AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

札幌医科大学イチャルパ

 今年も、去る10月8日に9回目となるイチャルパが執り行われたようである。今年のイチャルパについて札幌医科大学の「写真ニュース」では、次のように広報されている。

 本学では教育委員会などの関係機関からの要請により、道内各地の遺跡から出土したアイヌ民族の遺骨を、埋蔵文化財保護法のもとに大切に保管させていただいております。 このほかに工事等で発見された遺骨や、縄文時代をはじめとする先史時代の人骨も保管しております。これらの人骨の研究により、アイヌ民族縄文時代にさかのぼる日本の先住民であることが科学的に実証されています。
 慰霊祭「イチャルパ」は、平成18年10月に本学と北海道アイヌ協会が交わした覚書に基づき、本学に保管されているアイヌ民族の遺骨をご供養する儀式で、同年第1回目となる「札幌医科大学イチャルパ」を開催以降、毎年実施しています。
 今年度についても10月8日(水)、本学学内特設会場にて、北海道アイヌ協会主催により「札幌医科大学イチャルパ」を実施しました。
 当日は、多くの関係者が列席し、「カムイノミ」(神酒を神にささげる儀式)など、先祖や神へ祈りをささげるアイヌ民族の伝統的な儀式が行われました。
 その後、札幌医科大学記念ホールにおいて独立行政法人国立科学博物館人類研究部の篠田謙一先生による講演「古代人のDNA分析でわかること」が開催されました。
http://web.sapmed.ac.jp/jp/news/photo/03bqho00002616v6.html

 スピーチの使い回しが問題視されたことが最近あったが、このページの解説は、最終段落の講演者の肩書きと氏名、演題を除いて、2013年の同行事の広報内容をそのまま使用している。昨年のは、次の通り。

 その後、札幌医科大学記念ホールにおいて日本大学松戸歯学部解剖人類形態学講座 五十嵐 由里子先生による講演「古人骨からわかること-狩猟採集民の生活復元を目指して-」が開催されました。
http://web.sapmed.ac.jp/jp/news/photo/03bqho0000209khz.html

この五十嵐という研究者は、北海道アイヌ協会の「記念事業」でフロアから発言していた人のようである(http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-c835.html)。

 イチャルパで「慰霊」の儀式を行った直後に人骨研究推進のための講演が企画されている取組みは、まさに「慰霊と研究」の「モデルケース」のように見える。篠田氏の演題が「古人骨DNA」ではなく「古代人のDNA」となっているところに、今日の遺骨の取り扱い問題の争点と焦点をずらす意図が働いていないとは言えまい。

 この広報を読むだけでも幾つもの疑問が湧き出てくる。遺跡や工事現場から出土した遺骨が医科大学に運び込まれるのはなぜか。「大切に保管」と言いながらも、明らかに、遺骨は、出土した時点で既に研究対象物とみなされている。そのような目的で収容されている遺骨であれば、なぜアイヌ遺骨だけを対象に「慰霊祭」が執り行われているのか。「アイヌ民族縄文時代にさかのぼる日本の先住民であることが科学的に実証されて」いるのであれば、なぜこれ以上の遺骨研究が必要であり、なぜ、以下に出てくるような権利を基盤とするアイヌ先住民族政策がスムーズに進まないのか。あるいは、本当に「縄文時代にさかのぼる日本の先住民であることが科学的に実証され」ているのか。そしてまた、そのように考古学に関心を集中することは、アイヌ民族の権利承認にどのような意味合いをもっているのか。

 現在、収容している遺骨の数の大きさと遺骨返還請求訴訟とによって北海道大学に注目の焦点が集中しているが、同じく札幌に位置している札医大の遺骨取り扱いに関する取り組みは、上のような疑問が多々残っているにもかかわらず、北大とは対照的に、「モデルケース」とされている。

 札幌医科大学のイチャルパ、供養祭と言いますが、遺骨の返還、更にはDNAのレベルでのアイヌ古人骨による研究申し入れについての話し合いなど、取組は進めてきているところです。これらの取組は、不当な方法で収集されたアイヌの人骨の返還などに関わる先住民族の権利に関する国連宣言第12条の具体的な取組でもあると思っています。この取組の更なる推進と、東大や京大などの国内外の大学他に分散し、保管されているアイヌの人骨について、先住民族の先祖の尊厳回復と今後の研究、アイヌ文化、歴史の理解促進、啓発の意味合いを込めて、象徴的な施設を早急に国民の理解を得て国の責任のもとに設置していただければありがたいと思っています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainu/dai5/5siryou.pdf

