AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

甘く小さな嘘

 これまでにも嘘について言及したことが何度かある。♪折れたタバコの吸殻で あなたの嘘がわかるのよ♪(http://youtu.be/5UkcKKFXUhM)という歌も2回ほど登場している。

 明らかに分かる嘘は「真っ赤」なようであるが、英語で「白い嘘(white lies)」といえば、罪や悪気のない嘘、方便の嘘、軽い嘘などを意味する。「第14回・・・議事概要」の記事の最後に貼り込んでいるデロリアの本のタイトルに"White Lies"という言葉が入っている。本のタイトルは『赤い大地、白人の嘘:ネイティヴ アメリカンと科学的事実の神話』というものである。ここでの"White Lies"は、「白人の嘘」という意味であるが、これは「罪のない軽い嘘」ではないだろう。

 政府の会議に出ている人たちの「甘く小さな嘘」(http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20110319/1300543484――もう3年も前か!)は何色だろう。タバコの煙のように白い? 政策推進会議や作業部会では禁煙だろうし、煙草を吸わない人も多いだろうから、「折れたタバコ」で嘘かどうか判断できないだろう。

 私は嘘発見器にかけられたことがないから実感としては分からないが、会議の委員たちに嘘発見器をつけて別室で会議の様子を観察できるとしたら、面白いだろうなと思う。但し、今日でも、嘘発見器の精度は「科学的に見て嘘の検知は、現時点で最高のテクノロジーを使っても、暗闇で銃を撃つよりは少しましという程度にすぎない」ということである。(「開発が進む新しい『嘘発見器』――その精度は?」 http://p.tl/IiN4 http://p.tl/_4ZZ

 「あなたのためだから」という甘い嘘に、人は弱い。特に、孤立していたり、拠って立つべき価値観を見失ったりして、自分に自信がなくなっている時には、詐欺にかかりやすい。そっと優しく囁かれると、コロッと騙される――自己反省も含めて。

 ついでだから、この本(富田たかし『詐欺の心理学』、ベスト新書、2004年、142-143ページ)から少し引用しておこう。

 科学というものは、科学そのものの進歩によって常に書きかえられていくべきものであり、ある時代の科学の常識とは、必ずしも絶対のものではありません。
 けれども近頃は、「科学的」という装いがつくと、皆簡単に騙されてしまいます。心理学を含む人文科学系のものに関しては、まだ皆が、どこか半信半疑で聞いていたりするのですが、自然科学系のものに関しては、呆れるくらいにその権威を信じて疑わないという傾向があります。これは、むしろ非科学的な態度であると言えるでしょう。
 だからこそ、詐欺の多くは科学を語るのです。つまり、今は自然科学というものが時代の権威となっているのです。
 騙されたくない人は、科学的という説明をされても、「科学とはいえ絶対のものなどない」と跳ね返す知識と姿勢を持つことも大切です。

 実は、この本も100円で買ったものだが、著者はテレビ等によく出ていた――今も出ている?――心理学者である。普段はその手の著者の本は買わないのであるが、上の引用箇所を含め、国家による「詐欺」を考える上で面白いと思って買って帰った。後半は、とても「科学的」とは言えないような印象論の感じが強かったり、論理の矛盾も見受けられる。また、終盤では騙される側の責任ばかりが強調されているようであまり面白くなかったが、まあ、騙されないための戒めとして読めば良いだろう。だけど、騙す側と騙される側――どっちが悪い?


 第14回「政策推進作業部会」議事概要を読んで、私に感想を送ってくれた人は一様に、怒り心頭に発した――「怒り心頭に達する」は誤用なのでご注意を――とか、腹が立って気分が悪くなったそうである。

 それにしても、日本の自然人類学者の嘘も小さくなったものだ。アメリカで約四半世紀前に先住民族の遺骨返還をめぐる論争が激しかった頃、「科学者」たちは、「医学・科学の進歩のため」とか、「世界の人類のため」という理由を前面に出して、反対論を展開していた。そう言えば、少し前までアイヌ文化政策推進は「北海道のため」として売られていたが、最近の議事概要ではあまり見かけないような気がする。これも破綻したのか、とうとう「アイヌのため」となった。もう少し突き詰めて追及すると、「私たちのため」と本音が出てくるのかもよ。

 ところで、政策推進作業部会の篠田氏は、2009年2月26日の第5回「アイヌ政策に関する有識者懇談会」で報告した際に、「人類学者としても率直に反省しなければいけない」と述べていた。あれから5年が経過したが、日本人類学会なり、自然人類学者の人骨研究者、考古学者たちは、「反省」をどのような形で公表したのだろうか。インターネット上のどこかに報告書でも掲示されているのだろうか。アイヌの墓地を掘り返した「人骨研究者」たちは、その時にも「アイヌのための研究」と言って反対を押しつぶしたのではなかったか? その「アイヌのための研究」から何が得られたのか。過去の研究と今の研究は違うと人類学者は言うであろう。(一応引用は控えるが、実際にそう言っている本も読んだことがある。)仮にそうだとしても、ではなぜ過去の研究は「アイヌのため」の「還元」に失敗したのか。それを検証し、誠意ある反省を含めた人類学者/学会の報告書のようなものがどこかに掲載されているようであれば、どなたか教えて戴きたい。アイヌの「代表」たちは、篠田氏でも、他の誰かでも良いから、政策推進作業部会なり政策推進会議なりで十分な時間を提供して、きちんとそういう報告をしてもらってはいかがか。そういう過去の検証こそ「アイヌのため」の歴史研究になるであろうから、自然人類学者は喜んでやってくれるのではないのかな。


