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AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

「アイヌ遺骨等の集約・保管・返還の在り方について」(続)

 昨夜の続きをと思っていたのだが、今日はまだ一息つく間もない。やっとパソコンに向かったところである。
 実は、昨日昼間の天気予報で雪のマークが出ていたので、「なごり雪」を埋め込もうと思っていたところ、夜には雨の予報に変わっていたので止めていた。今日は、出かける時から横殴りの雪になっていて、帰りにもまだ降っていた。この周辺だけは、1月下旬の大寒波の時より降っている! 例年なら3月の1日。大体、3月の初旬に名残り雪が降り、イルカの歌を思い出すのである。

「イルカ なごり雪」posted by kimuko at https://youtu.be/2NFTkyXr0eU

 北海道では名残り雪どころの話ではなさそうだけど、明日あると聞いている会合は、大丈夫なのかな。

 日付け変わって昨日の朝日新聞小川隆吉さんと瀧澤正さんの本の紹介記事が出ているのを読者から知らせて戴いた。まだの方は、そちらを先にどうぞ。

 昨夜の続きは、後ほど。

P.S.: 文中、下線や太字は、私の追加であり、<青字>は、私の感想である。

 「資料1-1」の2ページには「アイヌ遺骨等の集約・保管・返還の在り方について」があるが、政策推進作業部会報告の対応部分は、次の通りである。

3.アイヌ遺骨等の集約・保管・返還の在り方について
 アイヌ遺骨等の適切な管理を実施するとともに、アイヌの人々による尊厳ある慰霊の実現を図るため、できるだけ早く返還の目途が立たないアイヌ遺骨等を集約することが重要であり、政府においては、以下に示す「アイヌ遺骨等の集約・保管・返還の在り方」及び今後の当作業部会における議論を踏まえ、アイヌ遺骨等の集約・保管・返還の具体的な手続等に関する検討を滞りなく進めるべきである。有識者懇談会で使われていた「返還」とは異なり、やっとその語の真の意味で「返還」が用いられるようになった。Cf. 「消えた「返還」の二文字:アイヌ政策有識者懇談会の議事資料より」
 一方で、アイヌ遺骨等の取扱いに関しては、事柄の性質上、アイヌの人々をはじめ関係者の中に様々な意見があるため、これらを丁寧に汲み取りつつ、関係者間で意思の疎通を図ることも重要であり、十分な時間をかけて慎重な議論を進めていくことも必要であると考える。<ここでいう「関係者」とは、明示されていないが、「人骨」研究者も含意されていることは間違いなさそうである。>


<ここ以降の原文は、枠囲みとなっている。>
アイヌ遺骨等の集約・保管・返還の在り方>

(1) 集約の在り方
① 集約の範囲は、現在大学が保管するアイヌ遺骨等を基本とし、特に副葬品の範囲については、平成25年6月にアイヌ政策推進会議が了承した基本的な考え方に従うものとする。<「等」を好む官僚の作文には珍しく、「大学等」となっていない。>
 今後発掘されるアイヌ遺骨等については、遺失物法、文化財保護法等の関係法令を遵守することを基本とし、これらを集約の対象とする必要性については、アイヌ遺骨等の集約の背景及び意義(平成26年6月政策推進作業部会報告「「民族共生の象徴となる空間」の整備及び管理手法について」参考5)に照らし合わせて判断することとする。
 なお、博物館におけるアイヌ遺骨等の保管状況の調査については、その有無について現在文部科学省で調査中である。博物館が保管していた場合には、調査結果を踏まえて、その取扱いについて議論することとする。


② 象徴空間基本方針において、アイヌ遺骨等の集約は、「関係者の理解及び協力の下で」行うこととされていることを踏まえ、大学が任意でアイヌ遺骨等を提出するよう協力を求めることとする。なお、大学が提出して象徴空間で保管することとなった後においても、返還の対象となり得ることや研究へ寄与する可能性があることに留意して、集約後における大学のアイヌ遺骨等への関わり方を整理する必要がある
 このため、関係する諸論点を整理するとともに、実際の集約に当たっては、大学が参考とすべき集約のためのガイドライン及び当事者の関係性等を定めた契約の標準約款案を作成することが必要である。


(2) 保管の在り方
① 集約されるアイヌ遺骨は、今後の議論の方向性に応じて、返還の対象となり得ることや研究へ寄与する可能性があることに留意し、短期間で著しく現状を損なうことがないように、最適な温湿度等が保たれた状態で保管することが必要である。<研究の可能性が消えたわけではなく、ゆえに、この保管条件は研究のためという「配慮」もある。>


