移管しても、その中でどういう分類をするのだろうか。「○○大学保管分」、「××大学保管分」・・・という具合にしておくのだろうか。


■「ホット ポテト」

 アイヌ政策推進会議と作業部会のメンバーは既に見ているのではないかという話があるが、文部科学省の遺骨返還のガイドラインは、少なくとも草案くらいは既に出来上がっているのではないか。それを学会関係者や遺骨を保管している各大学に投げたら、手で受けた側は「アチチ、アチチ」と、アイヌ総合政策室に放り返した。政策室は政策推進作業部会に放り投げようとしたが、遺骨返還問題では既に機能不全に陥り、その正統性にも陰りが見え始めてきている作業部会では手に熱傷を負うのが関の山だろうし、それでは他の施策に悪影響を及ぼす。ここは文科省と協力して、また新たな有識者会議を設立し、同省が既に準備しているガイドラインを承認させる儀式を厳粛に、滞りなく進めなければならないと考えられているのかもしれない。

 P.S. (2013.10.24):
 もう一つは、文部科学省も政策推進会議・作業部会も、遺骨返還請求裁判の行方の様子見、あるいは判決待ちではないだろうか。


P.S. #2 (2013.10.23):
 アイヌ政策関係の「研究ノート」にリンクを貼っているブログの紹介を戴き、その「研究ノート」にざっと目を通してみた。最後まで行って、参考文献の欄で自分の数年前の解説記事が参照されていることを知った。本文の数段落で利用されていた。自分が知っている分野の内容だったから、そこは飛ばし読みしていた。
 お笑いは、その参考文献の表示である。姓と名の両方が誤表記されているのだ! 下の名が間違われることは人生を通じて経験してきたことであるが、上の名前がこのようなところでこういう形で間違われるというのは初の経験である。「人権」について書いている論文めいたものだけに、苦笑するしかない。

 P.S. #2-1 (2013.10.24):
 せっかく論稿の中で参照してくれているから公開先を特定してあげつらうのはやめておくが――それに、そうすれば私の本名もばれてしまうことにもなろう(既に多くの読者にはばれていようが)――、事は、「人権」について書いているからという以前の問題でもある。

 ずい分前のことになるが、アメリカで日本のことについて英語で論文を書いている際に、本文中に登場する歴史上の人物や参考文献リストに載せる著者の名前の読み方が分からずに大いに困ったことがあった。今のようにインターネットで簡単に――時にはそうでもない場合もあるが――調べられるという環境ではなかった。一応、日本関係の図書も多い図書館があったが、そこで人名録や事典で探し出しても、読み方まで載っていないこともあった。一つの名前を確認するまでにかなりの時間を費やしたこともある。
 また、これは日本語でも同じであるが、人物や著者の性別が分からないこともある。それで、"she"としてよいのか、"he"とするべきなのか迷うこともあった。(有識者懇談会でアイヌの「認定」の議題の下で報告を行った北大の研究センター研究員の性別を、つい最近まで私は、そのお名前から誤解してもいた。この報告に関することは、いつか取り上げたいと思っている。)
 しかし、上の「研究ノート」の注における記載は、日本語で記された名前をそのまま写すだけのことである。

 上述の通り、私の下の名前の漢字一字は、よく間違われてきた。難しい字というわけではない。確実に、よく見ていなくて思い込みによる間違いなのである。
 もう20年くらい前にあるシンポジウムでお会いした私より年輩で、かつ高名な法学者が、以来ずっと、年賀状やご著書などを送って下さっている。あからさまに指摘するのは先方の面子もあるだろうからと、返信する際に、自分の名前の間違われている字の傍らに赤色の点をそっと付してきた。しかし、毎年、毎回、住所ラベルに印字された誤字は訂正されていないままで、思えばもう20年にもなっていた。ついに今年、「私の名前は○○ですのでよろしく」みたいな一文を書き添えて送ったのだが、さて、次回はどんな形で来るやら。


P.S. #3 (2013.10.24):

 恐らく、この記事の中のアルジャジーラの映像のことだろうと思うが、「加藤理事長は何て言っているのですか」と質問がきた。でも申し訳ない。今回は「出血大サービス」はなしです。(そのうち、有料ブログでも作って翻訳を載せましょうかね。)アイヌ協会へお尋ね下さい。有識者懇談会の最初の会合の印象を尋ねられて「最高です」と答えている時の笑顔(15:37)、インタビューの最後の笑顔(16:40)は、本当に素敵で、「最高です」ね。

 それにしても、テレビを見ないから分からないけれど、でも情報も入って来ないから恐らくないのだろうと思うが、国内のメディアでこのくらいの内容のインタビューをやったところはあるのだろうか。この映像を観た直後に、アルジャジーラにトランスクリプトを送って欲しいと書いたのだが、返信は来なかった。(こうして映像が残っているから、今は必要なくなった。)北海道アイヌ協会には届いているのだろうと推測する。


P.S. #4 (2013.10.25):

