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AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

優先採用の対象は?

☆「アイヌを優先」vs.「ウレシパの卒業生」vs.「積極的にアイヌの子弟を」

 最初に、前に引用した発言と重複するが、この3つの発言を見て戴きたい。

管理運営業務については、国の事業として先住民族対策として行うので、先住民族に担わせるべきだというのは言葉としては良いと思うが、長い目で見ると他の施策と同じように一般競争入札の方法をとった方が良いと思う。5年か10年という短期的な施策であれば、アイヌを優先していただいた方がよいが永久に続くということであれば民族共生の象徴となる空間なので共にあるべきだと思う。

また、職員を採用については国が主体的につくる施設ではあるが国家公務員試験を引用するようなことがあってはいけない。ウレシパの卒業生は大学生であるが、国家公務員試験とは別な採用の形態をとしなければ、中卒の子も含めて採用するといった場合に今の公務員試験は絶対になじまないと考える。採用については別枠で考えていただくべきではないかと思う。

ここでの議論が実現されていくと考えているので象徴空間に望むことを申し上げる。
まず、象徴空間では、積極的にアイヌの子弟を採用していただきたいということ。
次に、アイヌの伝承者育成もしっかり取り組み、きちんと世代交代が行われるような方法も検討していただきたいということ。
次に、象徴空間だけでなくイオル事業地域などとも連携し、しっかりした下支えや波及効果が出るような取組を考えていただきたいということ。

 重箱の隅を楊枝で穿るようであるかもしれないが、太字にした部分、「アイヌを優先」、「積極的にアイヌの子弟を採用」、「ウレシパの卒業生」、そして第15回作業部会の別のところで言及されている「伝承者育成事業」の修了者。この4つは、互換性をもって同じ意味で使われているのであろうか。作業部会が準備している報告書にどのように書かれるのか注意して見たいと思うが、私は違うと思う。

 最初の「アイヌを優先」と言っている人は、文字通り、「アイヌ[全体あるいは誰も]を優先」と受け取って反応しているのではないかと思えた。しかし、「優先」に正当性を与える歴史的不正義を「5年か10年という短期的な施策」で正すことができると考えているのであれば――そして、実際にそのようであるが――その認識を疑わざるを得ない。ひどい発言である。ただし、「アイヌを優先」という、この発言者の受け止め方の方が、皮肉にも正しかろう。

 「アイヌを優先」は支持したい。しかし、現在のアイヌ政策推進会議・作業部会に、それができるのか。できるとすれば、アイヌ政策有識者懇談会の報告書の枠組みを打ち破る議論をそこでやるべきではないのか。それをせずに、作業部会が推進会議に提出する報告書に「アイヌの子弟」とか、「ウレシパの卒業生」と明記されるのであれば、大いに問題があると考える。特に後者であれば、アイヌの優先雇用というのではなく、なぜ一私大のプログラムの卒業生が、全国的な「総合政策」において優先されるべきなのか、理解に苦しむ。

 この種の会議の議事録を詳細に研究したことはないので、この会議が一般的なのか特殊的なのかよく分からないが、多分、後者だろうと思っている。これほどまで露骨に会議メンバーが自己利益を押し出すのも珍しいのではないか。(どうせやるのなら、もっと上手にやりなさいと、変な応援をしたくもなりそうである。)

 象徴空間全体で初期に、また、その後の毎年、何人くらいの職員――特に学芸員――を採用する見積もりなのだろうか。最初の1期、2期は良いかもしれないが、その後の採用枠がどれだけあるのだろうか。「ウレシパ」のプログラムには、アイヌも非アイヌも入っているのではなかったか? その中でアイヌの卒業生だけを優先するというのだろうか、あるいは、卒業生ならアイヌ・非アイヌのどちらも優先というのだろうか。後者であれば、「アイヌを優先」と言っていることとは異なる。

 次に、他大学でアイヌ文化や言語――その他の専攻でも良いが――を学びながら学芸員の資格を取得しているようなアイヌの学生の応募者との関係はどうなるのだろうか。

 3点目。そもそも文化とは有形・無形の生活様式として、生活の中で実践されるものであろうが、学校教育を受けていなくともアイヌ文化に詳しい人はいると思われる。そういう人と競合する場合、「ウレシパの卒業生」が優先されことになるのだろうか。年齢的にも、「子弟」に限定する必要もないのではないか。

 「ウレシパの卒業生」というような狭い、目先の利益で採用基準を決めていては、将来、アイヌ同士がねたみ合い、いがみ合うことになるのではないだろうか。そもそも、学位とか資格という制度がもつ意味そのものも、この種の会議では先住民族の視点から問われねばならないはずなのに・・・。

 最初の2点については、非アイヌの中にも有資格者はいるであろう。繰り返しになるが、そのような人に対して「アイヌを優先」する根拠(正当性)をどこに求めるのか。有識者懇談会の報告書に遡って議論してもらいたいものである。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2014/05/28/015908

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