AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

6/30-7/11のハイライト

 第1回は、特別に約2週間分(6月30日~7月11日)の投稿からの抜粋である。

★2014-06-30:遺骨のDNA研究の行き着く先は?

 8月9日の北海道アイヌ協会主催「記念事業」に関して。

 遺骨の遺伝学研究がもたらすさまざまな影響について研究している学者は北大の流し台のXXXタンクにもいるのだろうと思うのだが、北海道アイヌ協会は、人骨研究者の側だけから情報を得ていて、反対側からの情報を遮断してしまっているような気がしてならない。盗まれた遺骨を研究材料に提供することの道義的・倫理的問題も大切であるが、遺骨から抽出されるDNAの遺伝人類学研究がもたらす結論が単にアイヌのルーツを明らかにする――これも仮説においてのことであるが――だけではなく、「アイヌ民族」やその権利に関する影響をもたらすことを考えておかねばならないはずだが、近くでそのような情報を提供する学者はいないのだろうか。いたとしても、協会側が聞く耳を持たぬということなのだろうか。


★2014-07-09:人種差別撤廃NGOネットワークのCERDへのレポート

 人種差別撤廃NGOネットワークがCERDにNGOレポートを提出したという情報を、読者から戴いた。⇒http://imadr.net/wordpress/wp-content/uploads/2014/07/1191a6b476b8fdbe233dbf085a469ac8.pdf

 アイヌ民族関連は、アイヌ民族評議会と市民外交センターによる共同作成となっている。「民族共生の象徴空間」に「集約」される遺骨の問題自体の「人種差別」性は、問われていない。

 「日本政府は、アイヌ政策推進会議や、その他のアイヌ民族に関する協議体の構成員の最低半数をアイヌ民族とする」という提言も、数だけではダメで、「協議体の構成員」の選ばれ方を問わねばなるまい。それに、「アイヌ民族評議会」の代表が主張している「トライパータイト コミッティー」では、「最低半数」どころか、3分の1にしかならないのでは?

(追記) 常本照樹氏曰く、「[政策推進会議の]両作業部会とも半数以上アイヌが入っているし、審議内容はウェブで公開している。」(谷口滋「シンポジウム報告『総合的なアイヌ民族政策はどうなるのか』」『先住民族の10年News』、第177号、5ページ。⇒http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/20120216/1329326440

 NGOレポートの起草がいつどのように行われたのかは知らないが、5月の北海道アイヌ協会の総会議案書でSGCとIMADRの名前を挙げて国連に働きかけるということが承認されているのに、なぜ「北海道アイヌ協会」名で出さない/出せないで、「アイヌ民族評議会」名なのだろうか。このようなやり方は、もう通じないのではないか。政府や関連機関は、既にディスインフォメーション作戦で動いていると思われるのである。

P.S.(2014.07.22):

 最近どこでだったか、「百聞は一見に如かず」ということで、ところが、一見した途端、何が何だかわからなくなったという感想文を読んだのだが、『人種差別撤廃委員会(CERD)提出 NGO レポート』の「アイヌ民族の権利」部分(12-13ページ)を読んでの私の感想が、それに似たようなものであった。

 「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会(第5回)議事概要」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainu/dai5/5gijigaiyou.pdf)の6ページに次のような発言が記録されている。

 札幌医科大学のイチャルパ、供養祭と言いますが、遺骨の返還、更にはDNAのレベルでのアイヌ古人骨による研究申し入れについての話し合いなど、取組は進めてきているところです。これらの取組は、不当な方法で収集されたアイヌの人骨の返還などに関わる先住民族の権利に関する国連宣言第12条の具体的な取組でもあると思っています。この取組の更なる推進と、東大や京大などの国内外の大学他に分散し、保管されているアイヌの人骨について、先住民族の先祖の尊厳回復と今後の研究、アイヌ文化、歴史の理解促進、啓発の意味合いを込めて、象徴的な施設を早急に国民の理解を得て国の責任のもとに設置していただければありがたいと思っています。
 その上で、アイヌの経済的、社会的状況の改善に関する総合的施策立案のため、日本政府も加入している人種差別撤廃条約の国内実現も見据えて、その報告義務にもあるように、北海道の調査だけでなく、国が主体となって、生活状況の実態調査を早急に取り組んでいくことをお願いしたいと思っております。
(強調は追加。)

 これは北海道アイヌ協会の代表の発言のように読めるし、後段の要請はNGOレポートの意見と整合しているように思える。アイヌ民族評議会、市民外交センター、並びに、ERDネットも、太字部分に関して同じ考えなのだろうか。

 なお、12ページに「調査から 3 年が経過した 2011 年になっても何の施策も取られていない」とあるが、2014年の誤記ではないだろうか。


★2014-07-10:「象徴空間で遺骨に関する研究もしなければいけない。」

 「閣議決定」に関する北海道新聞のオンライン版記事は短いものだったが、紙面では大きく閣議決定の全文が掲載されていたそうである。常本照樹氏と秋辺日出男氏の談話も載っていた。6月30日、インターネットから遮断される直前に、読者のご協力によって、全文を読むことができた。

 北海道新聞は、二人が対峙しているように見せているが、二人の見解が対極にあるわけではない。北海道新聞は、アイヌ文化振興レジームの中での「異論」を2つ並べているにすぎない。アイヌ政策をめぐる見解の相違を社会の公器として公平に伝えるためには、前に示唆したように(http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/2013/11/22/231222)、5人くらいに登場してもらわないとなるまい。遺骨返還問題に関しては、少なくとも3人を登場させないと不公平である。

 秋辺氏は、このように述べている。(編集が行われているのだろうとは思うが、一応、この通りに述べたものと仮定して話をすすめる。)

