AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

アイヌ民族衣装(?)のファッションショー

 昨日、このブログへのアクセス元の検索リストに「近年のアイヌ政策の展開」という国土交通省の政策広報文書がありました。特定秘密文書ではないと思いますが、そこに福岡市の短大での取り組みが紹介されています。一私立短期大学の催しですが、国土交通省の後押しもあるようなので紹介しておこうと思います。ひとまず、論評抜きとしておきます。 http://www.mlit.go.jp/common/000999672.pdf(12-13ページ)
http://www.irankarapte.com/supporter/pdf/002koran.pdf

 今年も、アメリカではハロウィーンのパーティーなどに先住アメリカ人の衣装を纏うことの差別性が議論されていましたが、本ブログではもう敢えて取り上げませんでした。

 こちらの写真を見て、日本人の読者はどう感じるでしょう。
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これは、差別的なハロウィーンの衣装を批判するためにオハイオ大学の学生たちが行ったポスター キャンペーンのポスターの一部です。ABCニュースが取り上げたことで、全米の注目を集めたそうです。http://abcnews.go.com/blogs/headlines/2011/10/ohio-university-students-hit-racist-halloween-costumes/
 カナダのThe Globe and Mail紙にも取り上げられました。 http://www.theglobeandmail.com/life/the-hot-button/the-blackface-or-the-geisha-campaign-vetoes-racist-halloween-costumes/article2212978/
 他のポスターは、こちらのブログ記事で紹介されています。 http://bitchmagazine.org/post/costume-cultural-appropriation

 こちらには、ペットに「芸者(geisha)」の衣装を着せることの是非が論じられています。http://thesocietypages.org/socimages/2013/10/24/can-we-at-least-agree-that-its-racist-to-dress-your-dog-up-like-a-racial-caricature/#comments

 ファッションショーの衣装は、ハロウィーンの衣装とは違うと言われそうですね。では、前にも紹介したことのある"Native Appropriations"ブログで論じられているこちらのファッションショーの衣装はどうでしょう。同ブログから3つだけ紹介しておきます。
http://nativeappropriations.com/2013/09/a-shamanistic-journey-through-nicholas-ks-spring-2014-collection.html
http://nativeappropriations.com/category/hipster-headdress
http://nativeappropriations.com/category/tribal-fashion

 何の「突破口」になるのか不明瞭ですが、香蘭女子短大の先生たちも学生さんたちも、善意の「サポーター」として「アイヌ文化」の普及啓発に一役買おうと一所懸命なのでしょう。それでも一昔前なら、北海道ウタリ協会は、何か声明を出すくらいしたかもしれません。でも今は、アイヌ文化振興(信仰)体制の下で、テディー ベアに民族衣装を着せたりすることも流行っているみたいですから、こういう形で「国民の理解」を得ようという運動がどんどんと広がって行くのでしょう。アイヌの人々が何の違和感も感じないのであれば、私がとやかく言う筋合いもありません。だから、「論評抜き」と冒頭に書きました。(「アイヌ文化搾取・濫用監視協議会」くらいは作られても良いだろうにとは思いますけど。)

 上に紹介したBitch誌の編集長、Kjerstin Johnsonさんが、次のように言っています。何となくこの国でも当てはまるような気がするのですが、どうでしょう。「他文化を着る」ことがすべてレイシストというのは極論だろうとは思いますが、少なくとも、こういうことが何も議論されずに進んでいるということは、とても気になります。(太字の強調は、私が付しました。)

Dressing up as "another culture," is racist, and an act of privilege. Not only does it lead to offensive, inaccurate, and stereotypical portrayals of other people's culture (Do you think Día de los Muertos is just "Mexican Halloween"? Well it's not, so put away your facepaint), but is also an act of appropriation in which someone who does not experience that oppression is able to "play," temporarily, an "exotic" other, without experience[sic] any of the daily discriminations faced by other cultures. Like dressing up as a "sexy squaw" while being completely unaware of the horrific rates of sexual violence Native women face.


