AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

ケネス ディアー「モゥホーク人とケベック国首相との仮想会談」(注)

 せっかく時間を費やしたので、こちらにも投稿することにした。

 最近の私の手抜きを見抜いている読者は、「何でまた、こんな長文をここで翻訳?」と思われるかもしれない。事の経緯は、こうである。

 ICTMN紙の記事を途中まで読んで、ディアー氏に「面白いから翻訳して出して良いか」と尋ねた。そして許可が下りたのだが、寄稿を考えていた某月刊誌は締め切りが過ぎ、スペースに余裕はなさそうだった――返事がなかったので、そうだと思う。もう1つのほぼ季刊誌も、今月は同じくらいのスケジュールで進行中で、こちらもスペースなし。「非営利で」ということで許可を得ているから、あとは自分のブログしかないということになった。出せるところが締め切っていたらそうなるとは、事前に伝えてあった。活字メディアではないので、念入りな推敲はしていない。誤訳や誤植があっても、それは悪意のない過ちであるので、意図的な改竄などと非難しないで欲しい。あくまでも、ボランティア精神での「国民の理解」増進のためである。

 因みに、ディアー氏は、かつての北海道ウタリ協会の招きで――だと思うが――1990年代だっただろうか、北海道を訪問している。私は会えなかったが、その時彼は、ホゥディノショーニーのパスポートで入国している。翻訳しながら思ったのだが、同協会は、彼にどんな話を依頼したのだろうか。

 ホゥディノショーニー[ロング ハウスの人々→下の動画を参照]の6国の1つであるモゥホーク [ネーション]の人々は、モゥホーク人として、ケベック人でもカナダ人でもないから他の人民の政治に干渉するべきではないと信じて、伝統的にケベックやカナダの選挙で投票してこなかった。


 モゥホーク人は、何十年にもわたってこの立場を堅持してきた。しかし今日、ケベック分離の脅威が再び切迫してくるとともに、一部のモゥホーク人は自分たちの伝統的な政治的立場を再検討していて、今や4月7日のケベック州選挙で投票することを考えている。


 今回の選挙はケベック分離に関する選挙やその問題に関する一般住民投票ではない一方で、有権者は、どの政党が今後4年間、同州を治めることになるのかを決めることになる。議会制において、最多議席を有する政党が政府を形成することになる。4党が権限を求めて争っているが、優勢の2党は、カナダからケベックを分離させるために存在しているケベック[独立]党(the Parti Quebecois:PQ)とカナダにとどまりたい自由党である。


 PQは、政権与党の地位を得て自分たちのアジェンダを追求する期待で選挙を要求する前は少数党であった。キャンペーン期間中に、ケベック分離が熱い課題となって、現在、同州の有権者を二極化している。世論調査では分離は有権者の多数によって支持されていないため、PQは、その分離目標を控え目に見せようとして、ケベック人が求めない限りは同党の次の任務に分離に関する一般住民投票はないと述べている。しかし、これは、PQが政権の多数派を形成して今後の4年間にケベック分離の一般住民投票が行われるかもしれないという疑念を小さくするには至っていない。


 ゆえに、ケベックがカナダから分離するのを見たくないモゥホーク人の一部に不安があるのである。一部の人々は、感情が高ぶり、パニックに思考が影響されているように見える。Two Row Wampum[2列の貝殻玉ベルトに刻まれた約束→下の動画を参照]の概念に基づくケベックとカナダとの国対国、政府対政府の関係という長年の政治的立場を断ち切るということは、モゥホーク人民独自の主権の立場からの大きな離脱となるであろう。


 そして、これがディレンマである。モゥホーク人の主権対ケベックとカナダの主権。


 モゥホーク人は、自分たちが主権を有していると信じ、その通りに行動する。それこそが、モゥホーク人にその強さと今日のケベックとカナダとのまさに独特の関係を与えているのである。モゥホークの諸コミュニティは非常に独立していて、その権威をいかなる可能な方法においても主張するが、その結果、ケベックとカナダを悔しがらせるのである。この時点でケベックがカナダから離れている以上に、モゥホーク人はケベックから離れているのである。


