AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

国連人権理事会、先住民族の権利に関する専門家機構(EMRIP)の「文化」に関する報告書/北海道新聞(5/30)社説/「権利宣言」マニュアル

先住民族の文化的遺産に対する先住民族の権利の一つの重要な構成要素は、儀式用品と遺骸・遺骨の返還に対する先住民族の権利である(第12条)。これは、例えば博物館のような、そのような遺品と遺骨が保管されている場所の協力を必須とする。
(2012年の研究報告書)


P.S.
★「優先雇用」をしてはならない

 話変わって、先に、アイヌ(子弟など)の優先採用に関して書いたが、職位の下の方ではなく、上の方の採用はどうなるのだろう。「民族共生の象徴空間」(←N.B. あくまでも「実体空間」ではない)に建設予定の博物館の初代館長ポストをめぐっては、恐らく水面下で駆け引きが行われていることであろう。北海道アイヌ協会も、理事会が推薦者を決めたとか? 2020年に「グランド オープン」となれば、まだまだ「現役」でいそうなS氏やO氏あたりも狙っているのではないのかな? 博物館だけでなく、各種施設の要職に、アイヌ総合政策室北海道開発局道庁、その他の関係機関からの天下りを優先雇用しないように監視しないといけなくなるのだろうか。(この件は、予定の閣議決定に盛り込まれるのだろうか。)


P.S. #2(2014.06.01, 21:30)

 実は昨晩、5月30日の北海道新聞社説「アイヌ象徴空間 ほんの一歩にすぎない」(http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/542374.html 非公開になった場合⇒http://blog.goo.ne.jp/ivelove/e/6c559f3144fcfa13c5418f104f066a1b)を取り上げて、批判的見解を途中まで書いて、バカバカしくなって止めた。上の引用は、それに続けて使おうとしたものの一部である。政府が「民族共生の象徴空間」の基本方針を閣議決定するという動きに合わせての社説であるが、ここで書いていることも含めて、あちこちの批判を寄せ集めて書いているだけで、パラダイムが変わったというわけではなさそうである。それだけに、生煮えの料理みたいに感じていた。

 そういうところへ読者からも、「相変わらず中途半端というか、腰が据わっていないというか」というコメントが寄せられた。お酒でも飲んでいるかの如くの怒りの表明が綴られているが、午前中のメールだからしらふ状態に違いない。昨晩書きかけた主旨とほとんど同じなので全文をそのまま載せたいところだが、一部は省略しておこう。

「ほんの一歩」というけど、この言い方だと「もっとやれ」であって、そもそもその一歩が誤っていることへの批判たりえていないところが道新のだらしなさ。・・・なぜそもそも集約など断じて許されないと書けないのか。・・・「墓から持ち去ったまま、ずさんに管理してきた大学や研究者にはあらためて猛省を促し、真摯(しんし)な対応を求めたい。慰霊施設への安置を恒久化させてはならない」というのも虚しいですね。


P.S. #3(2014.06.02, 1:30)

 道新社説の「地域ごとに同様の施設を建設する案も検討すべきだ」という点と似たようなことは、こちら(http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/2014/03/26/004454)に書いたことがある。しかし、この国の政府が不承不承に何かをやろうとする場合、「案も検討すべき」という程度では最低10年はかかり、大体においてボツとされるのであろう。

 ところで、北海道新聞は、まだ政府の「遺骨返還ガイドライン」を入手していないのだろうか。公表することをどこかから止められているとか?(ではないよね。)

 明治以降、コミュニティーを崩壊させた責任が政府にあるのは明らかだ。拠点施設の設置のほかにも取り組むべき課題は山積する。
 こうした認識を踏まえ、総合的な先住民族政策へと発展させていく。今回の閣議決定は、その小さな一歩にすぎない。

 「拠点」という有識者会議の用語と概念をそのまま使用しているが、「拠点」と「地域ごとの・・・施設」という考え方は衝突しないのか。何の「拠点」になるのか考える必要があろう。「取り組むべき課題」も明記して欲しい。

 いずれにしても、まるで閣議決定の内容を既に知っているかのような書き方である。閣議決定の向きと「総合的」政策の向きが同じであると、どうして確信できるのだろうか。
 「総合的政策」については、こちらを参照されたい。⇒http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/20120216/1329326440


 上記EMRIPの研究報告書というのは、2012年のEMRIP第5会期に提出された「先住民族の権利とアイデンティティの推進と保護における言語と文化の役割に関する研究」報告書である。これは、国連の人権理事会の要請に応じてEMRIPが作成し、人権理事会の第21会期に提出されたものである。

 この研究報告は、先住民族の言語と文化に対する権利に関する国際的および地域的[←国際的な地域という意味である]基準の概要を示し、先住民族の文化と言語が先住民族の自決権および土地・領域・資源に対する諸権利に対してもつ関係を叙述し、先住民族の言語と文化権の推進と保護において直面される課題を含めて、先住民族の言語とアイデンティティおよび文化とアイデンティティを分析するものである。25ページの研究報告の末尾には、「先住民族の言語と文化」と題するEMRIPの「助言 No. 3」がまとめられている。

 「助言」の最終項目は「先住民族文化遺産の保管者」と題されていて、次のように述べられている。

 先住民族文化遺産が保管されている博物館および他の場所は、関係する先住民族によって求められる場合、当該先住民族に情報を提供し、そのような文化遺産の返還を促進するための仕組みを考案するべきである。

 また、「国家」の行うべき事項に、そのような博物館や他の場所に「インセンティヴ」を与えるべきであるとも記している。

 北海道新聞がこのEMRIP報告書の全文訳を掲載して、有識者懇談会報告書や政策推進会議から出されている諸文書と比較してくれれば、「国民の理解」に大いに貢献することになるのではないだろうか。