 札幌医科大学アイヌ遺骨について、非常に興味深い浦幌町議会定例会の議事資料を読者から教えて戴いた。差間議員が道議会議員にでもなって(衆議院議員でもよいが)、こういう質問をどしどし行ってもらう方が、政府代表団に入って「画期的」とふれ回ってもらうより意義深いことだろうと思う。

〇差間議員 それでは、通告に従いまして、質問いたします。
 札幌医科大学に保管されているアイヌ人骨について、2番、北海道大学医学部に保管されているアイヌ人骨について。札幌医科大学に保存されている浦幌町内十勝太地区から発掘されたという人骨について、いつごろ、どんな場所で、どういう経緯で発掘されたのか。その人骨がいつ、どんな経過で札幌医科大学に移されたのか質問いたします。
 1880年、明治17年、東京帝国大学理学部の学生を中心に人類学会が設立され、当時参加していた解剖学を研究していた研究者とともに朝鮮人アイヌの頭骨、骨格を収集、研究者の研究論文によれば164体のアイヌ頭骨を資料としている。この研究は、その後北海道帝国大学医学部解剖学第2講座の研究者に引き継がれ、戦後北海道大学の医学部解剖学教室に引き継がれ、この間1,000体を超えるアイヌの人骨が発掘されております。これらの行為は、当然当時の旧刑法、明治13年布告、265条によっても刑事罰の対象であり、その後1934年、昭和9年、道庁令第83号はアイヌの墓地を暴き、遺骨を持ち去ることについて、古墳及び墳墓以外の場所であれば認められるという条件をつけてはおりますが、やはり北大に保管されているアイヌ人骨は明らかにアイヌ墓地から発掘されたものであり、当然刑事罰の対象になるものであります。この研究者及びその後の弟子たちによって発掘され、現在北大に保持されているアイヌ人骨は、その数も曖昧で、しかも頭骨以外の四肢骨、これも合わせると1,000体をはるかに超えることになります。戦後、人骨研究者の明らかなアイヌに対する差別的偏見に依存していた研究への世論の批判が高まった。和人の墓を暴くことは許されなくてもアイヌの墓を暴くことは許されるという倫理観は、到底認められないからであります。この間浦幌町で発掘されたアイヌ人骨は、現在63体の頭骨が北大医学部のアイヌ納骨堂に保管されております。浦幌町は、これらの北大医学部のアイヌ人骨発掘状況を
確認しておりましたか。アイヌ人骨保管状況をどう認識しておりますか。これについて質問いたします。
(略)
〇水澤町長 差間議員のご質問にお答えします。
 1点目の札幌医科大学に保管されているアイヌ人骨についてでありますが、いずれのご質問も札幌医科大学と町とのかかわりが起因とする内容と思われますが、そのことに関しては過去から今まで札幌医科大学とはかかわりがなく、したがいまして発掘の事実については一切承知しておりません。
 2点目の北海道大学医学部に保管されているアイヌ人骨については、北海道大学が保管しています浦幌町内で発掘された63体の遺骨が北海道大学構内にありますアイヌ納骨堂において保管され、毎年鎮魂の意を表し、社団法人北海道アイヌ協会の主催によりイチャルパがとり行われ、慰霊と供養がされていると伝え聞いておりますが、ご質問に関して北海道大学医学部と町においては発掘時から現在までかかわりがなく、アイヌ人骨発掘状況の確認及び保管状況の認識についてはございません。
 以上、差間議員への答弁といたします。
(略)
〇差間議員 このアイヌ人骨の発掘問題は、私を初め北海道、全国に住んでいるアイヌの一大問題として私どもは認識しております。札幌医大と北海道大学の人骨の保持状況については、私どもは全く違うものと認識しております。なぜならば、北海道大学に保持されております人骨については、その発掘状況は極めて人権的にも人間的にも問題のある行動として私たちは捉えております。これは、発掘当時地域の警察もそういうふうに認識していると聞いております。つまりこの北海道大学の研究者は、その当時警察に事情聴取を受けております。ところが、札幌医大に関しましては、私どもアイヌ協会のこの件の問い合わせにつきましてはっきりと答えております。1979年3月に浦幌町の町道拡幅工事の際出土いたし、浦幌町教育委員会より移譲を受けている、はっきりと返事しております。つまり札幌大学の遺骨の保持に関しましては、私どもアイヌを初め、こちらのほうから札幌医大に頼んだというふうに私たちは認識しております。再度申し上げますが、北海道大学に関しましては一種盗掘、そのように私たちは認識しております。再度お尋ねいたします。札幌医大に関しましても浦幌町として一切確認もしない、またこれについては知らなかったというのでしょうか。