 そして、ケベックは、それを知っている。ケベック人は、モゥホーク人が強い国籍感覚を持っていて、ケベックの他の先住民族諸国以上にそれを行使することを知っている。1995年の前回の一般住民投票の際にケベック首相であったジャック パラゾー(Jacques Parazeau)はかつて、このようなことを言ったことがある。モゥホーク人は問題である。彼/彼女らは橋を封鎖するし、厄介になり得る。モゥホーク人はカナダに留まらせよ。彼/彼女らは土地を保持することができるし、彼/彼女らを統制するのはカナダの問題となるだろう。


 ケベックの分離については、ここまでにする。


 ケベックが懸念しているのは、モゥホークの主権と独立というこのイメージである。それゆえに、もしモゥホーク人がケベックの選挙過程に関与することを決定すれば、それは、独立と主権のそのイメージの土台を覆すことになる。モゥホーク人がケベックの選挙で投票するとき、彼/彼女たちは、ケベックの全国議会で自分たちを代表することになる一政党の一員に投票しているのである。仲間のモゥホークに対してではない。そして、その選ばれた人物は、モゥホーク人からの自分たちを代表する権能を当然視する。このことは、モゥホーク人が独自の政治過程において任命する代表者たちの土台を切り崩すことになる。


 そして、そのダメージは、広範囲にわたり得る。この点を例証しようと、私は、未来の分離したケベックでの皮肉な話し合いを書いたところである。


 ポーリーン マロワ(Pauline Marois)首相と数人のモゥホーク人有権者との間の仮定上の話し合いである。


 時:未来。場所:独立したケベックの首相執務室。
 ポーリーン マロワ首相が、テーブルに座っている。彼女の向かいには、独立ケベックにおける自分たちの言い分を述べるためにやって来た2人のモゥホーク人がいる。見たところ、2人のモゥホーク人は楽しそうではない。


 首相が最初に話を始め、彼女の執務室に彼らを歓迎する。「ようこそ、友の皆さん。お会いできて嬉しく思います。私は、可能な時はいつでも、私たちのファースト ネーションズとお会いするのに常にオープンです。ご用は何でしょうか。」


 モゥホーク人たちは、心を込めて彼女に挨拶をした。「あなたのお忙しい日に私たちと面会する時間を見つけて戴いて感謝いたします。私たちは、独立ケベックで私たちが別の国のように取り扱われていないことに狼狽しています。この大陸のこの地での私たちの歴史は、あなた方の歴史よりはるかに長いのです。しかし、あなた方は、その歴史を無視し、独立を宣言し、そして私たちの主権を認めません。私たちには、あなた方がもっているのとまったく同じだけの独立に対する権利があるのです。」


 首相:「ええ、私は、あなた方の長い歴史とあなた方の言語と文化を認めています。でも、それはすべて、過去のことです。今は、あなた方の過去はもはや関係のない現代世界なのです。あなた方の歴史と私たちの歴史は、結びついていて、分離することはできないのです。」


 モゥホーク人:「私たちは、同意できません。私たちは、ここに何世紀もの間、住んできました。私たちは、ヨーロッパ人との接触より前から存在する「平和の偉大なる法(Great Law of Peace)」と呼ばれる独自の憲法をもつ民族の国です。この法が、私たちのチーフとクランマザー、私たちのクラン体系、私たちの男と女の義務、私たちの精神的・霊的なサイクルを確立しています。この憲法で、私たちは、モゥホーク、オナイダ、オノンダガ、カイユーガ、セネカの最初の5カ国を繋いでいます。後に、私たちは、タスカローラを追加しました。この強力な諸国連合は、あなた方の先輩であるフランス国に対処しました。私たちは、そのモゥホーク人の子孫です。私たちは、これまでの歳月に一度も私たちの主権や私たちの土地を放棄したことはありません。私たちは、あなた方とまったく同じように、独立に対する権利を持っているのです。」


 首相:「なるほど。それは、とても感銘深い。それで、あなた方は、この憲法の下のチーフとクランマザーたちというわけですね。」


 モゥホーク人:「ウーン、いいえ、正確には違います。私たちはそれを学校で学び、私たちの高齢者たちがこれらの事を教えてくれます。私たちのコミュニテイにはその憲法に実際に従う人々がいますが、私たちはその人たちの一員ではありません。しかし、私たちは、今でも同じ民族です。私たちは、私たちが並んで暮らし、お互いに干渉しない2つの別個の国々であると述べているTwo Row Wampumに従います。私たちは、これを強く信じています。」


