AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

政策推進作業部会でアイヌの優先的雇用を実現したくても「人種差別撤廃条約」を持ち出せない理由

 アイヌ政策有識者懇談会の報告書については他所で批判してきたのでここで繰り返すことはしないが、その狭い枠内で提言されている事がらを「推進」するのでさえ、アイヌ政策推進作業部会は苦労しているように見える。そもそも、部会長と思しき発言者が、時々、有識者懇談会報告書の方針を人骨研究者か誰かに対して念押ししている発言からも分かるように、同報告書の方針を共有していないのか、場違いな人物が招きこまれているのか、と思えるような箇所もある。しかし、そのような「反対勢力」(?)だけでなく、有識者懇談会報告を推進しているつもりの人物が、目先の狭い利益に囚われているがために、実はその反対の結果を招くことになりそうな発言をしていることも目立つ。あるいは、懇談会報告書の中味を「推進」できないから、お願いされる側のお役人から、そっとそういう発言を促されて、しているのかもしれない。(敢えて言う必要もないだろうが、私は、同作業部会の議事概要を読んでそういう印象を得ているというだけである。実態がどうかは分からない。くれぐれも、鵜呑みにはせずに、ご自分で判断して戴きたい。作業部会の中でお互いが疑心暗鬼にならないように、無用なことを書いておくが、「守秘義務」は非常に堅く守られているようで、私には一片の情報たりとも漏れてきてはいない。)

アイヌ政策有識者懇談会『報告書』の中の「人種差別撤廃条約」への言及

 アイヌ政策有識者懇談会『報告書』には、「人種差別撤廃条約」が次のように登場している。ブログというのは、こういう時に便利である。ページ数や行数を気にせずに簡単にコピー&ペーストが可能であるから、少々長くなるが、読んでなかったり、既に忘れてしまった人のためにも、その部分を丸々引用しておく。先の第13回作業部会での部会長と思しき人物の発言(「職員の採用について、より一般的に言えばアファーマティブ・アクションを導入できるかという話になるのではないか。我が国でも女性や障害者についてはポジティブ・アクションの名称で採用されており、合理的な理由があれば直ちに違憲とは言えない。」)は、ここに言及しているのである――と、私が代わって解説することもなかろうが。(ここでも間があったのかどうか、次の発言は、それに直接反応しているとは思い難い。要するに、作業部会の報告書に収める文言を「意見」として既成化しているように思える。)

憲法等を考慮したアイヌ政策の展開
 また、国及び地方公共団体により実施されるアイヌ政策が、我が国の最高法規である日本国憲法( 以下「憲法」という) を踏まえるべきことは当然である。例えば、アイヌの人々に対して特別の政策を行うことは憲法第1 4 条の平等原則に反するのではないか、という指摘がある。しかし、事柄の性質に即応した合理的な理由に基づくものであれば、国民の一部について、異なる取扱いをすることも、憲法上許されると一般に解されており、既述のようにアイヌの人々が先住民族であることから特別の政策を導き出すことが「事柄の性質に即応した合理的な理由」に当たることは多言を要しない。さらに、我が国が締結している「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」第2条2(注)が、締約国は特定の人種への平等な人権保障のために特別な措置をとることができるとしていることも視野に入れる必要がある。
 これらの観点を踏まえると、憲法アイヌの人々に対する特別な政策にとって制約として働く場合でも、合理的な理由が存在する限りアイヌ政策は認められるといえる。さらに今後重要なことは、アイヌ政策の根拠を憲法の関連規定に求め、かつ、これを積極的に展開させる可能性を探ることである。
(注)「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」
 人権及び基本的自由の平等を確保するため、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策等を、すべての適当な方法により遅滞なくとることなどを主な内容とした条約。
 第2条2は以下のとおり規定している。
第2条 略
2 締約国は、状況により正当とされる場合には、特定の人種の集団又はこれに属する個人に対し人権及び基本的自由の十分かつ平等な享有を保障するため、社会的、経済的、文化的その他の分野において、当該人種の集団又は個人の適切な発展及び保護を確保するための特別かつ具体的な措置をとる。
(『報告書』、26-27ページ。)

 憲法第98条第2項が「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と述べている一方で、『報告書』は、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(以下、「人種差別撤廃条約」)に言及しているが、「視野に入れる必要」だけで、それを積極的に適用するという立場までは取っていない。この何となくヘソの辺りに力が入っていない感じの姿勢は、『報告書』中のアイヌ差別への言及箇所にも関係している。『報告書』には、次のように、「差別」に関する記述がなされている。

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転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2014/05/03/013000