 象徴空間で遺骨に関する研究もしなければいけない。(略)まず象徴空間で事実関係を明らかにして、そこからどう扱うべきかという結論を導く。

 どのような「研究」を念頭に置いているのであろうか。それも大いに気になるところであるが、現在、遺骨返還が裁判でも闘われ、大きな争点となっている時に、アイヌ民族が管理権も何も獲得していない状態のままで遺骨を集約してしまってから、「事実関係」をどのようにして「明らかに」させようというのであろうか。そのような議題で効果的な交渉ができるのであろうか。もしそう信じているのであれば、アイヌと学界・政府との非対称的力関係にあまりにも楽観的に過ぎよう。「そんなことは言われなくても分かっている」という上での発言なら、真意はもっと別のところにおありなのだろう。

 もう1点気になったのは、秋辺氏の肩書きである。道新記事には「阿寒アイヌ工芸協働組合専務理事」となっている。彼は同時に、アイヌ民族党の副代表でもある。道新は、なぜこちらの肩書きを使わなかったのだろうか。

 秋辺氏は、冒頭で、「新たに整備する象徴空間は始まりにすぎない」とも述べている。1997年の「アイヌ文化振興法」の制定時にも、多くのアイヌや市民支援団体が「始まりにすぎない」と言っていたと思うが、秋辺氏は、その頃、どのように考えていたのだろうか。「始まり」から17年――17年ぶりの閣議決定だとメディアは書き、それを加藤理事長は「夢のようでうれしい」と言った――そして、また「始まり」だとしたら、この17年間は何が起こっていたのだろうか。次に何か出てきた時もまた、「始まりにすぎない」ことになるのだろう。アイヌ政策を政府と有識者と一緒になって進めているアイヌの人々は、どこへ辿り着こうというヴィジョンをもっているのだろうか。


★2014-07-11:アイヌ政策推進会議(第6回)議事概要

 標記の文書が公開されている。わずか30分間の褒め合いの儀式だ。⇒http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/dai6/gijigaiyou.pdf

 これは、加藤理事長の発言と思われるが、「深い眠り」についていたのはご自分のことではなく、「アイヌ民族」だったらしい! 「慰霊」もアイヌ式でとは言わずに、「日本国民と同じような慰霊をしてあげたい」のだそうだ。

 菅官房長官には、昨年北海道で初めて会議を開催されたことやこれまでの普遍的な人権尊重などに取り組んでいただいており、アイヌの代表として大きな喜びと勇気をいただいたと思っておりますし、まさにアイヌ民族が深い眠りから覚めた思いでおります。
 昨年もお願いしたところですが、アイヌの生活や教育のこと、これらを含めた立法措置のこと、そして大学が保管しているアイヌの遺骨については、まだ髪の毛が残っているものも水で洗って墓地から持っていったとかそういうものが1,636 体あるということで、これは悲しい話ですので、私としては一日も早く日本国民と同じような慰霊をしてあげたいと思っております。これらのことを重ねてお願いしたいと思います。

 高橋知事の発言のようだ。リレハンメル五輪は見なかったのだろうか。

 もう一点、お話し申し上げたいのは、2020 年オリンピック・パラリンピック東京大会におきましてオープニングセレモニーが行われるわけでありますが、そういった場でアイヌ文化を取り入れたセレモニーを行うなどアイヌ文化の魅力発信ということにぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 次は、阿部副理事長だ。

 昨年9月の会議以来、アイヌ政策が本当にすごいスピードで進められていることに心から感謝を申し上げます。
 私は1996年に国連の会議に初めて参加いたしました。この会議に参加するきっかけとなったのは、当時のウタリ協会の理事長などが橋本総理大臣、梶山官房長官にお会いいたしました際に、国連で検討されている先住民族の権利宣言が採択されたならば、しっかり実行していくというようなお話をいただいたことでありました。私はそれから毎年、ジュネーブやニューヨークでの会議に参加しております。そして、2007年9月に先住民族の権利宣言が国連総会で日本政府も賛成して採択され、その翌年には信じられないスピードで国会決議がなされました。先住民族の権利宣言を踏まえ、アイヌ政策をしっかり進めていこうという国会決議と官房長官の談話をいただきました。1984年にアイヌ民族アイヌ新法案を初めて当時のウタリ協会の総会で決議してから今年でちょうど30 年に当たりますが、このようなことを私たちの仲間の誰もが信じられないようなスピードで実行されていることに対して、心から感謝したいと思います。

 CERDへのレポートを読み上げればよかっただろうに。
 国連へ声明を出す時は、「感謝」が「憂慮」や「懸念」に変わるのだろうか。

 私が少しばかり空恐ろしく感じたのは、横田氏のこの発言部分である。

私の経験では、国連先住民族の会議は、たくさんの世界中の先住民族の代表が集まって来て、大変華やかで活発であります。この活力を 2020 年に日本に持ってきたいというのが私の希望でして、そのためには世界の先住民族との連携というものをぜひ念頭に置いて進めていただきたいと思います。そして、これをやろうとしますと、実はアイヌ文化の発信等も日本語だけでは十分ではなく、少なくとも英語でも進める体制を組んでいただきたいと思います。

 彼が何を考えているのか見える気がする。

 安藤氏の発言である。アメリカ大統領がよく使う、「自由と民主主義を世界に広める」という台詞を思い出してしまう。

日本は、全般的に人権はよく守られ先進国であると思いますが、必ずしもいいことばかりではありません。そういう意味でこのアイヌの問題を超えて、日本がもし民族共生のシンボルを目指すという印象を世界に与えることに成功したら、これは日本全体ひいては世界全体、特に少数者、そして民主主義にとって大きな貢献になると思います。そういう視点をぜひお願いしたいと思います。