 首相:「ええ、Two Row Wampumのことは聞いたことがあります。あなた方の伝統的な人々が、1980年代初期にここの国会に来て、見事なプレゼンテーションを行いました。それらのワンパム[ベルト]の1つは、この辺りのどこかにあります。そういうわけであなた方は私たちの選挙で投票しないのだと分かりました。」

 モゥホーク人:「そうですね、過去にはそうでした。でも、あなたに会いに来たここにいる私たちと、私たちが代表している人々は、最近の選挙と一般住民投票で投票しました。」


 首相:「では、あなた方は、ケベックの偉大な民主制に加わったのですね。暖かく歓迎します。ケベック党に投票したのだといいけど。」


 モゥホーク人:「正確には違います。私たちは、自由党に投票し、一般住民投票では分離に反対の投票をしました。」


 首相:「んー、それは私の小ちゃな黒い手帳に書き留めておかないといけないわ。いいこと、あなた方が私から支援が欲しければ、もっと賢く投票しておく方が良かったわよ。でも、あなた方が私たちの民主制に加わったからには、私は、Two Row Wampumを国会から取り除いて、博物館に入れることができるわ。それは確かに、今では過去のことで、もう生きている文書ではありません。私はね、私はあなた方の選挙で投票はしませんが、あなた方が私の選挙で投票したからには、あなた方は、自分たち自身のワンパムに違反したのです。だから、あなた方はもう、国対国の関係を有していると主張することはできないのです。」


 モゥホーク人:「しかし、全員が選挙で投票したわけではありません。投票しないで、今も私たちの憲法に従って、Two Row Wampum概念を尊重している人々が国にはいます。」


 首相:冠を脱いで、テーブルに置きながら、「男同士の(腹を割って)お話をしましょう――もちろん、比喩的に言って、ですが。そうです、そちらのあなた方の国の厄介な急進主義者たちは、今もあなた方の伝統に従って生きています。あの人たちは、意志が強く、信念が固い。あなた方のような人々を私たちの民主制に渡って来させるのには長い時間がかかりました。では、あなた方と私、私たちでそれを処理しましょう。私があなた方をモゥホーク人の指導者たちとして承認して、いくらかの追加資金を与えます。そして、あなた方のコミュニティが今後20年の間にフランス語を話すようになりさえすれば、あなた方の言葉を話すことを許可しましょう。しかし、もう主権の話やTwo Rowはなしです。あなた方は、それを放棄してしまったのです。私たちは、カナダとケベックの間で私たち独自のTwo Rowをもつことにします。1つはメープル リーフの付いた舟、もう1つはフルール ドゥ リス(アヤメの花)の付いた舟です。あなた方は、フルール ドゥ リスの舟に乗っています。


 モゥホーク人:「こんなことのために私たちはここに来たのではありません。」


 首相:「あなた方は、私たちの政治過程に干渉すると決めた際に、何を期待したのですか。私たちに反対票を投じて、なおかつ国対国の関係を主張できるとでも? 夢を見ていますよ。ケベック政治へようこそ。あなた方は今や、数百万人の有権者の一人です。私たちの選挙への参加に私から感謝します。」


 モゥホーク人:「うーん、どういたしまして、かな。」


(注)原題は"What the Mohawks might say to the Premier"で、直訳は「モゥホーク人が首相に言うかもしれないこと」となる。The Indian Country and Media Network, April 4, 2014(http://indiancountrytodaymedianetwork.com/2014/04/03/what-mohawks-might-say-pm)に掲載されたコラムを執筆者およびICTMN紙の許可により翻訳掲載。
 著者は、モゥホークのフリーランス ジャーナリスト。The Eastern Door紙の元発行人兼編集者。2010年のNational Aboriginal Achievement Award(メディア部門)を受賞。「先住民のための国連任意基金」信託理事会メンバー。国連諮問資格NGOのインディジナス ワールド アソシエーション(Indigenous World Association)の事務局長。

 上の枠内の寄稿は、執筆者本人および執筆者を通じて掲載紙の許可を得て翻訳。無断転載を禁じる。

Mrclave, "Haudenosaunee (People of the Long House)" at http://youtu.be/qlBsBbn1Xw4

"Honoring the Two Row" posted by Two Row Wampum Belt at http://youtu.be/uM5CHsz5p4I


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2014/04/10/014752