〇田村議長 答弁願います。
〇差間議員 済みません。この件に関しまして2007年、浦幌町教育委員会と札幌医大の間で手紙のやりとりがしてございます。発掘状況は、さすが1979年ですから、今から勘定しますと33年、ところが2007年のことになりますと、これは5年ほど前です。ですから、これに関しても一切確認していないかどうか、もう一度質問いたします。
〇田村議長 答弁調整のために休憩いたします。
 午後 3時41分 休憩
 午後 3時43分 再開
〇田村議長 休憩を解き会議を開きます。
 答弁願います。
 教育長。
〇久門教育長 ただいまのご質問でありますが、2007年に町教委と何かの確認といいますか、連絡があるというお話でございますが、私は初耳でございます。それと、この質問に関しまして関係者、部署も前任者ともども話は聞いておりますけれども、こういった事実というものは全く私どもは聞いておりませんし、なかったというふうに聞いております。
 以上でございます。
〇田村議長 再々質問を許します。
〇差間議員 先ほども申し上げましたが、この問題に関しましては私どもアイヌを取り巻く多数の問題の一つと捉えておりました。でも、調べれば調べるほどこれこそがアイヌの根本にかかわる大事な問題だと私は認識するようになりました。もちろん世界でも国連を初め先住民の権利宣言を成立させました。これは、日本も賛成しております。私が今浦幌町に訴えますことは、浦幌町に住むアイヌとして私どもアイヌの努力、アイヌの歩みをお助けいただきたいのです。いろいろな面でアイヌ協会浦幌支部に援助をいただいております。札大のイチャルパ、北大のイチャルパ初め、町からも支援をいただいてございます。これは、私どもアイヌ協会浦幌支部として本当に感謝しております。それにつきまして今後8月に開かれる北大のイチャルパ、10月に開かれる札幌医大のイチャルパ、この件につきまして町理事者の皆さん初めこれからも参加していくという気持ちはあるかどうかご質問いたします。
〇田村議長 答弁願います。
 町長。
〇水澤町長 北大の盗掘については、新聞報道等で聞いているだけでありまして、また今一般裁判が行われているというふうに聞いているところであります。町として参加するのかどうかということでありますけれども、町としては盗掘についてはまさに人権の意味からも大変そういうことがあってはならないというふうに感じておりますけれども、ただこれは町が関与してやったものではありません。そういう意味では、本来であれば民事としてとり行われる分だろうというふうに思いますけれども、私どもとしては町行政としてそこに参加するというふうには今のところ考えていないということをお答えしておきたいと思います。
〇差間議員 終わります。
〇田村議長 これで差間正樹議員の一般質問を終わります。


平成24年第4回浦幌町議会定例会(第2号)
平成24年12月9日(日曜日)
https://www.urahoro.jp/soshiki_shigoto/gikaijimukyoku/kaigiroku/files/2013-0205-1155-a.pdf、26-28ページ

 ところで、かつてチカソー族の話を「地価相続」と勘違いしたアメリカ研究者の笑い話を書いたことがあるが、2020年までに「象徴空間」を建設すると閣議決定された今、白老の予定地周辺の地価は上昇中なのだろうか。そろそろ投機目当てに土地を買い漁る動きが出ていてもおかしくないと思うのだが、実際はどうなのだろう。株のインサイダー取引のようなことはないだろうな。