AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

「破壊検査」vs.「試料の抽出行為」

 標題は、盗掘遺骨のDNA鑑定に関する北海道アイヌ協会による説明にある言葉である。

破壊検査は試料の抽出行為と置きかえるべきであり、これが実態に即している用語であると考える。

http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/2015/03/19/003434

 1つ前の記事で、ズィマーマンはアメリカ先住民族への遺骨返還に関して「世界観」の問題と言及しているが、北海道アイヌ協会の代表たちは、その違いを超越する「高邁な考え」に基づいて遺骨のDNA鑑定を許可したいようである。それはそれとして、一つ確認しておきたいことがある。

 まだ1年と経たない昨年の4月18日に開かれた第16回政策推進作業部会では、東京歯科大学名誉教授の水口清氏を招いて「遺骨の返還に係るDNA鑑定について[の]説明」を聴いている。これについては5月14日の記事で取り上げておいたが、現在、メインブログは限定公開にしているため、その記事の一部を下に抜粋して再掲しておきたい。太字部分は、今回、強調のために新たに太字にした。

<転載開始>
 「議事概要」の2ページ下方から6ページまでの「東京歯科大学名誉教授水口清氏より遺骨の返還に係るDNA鑑定について説明」と「主な質疑等」は、一読の価値あり。

 いくつか引用しておきたい箇所もあるが、それぞれ文書で読んで戴くことにして、結びの部分から1つだけ引用しておく。

アイヌの遺骨についてDNA鑑定の可能性を探るということに関しては、アイヌの方々がどこまで希望されているのか、そのために血縁関係等の情報をどこまで提供いただけるかということが重要であり、こうした情報がないとDNA鑑定の検討も進めることができないのではないか。
 また、鑑定を行う側としても、通り一遍のやり方で終わらせるのではなく、いろいろな方法を試行錯誤してきた結果が今につながっており、これは返還できた場合の遺族の喜びが鑑定人にとっての大きな糧となっていることも申し添えておきたい。

 特に前段部分は、何がなんでも「人骨」を研究対象として「アイヌ民族の苦難の歴史」を解明するなどと言っている人類学者の態度とは大きく異なるのではないか。やはりそこには遺骨(研究)を狙う欲というものがないからのように思える。

 説明を読みながら、次のような疑問が浮かんでいた。墓を掘り返して、アイヌの遺骨と思って持ち帰っていたのが、実は和人の遺骨であったということがあるかもしれない。また、血縁関係になくとも、遺族が養子でかつアイヌとして受け入れられて生活していた人の育ての親の遺骨の場合には、DNA鑑定では特定不能となって返還されないことになるのではないか。前者の疑問については、「主な質疑等」の中でも、「これは全部アイヌの遺骨だろうと信じているものが、アイヌではないものが入っている可能性もある」という発言で出されている。(もしこういうことが事実として出てきたら、やっと和人の無関心は少し変化するのだろうか。)

 「主な質疑等」の中から、あと2つ引用しておこう。

今回対象となる遺骨は、どのぐらいの大きさなのかという点がある。人が触っている可能性があれば、遺骨の表面を削るぐらいでは簡単に遺骨のDNAが採取できないので、大きい骨であることが必要。ただし、先ほども申し上げたように骨を用いて鑑定するのは削り方ひとつとっても細心の注意が必要であり、複数人で多検体の結果を検討する際にも統一した前提を整えるのが難しいため、かなり大変である。

壊さない方法もあるが、話しを伺っている範囲で推測すると、アイヌの遺骨の場合は、それではきっと足りないだろうと思う。

 遺骨の返還をDNA鑑定に頼る難しさが浮き彫りにされている発言でもあるが、これまでの会議で「人骨研究者」らしきメンバーが事も無げに「慰霊と研究」の両立の可能性を主張していた際の発言とは異なる印象を受けるのだが、どうであろう。
 この説明を聞いて、北海道アイヌ協会の理事長や副理事長たちは、遺骨を「研究」に差し出すという決定を再検討するためにリーダーシップを発揮するつもりはないのだろうか。

<転載終了>


P.S. 冒頭の引用文の直前では、「個人が特定されている遺骨については、[DNA検査に]遺族の同意を得ることが前提である」と述べられてもいる。驚いたことに、「個人が特定されている遺骨」は返還というのが方針として決まったのではないのか!? そのような遺骨さえ「破壊検査」の対象になると考えているのだろうか。