AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

強制移住と土地・資源(6)

第25条
Indigenous peoples have the right to maintain and strengthen their distinctive spiritual relationship with their traditionally owned or otherwise occupied and used lands, territories, waters and coastal seas and other resources and to uphold their responsibilities to future generations in this regard.
先住民族は、自己が伝統的に所有し、又は他の方法で占有し、及び使用してきた土地、領域、水域、沿岸海域その他資源に対するその独自の精神的関係を維持し、及び強化する権利並びにこの点について将来の世代に対する自己の責任を果たす権利を有する。

 条文の翻訳は、敢えて内閣官房訳を使用する。前回(5)述べたように、第25条は、有識者懇談会の第1回会合資料では「参照」されていない。その理由は、わからない。しかし、第3回会合の資料に「これまでの懇談会で出された主な意見・要望等」がまとめられている。その「主な意見・要望等」の項目の2番目に「精神的生活」があり、「遺骨の返還・慰霊」などとともに、「文化振興等の基盤としての土地・資源の利用等」として、次のようにわずか3行で述べられた後に、「国連宣言の主な関連条項」として、「第25 条(土地等に対する独自の精神的関係の維持等)」が他の5つの条項とともに列挙されている。

自然との関わり合いが深い広義のアイヌ文化の実践には、動植物の採取などを含む公有地等の利活用、一般の権利侵害を伴わない範囲での漁業権の一部付与自然の中でアイヌ文化を伝承等できる環境づくりなどが必要。

しかし、この第3回会合の資料では、第26条以降の土地条項への言及はなく、有識者懇談会の「政策立案に当たっての基本的な観点と姿勢」の「姿勢」の中で、このように述べられていただけである。

(4) 歴史的、社会的な因果関係を多くはらんだ問題は、これまでの理解の枠組みや慣習、現状の社会システムとぶつかり合うなどの障壁が立ちはだかる。例えば、アイヌの文化や歴史の公教育への導入、知的財産、公有地の土地資源の利活用、漁業権、雇用の確保、さらには土地・資源の賠償補償、参政権など多岐にわたる。
 アイヌの人々からの具体的な要望を踏まえ、国連宣言も参照しつつ、政策課題を短期・中期・長期に整理し、取り組み手順を定めていくことが必要。

 「資料2」の「諸外国の主な先住民族政策」の中で「土地・資源」に関する項目もあるが、参考にされている「諸外国」6国(アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドフィンランド、台湾)のうち前から4カ国は「権利宣言」採択時に反対した国である上、「土地・資源」に関して参考に挙げられているのは、その4国だけである。
 これから後、第10回会合で『報告書』が提示されて今日の「アイヌ政策」の枠組みが出来上がっている。『報告書』には第25条が参照されている形跡は随所に見受けられるが、しかし、それをアイヌ民族の権利として承認すると明言している箇所はない。「漁業権の一部付与」の文言さえない。権利承認に関する限り、「満額回答」どころか、ゼロ回答である。この点を含めて、『報告書』で提言されている政策については、ここで取り上げると、どうしても本シリーズの趣旨から逸れて行きそうなので別途取り上げることにして、もう少し「権利宣言」の土地権条項を先に見ておきたい。(が、予定と違って脇道に逸れたために、今夜はもうくたびれた!)
 くたびれたけれど、第25条に関して1点だけ私が「面白い」と思ったことを指摘しておくと、冒頭の条文の英文と政府訳の下線部を比較してもらうと分かることであるが、先住民族の特有の精神的関係の対象である「土地」(前に書いたように、領域や資源なども含めている)への言及箇所には時制が出ていないのである。

 <まだ続きそうだな。>