AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

「権利宣言」の「つまみ食い」(アイヌ政策推進会議配布資料から)

 昨晩の投稿は、読者のお知らせメールに反応した形で予定外の投稿であった。さすがに、関連キーワードで他所から来られたのであろうか、アクセス数が増えていた。続きもあるが、先に書こうと思っていたことを、今夜はまず先に投稿する。間に記事が入ってしまったので、新たに立てるが、こちらの続きである。

 アイヌ政策推進会議に提出された「資料2-2」の「(2)対象者の認定」には、このように書かれている。

本業務の実施機関は、「先住民族は、その慣習及び伝統に従って、自己の帰属又は構成員を決定する権利を有する」という「先住民族の権利に関する国際連合宣言(2007 年採択)」の関連条文の趣旨を尊重し、公益社団法人北海道アイヌ協会が選定され、本業務は、同協会において国土交通省との合意に基づいて行われることとなった。今後、認定手続が適切に実施されるよう注視していくことが求められる。

 何週か前の「報道特集」でだっただろうか、ある元官僚のインタビューが流されていて、こういう都合の良いところだけを取る手口を業界用語で「つまみ食い」と言うのだそうだ。「権利宣言」のつまみ食いである。

【趣旨】①ある事をする理由・目的。趣意。 http://www.weblio.jp/content/%E8%B6%A3%E6%97%A8

 先住民族が構成員を決定する権利は、上のURL記事のP.S. #4にもある通り、その自決権の表現形態の一つとして広く認められている。上記「資料2-2」の引用文は、「権利宣言」第33条からのものである。第33条の「趣旨」あるいは土台には第3条(先住民族の自決権承認)があることを忘れるべきではない。アイヌ政策推進会議は、これを「尊重」するだけでなく、実行に移すべきである。

 「奨学金貸与」に関する認定は、実際のところ、「資料」の言葉通りにはなっていない。問題点その1:「認定業務を実施する機関については国土交通省が選定する」ということ。問題点その2:「選定された実施機関と国土交通省は業務を実施するに当たっての合意書を交わし、実施機関は、この合意書に基づき、国土交通省が定める実施規則の準則に従って実施規則を作成する」ということ。以上の2点から分かるように、「実施機関」は、完全に国土交通省に従属させられている。問題点その3:自主的に設置するのではなく、「有識者からなる第三者委員会を設置し、対象者認定の適切性についての審査を行うこと」が条件として付されていること。

 「権利宣言」の「関連条項の趣旨を尊重」と書かせたことまでは良いが、どうも「つまみ食い」にもなってなさそうな、見せかけのごまかしである。

 「国内人権機関用」の「権利宣言」に関するマニュアルには、自己アイデンティティと構成員の決定に関して重要なことが書かれているので、記しておこう。

定義の問題にまつわる論争にかかわらず、先住民族が直面している人権課題が取り組まれるべきである。・・・・正式な定義の不在が先住民族に影響を及ぼす人権課題に取り組む障害となるべきではない。

 このマニュアルの第2部には、この国のような「政府が先住民族の権利を取り入れていない状況での国内人権機関の関与の事例」が提供されてもいる。

 北海道アイヌ協会の規則に基づく「認定」に関わる問題については、既に書いたので省く。


 もう1件。「資料6」は「個人が特定されたアイヌ遺骨等の返還手続に関するガイドライン」であり、特定されていないアイヌ遺骨等の返還手続きについては何も述べていない。さらに、この文書には、次の一節がある。

個人が特定されていないアイヌ遺骨を保管する大学において個人が特定されたと認める場合は、速やかに文部科学省に報告し、本ガイドラインを考慮して返還の手続を進めることとする。

 前掲の専門家機構の研究報告書は、博物館や他の場所に「インセンティヴ」を与えるべきという箇所で、そのような機関は「関連先住民族に知らせる」べきであるとしている。文部科学省は、すべてをコントロールの下に置いておきたいのであろう。

 加藤理事長は「深い眠りから目覚め」た後のスッキリしたご気分のようであり、当事者がそう言うのなら、「いいじゃないの幸せならば」とまた言うしかないのだが、私は、関係者の言う「先住民族政策」というのはレトリックにすぎず、閣議決定されようとしている政策は単なるアイヌ系住民政策にすぎないというモヤモヤとした感じがしている。


転載元:http://ainupolicy.hateblo.jp/entry/2014/06/05/233441