② 集約される副葬品については、平成25年6月にアイヌ政策推進会議が了承した基本的な考え方を踏まえ、遺骨と同環境における保管でもって差し支えのない副葬品については、原則として、遺骨と同室において保管する。但し、遺骨と同環境において保管することにより短期間で著しく現状を損なう可能性のある副葬品や形状等から遺骨と同室での保管が困難であるものなどについては、別室において保管することも含めて、取扱いを検討する。


アイヌ遺骨等の取扱いに際して、アイヌの尊厳に配慮することは極めて重要であり、また、アイヌ遺骨等の状態を維持するためには、温湿度等の安定的な管理などが必要であることから、アイヌ遺骨等を保管する施設内への立ち入りは、原則としてアイヌ遺骨等の管理のために必要最低限なものに限るものとする。<これが唯一、規制的に聞こえるが、どのような例外が想定されているのだろうか。>


④ 象徴空間に整備するアイヌ遺骨等の保管のための施設については、上記①から③を踏まえた施設にするとともに、かつて、アイヌの人々の間では土葬が一般的であったことに鑑み、原状回復を想起できるような外観とする。また、アイヌ遺骨等の厳重な保管のため、施設の災害への耐久性を確保するとともにアイヌ遺骨等を盗難等の被害から防止するための措置をとる。<後述。>


(3) 慰霊の在り方
 慰霊については、憲法が要求する国家の宗教的中立性に鑑みる必要があるとともに、象徴空間基本方針においても「アイヌの人々による尊厳ある慰霊の実現を図る」とされていることを踏まえれば、アイヌの人々の自主性に委ねられるべきものであり、その内容はアイヌの人々の中でよく議論される必要がある。<枠を嵌めた上で、「自主性に委ね」るから「よく議論」せよとは!>
 なお、(公社)北海道アイヌ協会においては、関連して参考資料15<どれのことか不明>を総会決議しており、その取扱いも含めて、より一層の議論がされる必要がある。


(4) 調査及び研究の在り方
① 個人又は個体が特定されていないアイヌ遺骨については、可能な限りそれらが特定されることが重要である。そのため、DNA鑑定等科学的手法による特定の可能性や実効性等が現在文部科学省において検討されており、その結果を踏まえて、特定のための調査の内容や調査に係る役割分担に関する議論を深める必要がある。<今後も目が離せない。>

アイヌ遺骨等を用いた調査・研究を行うことは、アイヌの人々のアイデンティティの基盤となるアイヌの歴史を解明することに資するものであることから、意義があることと認められる。<上で「可能性」と記したが、まったく態度は変えられていない。>
 今後、仮にアイヌ遺骨等を用いた調査・研究が行われる場合には、アイヌの人々の心情に十分配慮することが重要であり、調査・研究が可能となる条件について、アイヌの人々と関連研究者や当該研究者が所属する学協会が、アイヌの人々の意向に十分配慮し、協働作業を通じて検討することが求められる。調査・研究の在り方については、その検討結果を踏まえることが必要である。


(5) 返還の在り方<この項目は、上の(4)の前に来るべきではないか?>
 平成25年にアイヌ政策推進会議が了承した基本的な考え方に従い、まずは祭祀承継者たる個人への返還を基本とする。
 しかし、平成26 年秋頃<珍しく曖昧。>内閣官房が聴取した地域のアイヌの人々の意見の中には、出土した地域のアイヌ関係団体等へアイヌ遺骨等を引き渡すこと(以下「地域返還」という。)<コタン返還」となぜ言わない?>を希望する声も聞かれることから、地域返還の在り方についての検討を引き続き進める必要がある。
 地域返還については、その受け皿となる「地域」の当事者適格性に関する論点(地域返還の受け皿となる者をどのように特定すべきか、受け皿となる者がどのような受入体制を有するべきか、受け皿となる者にアイヌ遺骨等が引き渡されることについての地域内のコンセンサスをどのように形成すべきかなどの論点)を整理した上で制度設計を進める必要がある。このため、地域返還に係る具体的な制度設計及び役割分担について検討を進めるとともに、実際の地域返還に当たっては、地域返還のためのガイドライン及びアイヌ遺骨等の引き渡しに係る当事者間の契約の標準約款案を作成することが必要である。
 地域返還後に、祭祀承継者を名乗る個人や、他のアイヌ関係団体との間でアイヌ遺骨等の帰属をめぐって争いが生じた場合は、当事者間の解決に委ねざるを得ないが、地域返還の対象となり得るアイヌ遺骨等に係る情報や地域返還の手続等の周知の在り方、地域における合意形成の在り方などの地域返還に係る具体的な制度設計を行うに当たっては、争いが生じるリスクをできる限り減らすよう最大限配慮することが求められる。
(8-11ページ)

