AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

ある墓地の発掘調査――「墓地概念」があったと言いながら

 ある方のブログから思いつくことがあって検索をしていたら、こういう研究所のNewsletterに偶然辿り着いた:『噴火湾文化』Vol. 3(2007.12)(http://www.funkawan.net/book/nlf3.pdf)。
 今は(自然)人類学者が矢面に立っていて考古学者が陰に隠れているということを指摘しようと考えていたところであった。2007年12月発行であるから、地元の関係者は既にご存知であろう。その中の、青野友哉「伊達市有珠4遺跡-近世アイヌ民族の墓の調査」、11-15ページからの抜粋である。

 有珠4 遺跡は、有珠優健学園跡地に養護老人ホームを建設するために、当研究所が事前に発掘調査したものです。2006、2007 年の2カ年の調査では縄文時代中期(約4,000年前) から近代までの遺構と遺物が発見されました。
 そのなかでも、23基もの近世アイヌ民族の墓がまとまって発見されたことは非常に珍しく、保存状態の良い人骨や副葬品の出土により、多くの考古学的情報を得ることができました。
 今回は、発掘調査により明らかになった近世アイヌ文化期(本州は江戸時代: 約400 ~140 年前)の墓の構造と遺体の埋葬の仕方、性別による副葬品の違いなどについて紹介します。
 さらに、約340 年前の有珠のアイヌ民族が「墓地概念」を持っていた可能性が指摘できることから、明治時代以降の民俗学的な聞き取り調査ではわからなかった、近世アイヌ民族の死生観と他界観を考古学的に究明する必要があることを述べました。(11ページ)

 最後に、本調査において出土した近世アイヌ文化期の人骨について述べておかなければならない。
 発掘調査により出土した人骨は、上記のように記録にほとんど残らない近世アイヌ民族の実態を明らかにできる重要な情報を有していた。また、今後行われる人類学的研究により、さらに多くの情報を与えてくれることだろう。
 しかし、われわれ調査者は、人骨がどんなに、北海道やアイヌ民族の歴史を明らかにできるものだとしても、それを単に「資料」として扱うわけにはいかない。なぜなら、それらは明らかに人の遺骸であり、340 年前に有珠地区に生きていた人そのものだからである。そのため、調査中には被葬者に敬意を払い、先祖供養の儀式(シンヌラッパ)を行った。
 儀式はウタリ協会伊達支部(小野祐照支部長)の主催で、諏訪野義雄祭司により執り行われた。参列者には北海道ウタリ協会加藤忠理事長も同席してくださり、伊達市役所職員や老人ホーム建設に関わる人々が参加した。
 なお、今回の人骨鑑定は、実習として当初から参加していた東京大学人類学教室に依頼したが、鑑定終了後には札幌医科大学に移し、丁重に保管されることになっている。(15ページ)

 Sounds condescending.

 偶然2つ並んだけれど、直前の記事の出来事とえらい違いだ。伊達支部の方々は、加藤理事長のリーダーシップの下、とても物分かりが良いようで。「集約施設」関係のお話も、こうしたことの延長線上にあることがよく分かる。

 この時は、伊達支部が考古学的研究だけでなく、その後の「人類学的研究」すなわち「人骨鑑定」にも同意していたのだろうか。その過程は、「さらに多くの情報」を蓄積して今後に生かすためにも、「研究」のテーマとして非常に重要な意味をもっているであろう。

 この時の遺骨は今、札幌医科大学で「丁重に保管され」ていて、将来的にまた「集約施設」に移されて「丁重に保管されることになっている」というわけか。まさに、「さまよえる遺骨たち」だ。


P.S.:なぜ再埋葬されずに、「人骨鑑定」へと送られたのだろう。誰が、どういう手続きを経て決めたのか。

 こういう流れになるとは考えてなかったから、昨日はもうこの記事は取り上げなかったのだが、サウス ダコタ州がインディアンの古墳(埋葬塚)の調査を進めている。調査は、古墳の位置を確認することで開発業者がそこを荒らすことを避けるためにもなるという。古墳にはいろいろと謎もあるが、「特定の場所の特定の古墳を誰が造ったのかということに答えを期待しないように。州は、古墳を保護したいのであって、その中を探ることはしない」のだと。そして、最後に、インディアンの古墳にまつわる謎がいろいろとあるにもかかわらず、1つのこと、すなわち古墳のメッセージは非常に明白である。
「これらの古墳が語っていることは、私たちの祖先がここに埋葬されているのだから、ここは私たちの土地である、ということである。」
"Ongoing survey work documents Indian burial mounds in SD" http://www.capjournal.com/news/ongoing-survey-work-documents-indian-burial-mounds-in-sd/article_07a2e0e4-ce91-11e3-a09c-001a4bcf887a.html


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2014/04/30/020101