 さてさて、「甘く小さな嘘」の話だったな。以前、Fleetwood Macの"Sweet Little Lies"をブログに埋め込んだことがある(http://d.hatena.ne.jp/Don_Xuixote/20110319/1300543484)。彼女たちの曲ではこれが最も好きな曲なのだが、最近、こちらの曲のギターの音になんとも言えない快感を感じて、よく聴いている。(私のエレキギターに関する思い出は、またいつか別の時に・・・書かないかもしれないが。)この場合、映像はどうでもよいから、小さく埋め込む。♪Now I know I can't lose as long as you follow. . . .♪というのも、何となく沁みる。
"Fleetwood Mac - As Long As You Follow (Video)" posted by Warner Bros Records at http://youtu.be/ROGEHq1WZqU


 もう少し、「笑い話」も書こうと思っていたが、今日はこの辺でやめておく。(「語ろうとして語れない真実を必死に托そうとする孤独な苦悶こそ、笑い話の生命なのだ。」(上野英信『地の底の笑い話』(岩波新書、1998年)、10ページ。)

 昼間、ラジオを点けたら国会中継があっていて、川田龍平議員が質問していた。ノヴァルティス社には私も頭にきていて、ここでも書きたいと前から思っていたのだが、一連の質問の中で、安倍首相に「ヘルシンキ宣言」をご存知かと尋ねていた。首相の答弁は、オーディオだけでは、しどろもどろに聞こえた。
ヘルシンキ宣言」:http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/20121106/1352213951

 タイムマシンで時間を早めて投稿する。本日をもって、しばらく書かない――嘘か誠か。


P.S.
 1件、大事なことを書き落としていた。「第14回・・・議事概要」で私が最も注目した発言の一つに、こういうのがある。

○ 集約された遺骨の返還の可否の判断方法について、遺骨の管理責任者と返還の相手方としても適格性を有する者の間の合意に基づく民事上の行為とするか、遺骨返還に関する主務大臣が必要な手続を踏んだ上で判断する行政行為とするかとはどのような趣旨か。
○ 通常は民法民事訴訟法に基づき返還されるのが基本的なルールであり、返還請求を行う方が請求する権利を立証することになる。ただし、アイヌ遺骨の返還については、立証が難しい状況になっているので、別に制度を作り主務大臣が返還する要件を定めるなど立証する内容を相当程度軽減するような特別な手続をつくる必要があるかという問題提起。
(5ページ)


P.S. #2
 この発言者は頭がおかしいのではないかと思った発言のうち、最もそう思ったものの1つ:

国連宣言31条にある知的財産権との関連を考えると今後も研究を行う必要があるので、今後遺跡から発掘される遺骨も含めて集約の対象としていくべき。
(2ページ)

 さっぱり、意味不明だ。ここに出ている人たちは、何の資格で選ばれたのだったっけ?


P.S. #3(2014.04.01):

 読んだ人は既にお気づきだろうが、今回の議事概要の特徴は、冒頭で「アイヌ遺骨の返還集約保管の基本的な考え方について」「事務局より主な論点について説明」があったようなのだが――上のP.S.に挙げたやり取りでも分かる――それが収められずに隠されていて、配布資料としても公表されていないことである。

 全文引用は長くなるので発言の冒頭10文字くらいを上から順に並べて、読者に当ててもらう発言者当てクイズをやろうかなと思ったのだが、○を数えたら53もあったからやめた。

 さて、「科学」のあり方が話題になっている。理研だけでなく――「科学」もさることながら、組織防衛という政治的な様相も呈してきたが――今日は調査捕鯨が中止となるニュースが出ていた。「科学的な調査」といいながら、「科学的」ではないのだと。昨年は国際司法裁判所の審議の様子を取り上げたが(http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2013/06/27/234211)、今年はもう載せなかった。
 夕方、出先で見たTBS系列だったかのニュースで「日本の食文化はどうなるのでしょう」と問いかけていた。アイヌのサケ漁禁止との関係で「アイヌ民族の食文化はどうなる/なったのでしょう」と問うメディアはないな。http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/2014/02/09/002927

 4日の裁判に登場する紋別の畠山さんなども主張しているようだが、先住民族のサブシステンス漁業を潰してきた歴史をきちんと見つめなおさなかったツケが返ってきたのだろう。

 だが、ホント、「日本の食文化はどうなるのでしょう」ね。鯨肉以前の問題が多々あるが、延々と書かねばならなくなるからや~めた。

 この方の本は、こちらがお薦め:


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2014/04/01/000000

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