P.S. #4(2014.06.03, 23:59):

 以下は、昨年8月に刊行された本文142ページから成る国連の「権利宣言」に関するマニュアルから、「異なるアイデンティティと文化的一体性」に関する部分を抜粋して訳出するものである。

「専門家機構は、(議論にあたって、)完全に網羅しているわけではないが、先住民族文化について次の定義を提出した。
 先住民族の文化は、先住民族生活様式、達成と創造性の有形無形の表明を含み、自らの自己決定の表現および自らの土地・領域・資源との自らの精神的・身体的関係の表現である。先住民族の文化は、共通の物質的・精神的価値観に基づくホリスティックな概念であり、言語、精神性、構成員資格、芸術、文化、伝統知識、慣習、儀礼、儀式、生産様式、祭事、音楽、スポーツと伝統的ゲーム、行動、習慣、道具、住居、衣服、経済活動、道徳、価値体系、宇宙観、法、狩猟・漁業・捕獲・採集などの活動における特有の表明を含む。

「規約人権委員会は、先住民族にとって、文化に対する権利は、一定範囲の他の諸権利がまた満たされていることを必須要件としうると考えてきた。これらの権利は、慣習的活動への参加権、土地・領域・資源へのアクセス権、家族に対する権利、自らの文化権に影響を及ぼす決定作成過程への参加権を含み得る。(略)

「さらに、先住民族の精神性(spirituality)という概念は、本質的に文化とつながっている。特定の宗教を推進したり、先住民族の精神的実践を禁じたりする政策の採択、あるいは、法律や他の政府機関、例えば警察や裁判所、が先住民族の精神的実践を尊重することを怠ることは、文化に対する権利の土台を崩し得る。専門家機構は、先住民族の儀式用品と遺骸・遺骨の返還に対する先住民族の権利に注意を喚起してきた。返還には、博物館をはじめ、そのような遺骨が保管されている個人や組織の協力を必要とすることもある。先住民族の権利に関する特別報告者は、文化的表現の審美的側面を支持しようとする政策や施策を通して文化的多様性を推進しようとする努力を称えながらも、国家は政治的・社会的構造、土地利用様式、そして開発へのアプローチを含めて、文化的多様性をそのあらゆる形態において承認することに、同じように誓約しなければならないと強調してきた。

「専門家機構はさらに、先住民族の女性と子どもは重要な文化的知識の保持者であることが多いということを強調してきた。しかしながら、彼/彼女たちはまた、文化に対する権利の侵害によって不釣合いに影響を受けることがあり得る。この点に関して、子どもの権利に関する委員会は、国家は先住民族の子どもの文化に対する権利を促進するための特別措置を採択しなければならない場合があるとの見解を示してきた。そのような措置を採択するに際して、国家は、先住民族の子どもたちが自分たちの文化を享受することの集団的性質の重要性、および、文化的感性への必要を含めて、先住民族の子どもたちの最善の利益に関する決定に先住民族を含める必要に対して注意を払わなければならない。言語教育は、先住民族の文化の保存にとって絶対的に重要である。先住民族の言語を保存するために効果的措置が取られること、そして先住民族の子どもたちが初期の学年に独自の言語で教育を受け、自分たちの先住民族文化アイデンティティの価値を下げない多文化教育を受けることが重要である。

以上、大急ぎでの訳で、雑なところは大目に見て戴きたい。余計なコメントは不要だろう。太字による強調は、私が追加したものである。


P.S. #5(2014.06.04, 1:40)

 もう一度、EMRIP報告書に戻る。アイヌ政策推進作業部会の議事概要に「精神文化」という言葉が何度も登場していることを、議事概要を読んでいる人は記憶していることであろう。EMRIP報告書は、「先住民族の精神性」という項目を設けて、次のように論じている。

先住民族の精神性という概念は、創造に対する畏敬の念を日々の生活と諸関係に適用することである。先住民族の精神性の重要な要素には、祖先と精霊あるいは神とのつながり、社会関係、自然への畏敬、そして自分たちの土地、領域、資源との関係を維持することが含まれている。先住民族の精神性は、全包含的であり、儀礼の挙行、儀式、積極的で敬意を込めた価値観の適用、そして精神性が世代を超えて伝達されることを確実にすることによって実践され得る。それは、先住民族の文化と自然と密接に結び付いている。特に、土地は、精神性の源である。土地への帰属意識はまた、社会・経済的であり、感情的であり、政治的でもあるという強い信念が存在している。

「主流の宗教は、特に、政府が特定宗教を推進する政策を採ったり、先住民族の精神的実践を禁じたりする場合に、あるいは、国家の法律や政策や裁判所が、土地、領域、資源に対してを含めて、先住民族の精神性や精神的諸関係を他の形態の精神性と対等として承認しない場合に、先住民族の文化的発展に対する脅威であり得る。人が自己の言語を失うことは、原初に与えられたかたちで精神性をもはや実践できないことを意味していると論じる人々もいる。

「(「権利宣言」第12条への言及省略。)経済的・社会的・文化的権利に関する委員会は、「締約国はまた、先住民族によって伝統的に所有、占有、利用され、その文化的生活に欠かせない先住民族の先祖の土地や他の天然資源との精神的諸関係を維持・強化する・・・先住民族の権利を尊重しなければならない」と述べてきた。

 この後、「文化的多様性と遺産」の項目へと続くのであるが、そこに冒頭に訳出した段落が収められている。

こんなものを訳出して、誰かの役に立つのだろうか。ふー。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2014/06/02/012557