AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

空港と「おもてなし」

 2013年1月26日付の北海道新聞(夕刊)に、黒川伸一「アイヌ文化 企業注目」という「編集委員報告」が載っていた。1月13日の記事冒頭で紹介した北海道開発協会の座談会で語られている企業・官庁・大学がタイアップした産官学協同事業を広く一般道民に知らせる広報記事である。批判的分析は欠片もない。だが、いくつかのキーワードを埋め込んでくれている。

 冒頭から企業の本音が描かれている(強調は追加)。「アイヌ文化に関心を寄せ、積極的に取り込もうという企業の動きが昨年来、にわかに目立ってきた。・・・・新年度には国主導で、おもてなしの言葉として、アイヌ語の「イランカラプテ」を使ったキャンペーンが予定され」、「国は新年度・・・概算要求段階で1600万円の予算を盛り込んだ。」そして「これを先取りする形で、19日から国際線連絡通路に『イランカラプテ』と書かれたフラッグが掲げられた」そうである。

 (「おもてなし」には、「モノをもって成し遂げる」という意味と「表裏なし、つまり表裏のない心でお客さまをお迎えする」という意味があるとのこと。http://projectishizue.blog60.fc2.com/blog-entry-154.html

=============================================================================

◎追記1:

Cultural appropriation is the adoption of some specific elements of one culture by a different cultural group. It describes acculturation or assimilation, but can imply a negative view towards acculturation from a minority culture by a dominant culture.[1][2] It can include the introduction of forms of dress or personal adornment, music and art, religion, language, or social behavior. These elements, once removed from their indigenous cultural contexts, can take on meanings that are significantly divergent from, or merely less nuanced than, those they originally held.

http://en.wikipedia.org/wiki/Cultural_appropriation

◎追記2(2013/02/06, 0:09):

 ★去年か一昨年から、ブックオフで売れずに残っている本がある。書誌情報をきちんとメモして帰らなかったのだが、Amazonでは見当たらない。表紙はご覧の通り。『北海道(トラベルガイド1)』である。中には、旭川や阿寒のアイヌの人々の写真や「純粋なアイヌは少なくなった」という主旨の文章などもあった。何をもって「純粋」と称しているのか。この書を編集・出版した人たちは、自らを「純粋な日本人」くらいに思っていたのだろう。

◎追記3(2013/02/07, 23:42):
 なんだかまた厭な予感がしてきた。上の古本にまた腕を掴まれてしまったのであろうか。売れ残っていると書いたが、最近は目にしてなかったので、一度売れて、また戻ってきたのかもしれない。同じ値段の値札が重ねて貼られてあることからも、そうだろうと思う。

 出版企画や協力機関からみて、北海道の公立図書館や関係新聞社、観光業者の元には各1冊くらいはあるのではないかと思う。
 木原康夫 他5名(編集)、旅行出版協会(監修)、教育図書出版 山田書院(発行)で、『color travel guide <日本の旅>1、第1回配本=北海道』となっていて、1,200円。全18巻のシリーズだが、この巻には出版年の記載はない。1960-70年代頃のものだろうか。「資料提供」として、北海道庁、北海道観光連盟、北海道新聞社、北海タイムズなどが明記されている。登場しているアイヌの人物や団体への謝辞のようなものは見当たらない。アイヌは「被写体」としてだけ存在している感じで、一方的な非アイヌの企画・出版のように見受けられる。

 明らかにこの本か他の機会用に撮られたと思われる不自然な、アイヌの人物、儀式、「伝統的」生活のようすなどの写真が大きく掲載されている。そのうちの1枚は、民族衣装に身を纏い、読者(カメラ)の方に向いて弓を引くアイヌ男性の写真が「旭川」のページに掲載されている。本のページの写真ではあるが、肖像権や著作権の問題も気にかかるので、ここに貼り込むのは控えておく。どこかでお見かけしたことがあるような人である。ご本人承諾のもとでの掲載かもしれないが、その写真の右下の説明文には、上で紹介したようなことが書かれている。正確には、次の通りである。「現在では純粋のアイヌ人は少なくなったが・・・・」(p. 69)。

 阿寒のマリモ祭りの紹介もある。そして、その中ほどには、「湖畔の夜がふけるまでつづけられる荘厳な祈りと、夜を徹してのアイヌの踊りは、無気味なばかりである」(p. 122、強調は追加)。