 道新の主張をしばらくトップに置いておきたいから、P.S.を続けている。

 昨日(24日)、例の古本屋でワインに関するこの本を見た。下の写真は2000年版のようで、私が見たのは2007年版で表紙の色は黄色であった。

 私が知る札幌在住のあるお方は、ワインにとても造詣の深い方である。ワインでオモテナシを受けた時には、ワインについての言動にはよほど気をつけないと、ご機嫌を損ねることになるらしい。
 
 カリフォルニア産ワインを筆頭に、最近ではアメリカ産ワインもかなり人気が出てきているとのことで、この本のページをパラパラとめくり、アメリカのページを開いた。154ページにアメリカの主だったワイン産地州が表示されている地図が載っている。ところが、お笑いであった。太平洋に面したカリフォルニア州オレゴン州の表示はあるが、ワシントン州の表示はない。まだそれほどでもないのかと残念に思ったところ、大西洋岸のニューヨーク州の南に「ワシントン州」と書いてあるのだ! そこは、首都のワシントン特別区でしょ。

 いつの本なのかと奥付けを見ると、「2007年発行」と記してあるのに、すぐその右側に著者名の英語表記とともに、著作権マークの右には2006と書かれてあった!(これは、意外に正直な記載なのかもしれない。)メールアドレスの記載があれば知らせてあげようと思ったのだが、載ってなかった。

 これもずい分昔の話であるが、アメリカの州の数を51と教え続けていた高校の英語教師がいた。ワシントン特別区を算入してのことだと思う。ナヴァホ ネーションが51番目の州になるという話が相当長い間出ているが、もちろんそれを算入してのことではなかった。

 これはもっと最近の話であるが、日本の大学生にアメリカの州の数を尋ねると、知らない学生が大勢いた。そこそこのレベルの大学であってもである。従って、星条旗の星の数がいくつあるかと質問しても、答えは返ってこなかった。

 今でも大して変わらないのではないかと思うが、アメリカの大学に入ってきたばかりの学生にアジアの白地図を渡して日本の位置を記入させると、中国の北京辺りや朝鮮半島に印を付ける学生がかなりいる。それに比べると、上のニューヨーク州の南の「ワシントン州」の話は、まだ笑って済ませるレベルの間違いかな?

 こうやってブログでアマゾンの商品を紹介すると、面白いのは、しばらくして「○○様へおすすめ商品」としてメールが届く。先日挙げた『一九八九年』のおすすめメールが昨日届いていた。上のように、私は必ずしもおすすめしているわけではないのだが、それでも私が紹介している本を私におすすめして来なくてもよいだろうにと、電脳のなす業に毎回苦笑いである。(アフィリエイトについてのもっと切ない笑い話をいつか書くつもりである。)


P.S. #5 (2013.10.25, 23:58):

■また、あった!

 昨日の古本・CD店で、また、こういうのがあった。
f:id:Don_Xuixote:20131026003420j:plainf:id:Don_Xuixote:20131026000415j:plain
NOKKO, "Hallelujah(ハレルヤ)" (http://p.tl/KEbg)
上の写真は、こちらから:http://p.tl/pSVE

関連記事:http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/2013/09/16/000000
こちらも参照されたし:"The one stop for all your “Indian costumes are racist” needs!" (http://nativeappropriations.com/2013/10/the-one-stop-for-all-your-indian-costumes-are-racist-needs.html)

 日本人は、好きなんだね、ネイティヴ アメリカンが。そんなことを考えていたら、こういう文章に出合った。

 ネイティブ・アメリカンって

 ネイティブ・アメリカンもまた、人々から好かれてる。
 なぜか。
 自分が不自然な生き方をしている後ろめたさからか。
 だれもかれもが、ネイティブ・アメリカンの言葉に、生き方に、癒されると言う。
 ネイティブ・アメリカンと似てるのが近くにいるのに。
 そう、田舎のおばあさんたち。90歳ぐらいの。あの人たちは、似てると思う。あれじゃ、だめなのか。日本人の方が、考え方とか、なじみやすいと思うけど。ネイティブ・ジャパニーズ。


銀色夏生『銀色ナイフ』(角川書店、2008年=6版)、162ページ。

 この銀色さんという人、若き詩人なんだね。(http://ginironatsuo.com/profile/index.html)名前だけは、かなり前から知っていた。よく行く古本店では、書棚の1段を占めるくらいにズラッと著書が並んでいる。だけど、これまで1冊も手にとって読んだことはなかった。だからまだ、どういう詩人なのかも分からない。でも凄いな、この若さであれだけの本を出しているとは。

 昨日、約1年ぶりに、ここのところ行かない方向に行かざるを得ない用ができて行った帰りに公立図書館の分館みたいな所に寄った。図書館の廃棄処分図書といっしょに、市民が不要になった本を提供しているコーナーがあるのだが、そこで数冊もらって帰った。名前が気になっていたから読んでみようかと。夜パラパラとページをめくっていて目に付いたのが、上の引用部分というわけだ。
 先日の「入れ墨事件」のこともあって、『タトゥーへの旅』というのももらって帰ったけれど・・・。

転載元記事