AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

NHKと読売新聞のWCIP事前報道への疑問

 「先住民族に関する世界会議(WCIP)」についての記事が、次々に出たようである。こちら(http://blog.goo.ne.jp/ivelove/1)に現在までのものが収められている。私は、既に書いたように(http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/2014/09/20/214356)、NHKと読売新聞の事前の記事に胡散臭さを感じていたが、日本時間の午前4時以降に行われたWCIPの3分科会を、しかも同時に視聴することはできなかった。そのため、録画映像がアップロードされるのを待っている。今夜には出されるのではないかと期待しているのであるが、それを検証するまでもなく、北海道アイヌ協会副理事長の阿部氏の「演説」は行われなかったみたいである。(下線は、追加。)

MSN産経ニュース(2014.9.23 16:14)


 国連本部で22日、世界の先住民族や各国代表による「先住民族世界会議」の分科会が開かれた。日本から「北海道アイヌ協会」の阿部一司副理事長(67)が参加。発言の機会は逸したが「先住民族会議が国連総会の(首脳らが集まる)時期に2日間、開かれるのは画期的なことだ」と話した。
 阿部さんは議場で、先住民族に自決権などを幅広く認めた2007年の「国連先住民族権利宣言」を国内で実施に移すよう、日本政府に要請する発言を行う予定だったが、時間切れとなった
 日本政府代表団の一員として参加した阿部さんは「日本政府が理解を示し、一緒に参加してくれたことに非常に感動している。アイヌ民族にとっても初めてのことだ」と歓迎。「世界の先住民族と連帯し、私たちの子どもや孫が将来、アイヌだと自信を持てるようにしていきたい」と話した。(共同)

http://sankei.jp.msn.com/life/news/140923/trd14092316140007-n1.htm

読売新聞(2014年09月24日)

 【ニューヨーク=水野哲也】国連本部で22日、国連先住民族世界会議が始まり、日本の代表団として北海道アイヌ協会副理事長の阿部一司さん(67)らが出席した。同協会によると国連総会に同協会のメンバーが出席するのは初めて。議事進行の都合から阿部さんは予定していたスピーチをできなかったが、取材に対し「先住民族のために会議を開いてくれて感動している。出席できたのはアイヌ民族にとって、とても画期的なこと」と語った。

http://www.yomiuri.co.jp/hokkaido/news/20140924-OYTNT50004.html
(なお、この記事は、「日本からは・・・」の部分で、琉球からの代表団には触れず、完全に無視している。)

 太字部分が、前身である北海道ウタリ協会の切断を意味するのかは、今回は措いておこう。阿部氏は、一昨年の「先住民族問題に関する国連常設フォーラム(PFII)」でも「発言の機会」を逸して文書だけを預けて帰ったそうであるが、今回は、日本政府の代表団に入っていながら、なぜそのような事態になったのであろうか。そうすることが始めからの打ち合わせでなかったとしたら、日本政府がちゃんと事前調整を行っていなかった怠慢ではないか。

 3つの分科会のうち、時間的に出席可能なのは23日午後の第3分科会またはパネルディスカッションを入れれば、2つあった。22日に出来なければ、なぜ23日の分科会への声明を用意しておいて、そちらに出なかったのであろうか。第3分科会では、土地・領域・資源に関する権利や自決権についても語られていた。

 本当は、私は、この記事をここまでのことを書くつもりで書き始めたのではない。上に書いたように、NHKと読売新聞の事前の報道に疑問を持ち続けているからである。

 まず、アイヌ民族のこの種の出来事について、事前に全国ニュースで報道されることは極めて珍しいのである。過去の例をとっても、主要メディアの記事は、北海道で出て、運がよければ関東圏まで、全国的に出るということは、あまりなかった――ゆえに、金子市議の発言問題も「例外的」と言えるが、それはそれでよい。

 NHKは「アイヌ代表が国連で演説へ」、読売新聞は「アイヌ協会、国連演説へ…」と見出しをつけている。「演説」という言葉から視聴者や読者は、どのようなイメージをもつであろうか。北海道新聞の記事のタイトルは、「国連会議に出席へ」となっていた。

 私が入手した事前報道の記事は、これら3つだけであった。上掲の報道記事を集めているブログでも、その3つしかなかったと記憶している。

 敢えて公開版では出さなかったが、こちら(http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/2014/09/21/022405)に書いていた通り、今回のWCIPでは、いわゆる壇上での「演説」は、そもそも始めから行うことはできない段取りであった。可能な場と言えば、開会セッションと閉会セッションの全体会だけである。しかし、どちらも事前に周到な準備が行われていて、「飛び入り」のような「演説」を行うことは不可能であった。開会セッションの中継は、私も観たが、1993年のノーベル平和賞の受賞者であるリゴベルタ メンチュ女史が、いわば「飛び入り」で壇上に招かれて「演説」をした際ですら、議事進行から外れるため、議長は議場に諮って登壇を許可する決定を下していた。それが、先住民族を含む参加者への儀礼でもあったのだ。

 阿部氏の発言が可能な場は、分科会とパネルディカッションでしかなかった。しかし、そこは「演説」の場ではあり得ないことも、事前に分かっていたことである。

 以上を踏まえて、NHKと読売新聞は、何を根拠に、「演説」するなどという誇張したタイトルで報道したのであろうか。事前の取材も、入手した情報の確認もなく、どこかから流されてきた情報をそのまま垂れ流したのであろうか。もしそうであれば、その「どこか」はどこであろうか。

 そもそも、「参加」した2人がどのようにして続きを読む


P.S. 声明文を提出してきたと述べてもいるが、正式に受理されたのであろうか。仮に政府代表団の一部として公式声明となっているのであれば、外務省は、それを公表するべきである。正式に受理されたのなら、いずれ国連を通じてアクセス可能にもなるはずである。

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