AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

社有林 vs. 「コミュニティ フォーレスト」

 ずい分と回り道をして――多分何の役にも立たないだろうけれど、個人的には良い勉強になった――やっと書こうとしていたことに辿り着いた。ここからは独立した内容としても読めるので新規投稿とするが、「『イランカラプテ』キャンペーン」の続きとして読んで戴きたい。
 (今日は夕方、カーラジオで「遠い夜明け」という曲が流れていた。昨晩、そのタイトルを書いたばかりだったから驚いた――もちろん、楽曲のことではなかったが。)


 先に紹介した"The SFI Program"の文書の中の表によれば、米国ワシントン州に位置するヤカマ ネーションは、624,000エーカー(252,524ヘクタール)の森林に対してSFI認証を取得している。(三井物産の山林は「約44,000ha」とのこと。)そのヤカマ ネーションがプロジェクトの最初から参画していたというワシントン州による森林購入について少し書き留めておきたい。

 11月下旬、ワシントン州史上最大の土地購入が、3年の年月と9,700万ドル(1ドル=100円換算で、97億円)をかけて成立した。州知事、複数の州政府機関、環境団体などの他、ヤカマ ネーションが協働して、この購入地を同州初のコミュニティ フォーレストへと転換した。土地を売却したのは、アメリカン フォーレスト ホールディングズ(American Forest Holdings=AFH)という林業会社である。コミュニティ フォーレストというのは、土地の管理方法に関して地元の諸団体により強い発言権を与えながら森林を保護することを意図する概念である。今回の取り決めでは、土地の管理において、特に水質から魚類・野生動物の管理、木材伐採に至るまで、ヤカマ ネーションだけでなく地元のコミュニティにも発言権を与えている。ここでの試みが成功すれば、同州の他地域での複数の同様の計画の先例となり得る。
 
 ワシントン州東部では、1980年から2002年の間に約12%の森林が何らかの開発を経験し、その傾向は、人口増加と森林地価格の下落によって続いている。この度の土地購入計画は、このように同州の民間所有林がますます開発に侵食されていることに憂慮した州議会の議員たちによって2011年に考案された。

 土地を所有していたAFHも、森林を分割して売却しようとしていた。近隣の居住者や環境保護団体は、開発による交通量の増加、水資源の減少、生態系の悪化などを懸念していた。

 この51,000エーカーの土地取得で、重要な河川と森林のエコシステムが将来の開発から保護されることになる。ヤカマ ネーションとしては、地域に過去に生息していたが、過去の管理方法によって減少したチヌーク、コーホー、スティールヘッド、その他の魚の回復の試みにとって莫大な可能性をもっていると考えている。購入地を流れるティーナウェイ川はヤキマ川に流れ込み、ヤキマ川はコロンビア河に流れ込む。ヤカマ ネーションには、サケ溯上の回復計画があり、今回の購入は、その計画にとって大変有意義である。

 ヤキマ盆地にはかつて80万から100万尾のサケが溯上していたが、それが1990年代初期には2,000以下に減少した。ヤカマ ネーションは、積極的に生態系の回復とサケの通り道の確保に取り組んできた。その結果、現在では、同盆地には15,000~20,000尾のサケが戻ってきている。

 新たなコミュニティ フォーレストは、ティーナウェイ川流域の大部分を含んでいる。ティーナウェイ川は、ヤキマ盆地の上流にあるダムのない最大の川という点で魚の回復に好条件を持っている。サケの溯上を増やすための魚の通路確保、魚の保護と生態系の保護は、同トライブにとって重要優先事項である。

 統合的盆地計画(Integrated Basin Plan=IBP)は、漁業と農業の双方にとっての長期的水需要への取組みが内容でもある。ヤキマ川流域とヤカマ保留地では果物と野菜も豊富に生産している。IBPは、旱魃の時などに備えた農業用水利権を支えるのにも有益である。

 漁業資源の恩恵の他、今回の土地取得は、土地を民間所有から公有にしてヤカマの人々が狩猟、食料採集やヤカマのコミュニティにとって今日重要である事柄など、条約の他の諸権利を実践することができる領域を開放することにもなる。今回の51,000エーカーの取得は、コロンビア河流域全体の計画の一部にすぎないが、ヤカマ ネーションにとっては不可欠な部分である。

 ティーナウェイ川流域は、2025年まで「移行期管理」下におかれ、同盆地の水資源計画の目標が達成されなければ、州が同地域を売却するか、商業的木材生産用に転換することができる。もし目標が達成されれば、同地域はコミュニティ フォーレストとして残ることになる。 

Jack McNeel, "Yakama Win in $97 Million Historic Land Mega-Deal," ICTMN, Nov. 22, 2013.(ティーナウェイ川流域の一部の写真も冒頭に載っている。)http://p.tl/I_YM

"Teanaway purchase creates state’s first community forest," Yakima Hearld-Republic, October 8, 2013. http://p.tl/iFMu

"Yakima Klickitat Fisheries Project (YKFP)" http://p.tl/2gwv

http://yakamafish-nsn.gov/

 三井物産の「森を通じてアイヌ文化を守る」のが「一つのモデル」と謳われているが、ここには先住民族が主体的に参加して森を守り、かつ水資源の確保、生態系の保全に取り組みながら、経済的自立を維持し、民族としての生存を構想するというもう一つのモデルがある。


転載元=http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2013/12/12/231901

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