AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

強制移住と土地・資源(8)―第29条・第30条

 第29条に進む前に1つ指摘しておかねばならないのは、第1回有識者懇談会で配布された資料の「宣言に盛り込まれている国に対する義務等の例」には、前回取り上げて「怠慢」だと指摘した第27条の「義務」も含まれていない。(第3回の資料にもないということは、その時点までにそれが論じられたことはないということでもある。)

 第29条は、現在、北海道アイヌ協会が森林を管理する製紙会社との間で従事しているらしい交渉とも関係していると思われる(cf. 「土地又は領域及び資源の生産能力の保全及び保護」)。「交渉」内容についてはまったく把握していないから言及は差し控えるが、本条項からも分かるように、この課題は単に私企業との交渉だけの問題ではないと考える。

第29条
Indigenous peoples have the right to the conservation and protection of the environment and the productive capacity of their lands or territories and resources. States shall establish and implement assistance programmes for indigenous peoples for such conservation and protection, without discrimination.
States shall take effective measures to ensure that no storage or disposal of hazardous materials shall take place in the lands or territories of indigenous peoples without their free, prior and informed consent.
3. States shall also take effective measures to ensure, as needed, that programmes for monitoring, maintaining and restoring the health of indigenous peoples, as developed and implemented by the peoples affected by such materials, are duly implemented.

1.先住民族は、環境並びに自己の土地又は領域及び資源の生産能力保全及び保護についての権利を有する。国は、先住民族のためのこのような保全及び保護に関する支援計画を差別なく策定し、及び実施する。
2.国は、有害物質の貯蔵又は処分が、先住民族の自由な、事前の、かつ、情報に基づく同意なしに、当該先住民族の土地又は領域において行われないことを確保するため、効果的な措置をとる。
3.また、国は、必要な場合には、先住民族の健康を監視し、維持し、及び回復させるための計画であって、有害物質の影響を受けた先住民族によって策定され、及び実施されるものが適切に実施されることを確保するため、効果的な措置をとる。

 北大訳の1項も、次のようになっている。

1.先住民族は、環境並びに自己の土地又は領域及び資源の生産力保全及び保護に対する権利を有する。国は、差別することなく、この保全及び保護のために先住民族を支援する計画を立案し、及び実施しなければならない。

 しかし、これらの訳では「環境」が宙に浮いている。厳密には、"environment"の後に"of"があればはっきりするが、このままでも、ここで意図されていることは「土地」の環境である。SGC訳を参照すると、次のようになっている。

先住民族は、自らの土地、領域および資源の環境ならびに生産能力保全および保護に対する権利を有する。国家は、そのような保全および保護のための先住民族のための支援計画を差別なく作成し実行する。

 因みに、1993/1994年草案では「土地」の「総合的環境と生産能力の保全復元および保護」となっていたことが注目される。

 第30条は、特に琉球・沖縄にとって大事な条項であるが、北海道についても無関係ではない。しかし、ここでは読者に条文を参照して戴くだけにして、先へ進むことにする。
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第30条
Military activities shall not take place in the lands or territories of indigenous peoples, unless justified by a relevant public interest or otherwise freely agreed with or requested by the indigenous peoples concerned.
2. States shall undertake effective consultations with the indigenous peoples concerned, through appropriate procedures and in particular through their representative institutions, prior to using their lands or territories for military activities.

1.関連する公共の利益により正当化される場合又は関係する先住民族が自由に同意し、若しくは要請する場合を除くほか、先住民族の土地又は領域において軍事上の活動を行ってはならない。
2.国は、軍事上の活動のために先住民族の土地又は領域を使用する前に、適当な手続、特に当該先住民族の代表機関を通じて、当該先住民族と効果的な協議を行う。