 「まず最初に、常本作業部会長はじめ、作業部会の皆様の御尽力に感謝したいと思います。ざっと目を通したのですがすばらしい報告書になっていると思います。これを確実に工程表に従って実施していただきたいというのが強い希望です。」というのが、例の「世界先住民族祭り」を提案しているY氏の歓迎の弁である(「議事概要」6ページ)。確かに、さまざまな考えられ得る難題を整理していると言えよう。それゆえに、これを読むと、2020年までには到底解決できそうにない難題であることが理解できよう。それを無理に2020年までに片付けようとすれば、ますます「テグス」が絡まってしまうであろう。

 文中にも感想を入れたが、報告では、「一方で、関係者に様々な意見があるため、慎重な議論も必要」、そして、また「アイヌの人々の自主性に委ねられるべき」とも言いながら、「できるだけ早くアイヌ遺骨等を集約して適切に保管し、アイヌの人々による尊厳ある慰霊の実現を図る」(「資料1-1」の「総論」)と、これまで長期に放り出していたにもかかわらず、事を急いている。しかし、課題は「短期・中期」でも「解決」しないであろう。

 先に、第7回アイヌ政策推進会議のことで書き残したことがあると書いたのは、次のことである。「集約の在り方」に関して、「資料1-1」には「大学が任意でアイヌ遺骨等を提出するよう協力を求める。→集約ガイドライン、契約の標準約款案を作成」と要約されている。北海道アイヌ協会が人種化されたアイデンティの規定を求める限り、「人骨」研究者との「利益の一致」から、遺骨の分子/自然人類学的研究への賛同――これが文中の「参考資料15」なのだろうか――を撤回はしないのだろうと思われるが、むしろ文部科学省や「有識者」の一部の方がそれに慎重なのではないかと推測する。「異例施設」への集約に反対している人々は、過去の盗掘や差別的な研究に対する謝罪や賠償をうやむやにしたままの「集約」には強く反対している。そういう状況を踏まえた作業部会報告は、各大学に提出を「任意」とすることで、責任と判断を押し付けた形になっている。また一方で、「任意」の提出は、「人骨」研究者たちの当面の主張を反映しているのではないかとも考えられ得る。「異例施設」に遺骨を集約した後に自分たちが行いたい研究が認められないとなれば、会議や集会などでのこれまでの発言から推せば、「人骨」研究者と過去の「大御所」たちの弟子たちは、大学の遺骨を移動させまいとするのではないか。文部科学省で内密に検討されている課題の中に入っているのかもしれないが、作業部会報告は、現在の場所での研究に対して何ら規制的なことを述べていない。
 つまり、アイヌ政策推進会議では、アイヌ側は、これまで何年間もの時間をかけながら、アイヌの関係者が遺骨を保管している大学の実地検分を行うこともできず、各大学が条件が気に入らなければ返されず、「異例施設」に移された後もアイヌの管理権限はなく、そして、今ある場所での遺骨に対しても何の権限も獲得できていないというふうにまとめられはしないだろうか。報告書に「ざっと目を通した」だけで務まるのだから、政策推進会議の委員というのも楽で結構なものである。

<もう少し続く。>

P.S. #2
 本文に「後述」と入れておいた「象徴空間に整備する遺骨等の保管施設は、(略)かつてアイヌの人々の間で土葬が一般的だったことに鑑み、原状回復を想起できるような外観とする」という文についてである。これは、政策推進作業部会で、私の記憶が正しければ、加藤理事長ではないかと思われる発言者が述べていたことを反映していると思われるが、「原状回復」を要求できない今の北海道アイヌ協会の弱い立場に同情すべきなのかもしれないが、私がアイヌなら、これほどアイヌをバカにしていることもないと怒ることであろう。(アイヌでなくても怒っているのではあるが。)まさに、「象徴」の空間という概念を物語ってもいる。「原状回復」はできないから、ヴァーチャルなイメージをそれぞれが脳内に思い起こすことで我慢してねと言っているかのようである。多分、博物館の中で他にもたくさんのヴァーチャル イメージがスクリーンにでも映し出されるのであろう。

 標題にもある「集約・保管・返還」を何回も書いていると、どうして「利活用」が入れられてないのかと皮肉りたくもなる。そもそも、遺骨に関しても、「そちらの議論に引き込まれないようにするために」(第9回「アイヌ政策有識者懇談会」)、真の意味の「返還」が削られて行ったのではないのだろうか。