 本の前の方へページを繰ると、p. 34には「白老アイヌ部落」の欄があり、これもどこかで見たことがあるような、「アイヌの酋長」の写真が載っている。60-70年代の出版かと思うのは、「酋長」という言葉が何度も出ているということもある。

 そして、pp. 37-44には、あの「アイヌ肖像権裁判」で被告となっていた更科源蔵氏が「史実と伝説を求めて」という文章を寄稿している。ということは、裁判より前の出版か? 「和人のだまし討ち」の節には、「精(ショウ)こりもなくだましうちになるのを、愚直と笑うべきであろうか」(p. 40)と評している。
 最後(p. 44)は、このような解説で締め括られている。「道南に限らず、もしも北海道を歩いていてアイヌ恋物語の伝説を聞かされたら、それは近年の観光会社の創作伝説と判定してまちがいない。アイヌ伝説に恋愛などは決して出てこない。」
 本当だろうか。わが輩は、この辺のことは不勉強にてわからないが、最近どこかで、アイヌの恋愛に関する昔話について読んだ気がするのだが・・・・。

 こういう「観光ガイド」が出版されていた時代があったことも、「前向きに」、「明るく」、忘れ去られようとしているのだろう。

 ついでに、アイヌについてではないが、pp. 162-165に梶山季之「札幌の女」という読み物が掲載されている。p. 165には、「札幌の女」が読めば、絶対に怒るに違いないと思われる叙述があった。敢えて、引用はしない。
 次回は「博多の女」という予告が載っているが、第2回配本のことか。どんな偏見が披露されているのやら。

◎追記4(2013/02/09, 1:40):
 実は、もう1冊、昨年の3月頃に偶然に見つけた本がある。こちらは新しく、2011年刊である。一般の人が自費出版を扱っている出版社から刊行したような薄い本で、今も棚に残っている。大して売れてもなさそうだから、敢えてここで宣伝する必要もないので具体的な書誌情報は記さない。だが、そうすると、内容(詩の全文)もそのまま載せることはできないので残念である。
 昭和11年に「神国日本に生まれ」たとプロフィールに書いてあるから、発刊時には70代半ばの人である。苫小牧〜白老、そして登別へと辿った旅の途中、「白老のアイヌ部落」で「滅びゆくものゝ哀感を/犇々[ヒシヒシ]とあとう」と詠って、独り悦に入っている。
 この世代には、こうして今も「滅びゆく」民族の神話を「哀感」をもって信じ続けている人が多いようである。その根底にあるものは何なのか。当然、そこに人類学が果たしてきた役割も大きい。遺骨返還訴訟では、きっとその辺も明らかにされていくことであろう。

◎追記5(2013/02/09, 22:43):
 またしても「追記」が増えているが、本意ではない。後で言及する場合に不便であるから。だが、上の『北海道』というトラベルガイド誌に関してなので、ここに追記しておく。
 ある方に参考資料として送ってあげようと思って、今日また、帰り道に古本屋(←これからは、単にこう記す)に寄った。夕べまであったのが、今日はなくなっていた。偶然に誰かが買ったのかもしれない。貼られた値札は赤色だったので、少なくとも12月以前から配架されていたものが、ここで書いた途端に売れた(?)という偶然。あるいは、近くにこのブログを読んでいる人がいて、興味を持ったのかもしれない。あるいはまた、あるエージェントが「回収」したのかもしれない――図書館などにあるだろうから、それはないだろうとは思うが。五木寛之の『深夜美術館』に関するエピソードを思い出してしまった。短編小説の題材にでもなりそうである。http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20110221/1298271616


◎追記6(2013/02/09, 23:40):

 1月24日の北海道新聞に「2013 開発予算」の記事が載っていた。鳩山元首相の引退と政権交代で「象徴空間の行方に気をもむ」北海道アイヌ協会の理事長が登場している。

 一方、上の26日の「編集委員報告」では、北大大学院教授が「新年度は『アイヌルネサンス』になるかもしれない」と予測している。「今後、民間でアイヌ文化が大きなビジネスチャンスを生み出す可能性がある」とのこと。「アイヌ民族、文化を日本の誇り――いつの間にか、「アイヌ民族の誇り」から「日本の誇り」になったようだ[追加]――として情報発信する環境が整ってきた」そうである。

 知的財産法や文化財関係を専門とする法律実務家たちにも、「大きなビジネスチャンス」かもしれない。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20130206/1360083376

広告を非表示にする