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AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

強制移住と土地・資源(4)

 「現在、過去、未来」という言葉は、これまでに2回ほどこのブログで使った気がするが、今日は「現在、過去、現在完了」について、特に、現在完了について書く。
 英語の現在完了形は、今は中学・高校のどのレベルで学ぶことになっているのだろう。先に投稿した「第28条」で「面白い」と書いたのは、同条の"the lands, territories and resources which they have traditionally owned or otherwise occupied or used"という部分に対する訳である。この文言は、基本的には、1993年の「先住民に関する国連作業部会(UNWGIP)」で採択された宣言草案で固まっており、その訳者も、そこの現在完了形を「してきた」と訳していた。
 WGIPおよび1994年の人権小委員会草案の後、人権理事会草案を北海道ウタリ協会が、そして、国連総会で採択された宣言を市民外交センター(SGC)が翻訳した際にクレジットが付けられているように、1993/1994年の草案訳が影響したという可能性はあるが、翻訳はそれぞれの団体の尽力の成果である。しかし、私が「面白い」と思ったのは、北大のアイヌ・先住民研究センターも内閣官房も、それぞれ原文から独自に翻訳したと見受けられるのであるが、この現在完了形の部分の解釈はSGC訳(あるいは1993/94草案訳)とまったく同じになっていることである。第28条に限っては、いま私がその部分を訳すとしたら、「してきた」を「していた」とするかもしれない。ただ、「していた」で他の条項も統一すると、それはまた、誤解を生じさせるかもしれない。この"have"1語が入っていることがもたらす複雑さの背景について、少し述べておきたい。(うまく説明できるかどうか心もとないが、これをファイナルとするのではなく、後で書き換える権利を保留しておくこととする。)
 現在完了時制とは、現在の「ある時を基準にして、動作の完了・結果、経験、動作や状態の継続を表すもの」である。「してきた」というのは、日本語の感覚では、現在に至るまでその動作の状態が継続しているという意味に受け取れるであろうが、過去と現在の「境」でその状態が途切れた場合、すなわち「経験」をも含み得るであろう。実際、今もなおその動作が継続している場合は、現在完了進行形が用いられているであろう。すなわち、現在の条文の文言では、過去に「土地」を所有、占有、使用のどれかの行為を行っていたが現在はしていない場合と、それらの行為のどれかを過去から現在までしている場合の両方を意味し得る(少なくとも、先住民族の宣言起草参加者たちは、そのように解釈している)。特に第28条は「土地」の原状回復を含む救済に関する条項であり、「没収、収奪、占有、使用され、または損害を与えられた」(SGC訳)「土地」という文言によって、現在は先住民族が所有、占有、あるいは使用をしていないと解釈するのが一般的であろう。しかしまた、占有と使用に関してはある程度客観的に語ることができようが、所有に関しては、例えば、先住民族側が今も所有していると主張されるブラックヒルズの場合のように、認識の問題でもあり得る。
 このような可能性をあれこれと考慮すると、それを条文の1文に、そしてそれを翻訳の1文に収めるのは、ほとんど不可能のようにも思えてくるが、1993/94年草案の翻訳者も、あれこれの可能性を考慮して「してきた」としたのではないだろうか。
 少し頭が朦朧としてきたので、今夜はここまでにして、後日にもう少し続ける(もしくは書き直す)ことにする。

P.S.(01.27):「続く」とか「続ける」と書くと、それを待ってからという反応になって何の反応も出てこないのか、あるいは、日本ハムの「開拓者の大地」が話題となっていた頃、ある人のフェイスブックアイヌ文化と言語に詳しい方が「アイヌの土地だから返せっていう運動は見たことない」という投稿をしているのを目にしたことがあるが、そのせいもあってか、このテーマで書き続けることに臍の辺りにあまり力が入らないというのが正直なところでもある。