AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

北大の駆け込み発表 / 室井佑月さん、何とか言ってくんないかな

 読者から戴いた各紙の記事のURLである。朝日の全文も入手しているが、著作権を考慮して貼り込みは避ける。
http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW1303290100001.html
http://mainichi.jp/area/hokkaido/news/20130329ddlk01040303000c.html
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/news/20130329-OYT8T00029.htm
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/453213.html

北大がこの時期になぜ「駆け込み」で発表したのか。単に年度末だからでもない。政策推進作業部会の議事概要が出たからだけでもない。

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◎追記1(2013.03.30, 23:40):

■「養殖」メディアと「役者」たち

北大の言い分(1):

北海道大は28日、戦前から戦後にかけてアイヌ民族の遺骨1014体を研究目的で墓から持ち出していたとする学内調査報告書を公表し、「管理の仕方に問題があった」と遺憾の意を示した。(毎日)

三上隆副学長は「学術資料の収集、保存、管理に問題があり、遺憾に思う」と述べた。「無断発掘」などの問題はなかったとの認識を示した。(朝日)

 管理が杜撰だったということで押し切りたいようであるが、「『無断盗掘』などの問題はなかったとの認識」の根拠は何か。すべてに対して、「承諾」の証拠は残っているということか。

北大の言い分(2):

アイヌの一部遺族が「承諾もなく、遺骨が盗掘された」と指摘しているが、北大の三上隆副学長は「盗掘を裏付ける資料は見つからなかった」と全面否定。(毎日)

当時の発掘台帳がないうえ、頭骨と四肢骨が別々に管理されていたなど、保管方法もずさんだった。中には、頭骨以外は未整理のまま骨箱に放置するケースもあった。(毎日)

解剖学講座によるアイヌ墓地の発掘は1931年から1972年まで行われ、収集した遺骨による研究は80年前後まで続いた。
研究後、全身の骨をそろえる管理が行われていなかったためで、多くの遺骨については発掘当時の状況などを記録した原本も見つからなかった。(朝日)

 北大は自ら、解剖学や人類学の学問レベルの貧困の度合いを証明しているようなものだが、それによって得られた成果については、今後どのように扱うのか。

北大の言い分(3):

遺骨の返還についても「個人が特定できた遺骨は祭祀(さいし)継承者に返すが、他大学と足並みをそろえたい」とした。(毎日)

 常套句。文部科学省の顔色を伺いながら、どうしても足並みを揃えないと動けないらしい。

北大の三上隆副学長は「時間をかけて調査した結果。この調査報告書を出発点に、関係者の理解を求めていきたい」と話している。(毎日)

 「出発点」に、返還を実施する体制を整える動きは開始しているのか。(この問題は、1ヶ月遅れの政策推進作業部会「議事概要」でも話題に上っているではないか。)

三上副学長は「遺骨の個人名と祭祀(さいし)継承者が特定できれば、(文部科学省など)国が作成するガイドラインに従って返還する」とした。(朝日)

 これは何度も指摘してきたが、なぜ「国」だけでガイドラインを作成するのか。本当に返還を求めているアイヌの代表が含まれるべきである。

養殖メディア:

アイヌ民族の遺骨は北大をはじめ東大、東北大など11大学に約1500体が保管されているとされ、北大はその3分の2を保管。(朝日)

 こんなことは、ずっと前から分かっている。それにもかかわらず、その11大学を具体的に知りたいと思って食い付く報道機関はないのか。ただばら撒かれる餌を食べるだけの「養殖メディア」。

北海道アイヌ協会理事長の言:

アイヌ協会の加藤忠理事長は「遺骨の収集状況を検討すると、非常に重大なアイヌ民族への人権問題をはらんでいる。研究のために集められた遺骨がいまだ一致しない保管状況は無念きわまる思い」とコメントし、遺骨の早期返還を求めた。(毎日)

北海道アイヌ協会の加藤忠理事長は北大の発表を受けて「遺骨全てについての返還を検討するように取り組んでほしい」とのコメントを発表した。(読売)

 態度変更かと期待したが・・・。

北海道アイヌ協会の加藤忠理事長は、遺骨が1体ずつまとまっていないものが多数あることなどに「誠に無念きわまる思い」とコメント。遺骨の速やかな返還を要請するとともに、返還できない遺骨については「一日も早く一括した先祖供養ができるよう、国が取り組んでいる慰霊施設に集約されるよう取り組まれることを求める」とした。(朝日)

 「本当に返還を求めているアイヌの代表」と書いた所以である。

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◎追記2(2013.03.31, 1:00):

■「無主物」と「無主地」

 あたしゃ室井さんの作品は読んだことないけれど、それに『週刊朝日』も買ってないけれど、オンラインで読める室井佑月さんの最近の発言には溜飲が下がる思いがする。

 みなさんは覚えているだろうか。以前、福島第一原発から45キロほど離れた二本松市のゴルフ場が、東京電力に汚染の除去を求め、東京地裁に仮処分を申し立てた。その時の東電側の主張は、「原発から飛び散った放射性物質は、東電の所有物ではない」というものだった。

 たしか「無主物」という言葉を使ったんだ。無主物とは、ただよう霧や、海で泳ぐ魚のように、だれのものでもない、という意味だ。そして、東京地裁ではそのとんでもない東電の言い分が認められた。

 米連邦地裁にも、その言い分が通じるかしらね。「被曝したっていわれてもさ、事故で飛び散った放射性物質は無主物で、東電のものではないんだもん」って。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130326-00000002-sasahi-soci

 もうお亡くなりになったけれど、国連の人権小委員会の正委員に外務省の推薦で選出されていた某大学の教授が、明治時代に北海道は「無主地」だったからアイヌ民族の権利はないと言ったことがあったよね。

 北大は、遺骨をどうやって入手して「所有物」としたかの証拠を提出せずに、正当な所有権者には返すなんて言っている。室井さん、何とか言ってくんないかな。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/20130330/1364620735

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