AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

「議事概要」雑感+追記

 目の前の新たな展開の中で、昨晩「議事概要」を読んだ。そこに1ヶ月の時間の開きがあるのだが、それをふと忘れ、錯覚に陥りそうになった。と言うのは、アイヌの「代表」のものではないかと思われる発言の中に、事態に対応する準備と心構えがまったく出来ていないのではないかと思われるものがあったからである。まるで、本多氏がテキストに書いていたように、「政府にお任せ」的な感覚で、ただ「象徴空間」を早く造って欲しい、それ以上のややこしいことは考えてなかったといった感じの発言が。
 政府や有識者は、国連の「権利宣言」を尊重すると言いながら、提示した原則の中にそれを侵害しているものがある。だが、会議の中でそれに反論した出席者は、一人もいなかったようでもある。
 とにかく、ここまで時間をかけて、やっと議論が始まったという感じである。焦らずにじっくりと詰めるべきだろう。


 去年、文科省の調査がまだ行われている頃、先住民族の権利に詳しいある方が、自分が講演に行った先のT大学で、1体の遺骨が見つかったという話を聞いたと教えてくれた。しかし、文科省が調査をしているからということで、遺骨問題には関与しないという話だったので、少なからず落胆した。

 どうもこの問題には、尻に火がついた文科省や関係大学、面子のかかった人類学者の方が「熱心」に取り組んでいるところがあると言えなくもないのかもしれない。

 日本政府が「日本型先住民族政策」を国連などで世界に向けてアピールする中で、北海道アイヌ協会をはじめ、他のアイヌや市民の関係団体も、この問題にどう対応するのか、自ずと国際的に注目されることになるだろう。

 ところで、日本学術会議の『報告』には国立民族学博物館の関係者も何人か入っていたが、この博物館や東京国立博物館などには「アイヌ人骨」はないのだろうか。今回、調査対象とはなっていない。

 今年度、放送大学では、こういう講座も開講されていたようである。http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H24/kyouyou/B/ningen/s_1554590.html
http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H24/kyouyou/B/ningen/s_1554603.html

佐々木利和さんの発言から


東京国立博物館アイヌ民族資料の展示について


 1894年に開かれるウィーン万博への出品のためにアイヌ民族の資料を大量に集めた。なぜ、アイヌ民族の資料を出品しようとしたのか。この年にできた『ほたるの光』の歌詞の第4番にもあるように、北は千島から沖縄までを旧大日本帝国の支配の地域として二つの異文化と一つの異民族を支配していることを誇ることであった。それはその後、台湾そして朝鮮の植民地として広がっていった。東京博物館は天皇に献上されたそうした原住民・民族の資料を預かっておく所となった。東京博物館には今も台湾の高砂族オセアニアの貴重な資料が大量に所蔵されている。
 85年の国連先住民族年の一年前の1984年になってようやく、恒久的な陳列として初めてアイヌ民族の民族的展示が可能になった。文部省はアイヌ民族の資料の陳列に積極的ではなかったし「アイヌの民族としての存在を認めていない。陳列を撤去しろ」とまで言っていた。文部省の所管でアイヌ文化振興法が出来たので、いまはそんなことはなくなった。国立として常設しているのは東京の他は大阪博物館と佐倉の民俗博物館だけである。日本国家がアイヌ民族文化を絶滅させた責任をとり、アイヌ民族文化を残し、伝えてゆくために国立アイヌ博物館を作るべきだ。
http://www.jrcl.net/pk281.html

注:「国際先住民(族)年」は、1993年である。なんだか、こっちまで記憶が混乱してきそうだ。

◎追記:
 「『報告』を読む(5)」でも類似の間違いを指摘したが、これはあながち編集者の間違いではないのかな? 80年代半ばから「国際年」や「国際10年」を祝っていた人たちばかりが、アイヌ政策を「推進」しているみたいだ。
 会の主催者の言葉ではなく、佐々木氏が実際に[アイヌ民族文化[が]絶滅」したと考えているのなら、これは大変なことだな。今つくろうとしている「象徴空間」とは何なのだということになろう。
 「大量に集めた」という「資料」は、どのように集めたのだろうか。正当に集められたものでなければ、それを「国立アイヌ博物館」に移したところで問題解決にはならないであろう。
 念のため記しておくが、「佐々木利和さん」とは、有識者懇談会と政策推進会議で活躍されている方である。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20130329/1364566442