P.S. (2013.11.22, 0:20):
<Revised: 2013.11.22, 14:20>

 昨晩は記事を書き始めたのが遅く、一通り終わらせるために要点だけ記しておいたので、もう少しだけ補足しておきます。

☆まず、ハロウィーンについては、アメリカのコロラド大学やイギリスのバーミンガム大学の学生会などが、先住アメリカ人に対して侮蔑的な衣装を着用することを禁止する措置を取っていました。
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/northamerica/usa/10401584/Offensive-Halloween-costumes-banned-by-US-university.html
http://www.dailycamera.com/top-stories/ci_24378689/cu-boulder-rolls-out-were-culture-not-costume
http://www.independent.co.uk/student/news/birmingham-universitys-guild-of-students-bans-racist-halloween-outfits-8922518.html

☆香蘭女子短大のファッションショーは、実は主催者も「違和感」の認識があるようです。

アイヌ文化を取り入れたファッションを見たアイヌの方々は、最初のうちは違和感があるかもしれません。ですが、これが新しい刺激になり、1 つの突破口にはなるのではないかと思います。

 どのような「違和感」なのかをきちんと説明するべきではないでしょうか。その「違和感」が「刺激」になって(!?)、どのようにして何の「突破口」になるのかも明確にして欲しいものです。誰に「新たな価値観の発見」が求められているのでしょう。

 アイヌの民族衣装は地域によって画一的ではなく、文様にも多様性があると教わったことがあります。その中には普段着から「神聖」な意味や価値をもったものまであったのではないでしょうか。それが、同化政策の中で「神聖」な部分が「脱色」されるかのように、世俗的な「ファッション」にされてきたものもあるのではないでしょうか。何となく、遺骨の「モノ化」と重なって見えてしまいます。

☆時間がなくて翻訳しませんでしたが、本文の最後の引用英文にあるように、「力関係」の非対称性ということもあります。
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http://www.asahi.com/shimen/articles/NGY201310020061.html
 これは、先月の伊勢神宮式年遷宮の臨時祭主を務めた黒田清子さんを中心とする写真です。今日、皇室の方々とて、こういう衣装を日常的に着用しているわけではないでしょうが、これを「一時的に『エキゾチックな』他者を『演じる』」ためにデフォルメしてファッション化し、ここがポイントなのですが、アイヌ民族の若者や、あるいは他の異文化の学生が、大学祭などでファッションとして作品展示したならば――それはそれで面白いかもしれませんが――この社会からどういう反感を受けるでしょうか。(私にデザインの才と画像処理技術があれば、どんな風に改変するかという例を出してみたいのですが、残念ながらできません。)

☆しかし、こうしたことも、恐らく、北海道アイヌ協会がお墨付きを与えているだろうことは、国交省文書の末尾にある「アイヌ文化等に関する相談窓口」に財団とともに北海道アイヌ協会が名を連ねていることからも想像に難くありません。
 1987年夏、私は某所で北海道ウタリ協会の代表たちの記者会見の場に居合わせたことがあります。今日、遺骨返還請求訴訟を闘っている小川隆吉さんも、その席にいました。朝日、毎日、読売の三大紙をはじめ、共同通信社などの支局長や記者たちが集まっていました。どこの記者だったか明瞭に記憶していませんが、「ここに駆け込み寺のようにして来てもだめですよ」というような質問とも意見ともつかないような発言がありました。すると、そこにいた若い男性がやや声を震わせながら、「そうしなければならない状況になるまで、あなた方マスコミは何をしていたのですか」という主旨の反論をしました。
 四半世紀を経た今、遺骨問題から、その研究対象化を図る学術団体も、メディアも、そして「アイヌ文化」の民間サポーターたちも、北海道アイヌ協会が「窓口」であるという名の下に、同協会を「駆け込み寺」にすることに成功してしまったようです。

☆「アルタ成果文書」を承認してきた北海道アイヌ協会アイヌ民族評議会の双方の代表は、この件にどういう立場をとっているのでしょう。心引き裂かれる思いでしょうか。

Recommend States ensure meaningful and effective participation and the free, prior and informed consent of Indigenous Peoples in accordance with their protocols in order to reform the dominant education system to reflect the histories, identities, values, beliefs, cultures, languages and knowledge of the Indigenous Peoples to whom it is being delivered;

"Alta Outcome Document," pp. 7-8.


"Torn Between Two Lovers by Mary Macgregor with lyrics (HD)" posted by 316dtbt at http://youtu.be/sb3TTkQ1im4


P.S. #2 (2013.11.23):
 北海道各地にあるみたいなアイヌ文化伝承保存会のようなところは、こういう件に関してどのように考えているのでしょう。


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