AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

第7回アイヌ政策推進会議

 標記会議で配布された資料や「議事概要」を見ながら前の2本を書いたついでに、いくつか雑記的に記しておきたいことがある。

 事務局から説明された「アイヌ政策の推進状況」と関連して、「アイヌ政策の概要(平成 28 年度予算概算要求額)について」という「資料2」がある。

★遺骨集約関連:
「『民族共生の象徴となる空間』の具体化」として総額5億4,500万円が計上されている中で、次の2つが挙がっている。他の項目もそうであるが、前にも指摘したことがあるように、「調査」や「調査研究」という、官僚が予算を獲りやすい項目ばかりが並んでいる。それぞれの細目、決算報告を見たいものである。

アイヌ遺骨等の保管施設の整備に向けた調査等 5,000万円 [新規] 【国土交通省
・施設整備予定地の調査・測量、土地造成設計等

○大学が保管するアイヌ遺骨の返還に向けた手続等に関する調査研究 900万円 [ 0.88 ] 【文部科学省
・大学が保管するアイヌ遺骨の返還に向けた手続等の在り方に係る調査研究、検討を実施。

 「自立化基金」が財源がないからできないのではないということが、これを見れば良く分かるであろう。

★政策関連会議費:
 4の「その他」には、このような2件がある。

アイヌ政策推進会議の開催等に係る経費 2,700万円[ 1.06 ]【内閣官房
アイヌ政策推進会議の開催等により、総合的・効果的なアイヌ政策を推進。

北海道大学におけるアイヌ・先住民との文化的共生に関する総合的・実践的研究
北海道大学において、アイヌ・先住民に関する総合的・実践的研究を実施。【文部科学省

 これは来年度予算であるが、今年度、アイヌ政策推進会議は、第7回の1回のみ、しかも記事にも書いたように、わずか40分の会議であった。これには政策推進作業部会の開催費も含まれているのであろうか。こちらは、わずか3回の開催である。(Cf. http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/meetings.html

北海道大学アイヌ・先住民研究センター:
 「参考資料3」は、「『アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会』報告(平成21年7月)で提言された政策等の推進状況について」である。その中に、それぞれ「研究の推進」および「啓発」として、次の2件がある。

アイヌ・先住民との文化的共生に関する総合的研究 【平成24年度~】
 北海道大学アイヌ・先住民研究センターにおける、アイヌ・先住民との文化的共生に関する総合的研究への支援 文部科学省

アイヌの人々が参画したシンポジウム、講演会等の開催 【継続】
アイヌ政策の実現に向けた国のアイヌ政策の推進状況等の報告、海外の先住民施策の紹介等 北海道大学

 後者には「アイヌ・先住民研究センター」とは書かれておらず、「『アイヌ民族の日(仮称)』の制定など、全国的に期間を集中して、先住民族としてのアイヌ民族に関する歴史や文化について国民の理解を深める広報活動や行事を実施」していれば、北大の他の学部その他の部署にも配分されているのかもしれないが、主たる金の行き先は同センターであろう。名前を出していないのは、同センターと部会長へのアイヌ総合政策室の事務方の「配慮」によるものであろう。
 昨年か一昨年にも書いたと思うが、北大への予算額は、今年も上記の「資料2」の中には明示されていない。なぜなのかは、私の知るところではない。文部科学省が予算を獲り、産官学共同体の下請け大学に流す。その予算の一部をさらに、自力で予算の取れないS私大に孫請けとして「下付」している構造について、前に書いたことがある。

 しかし、これは、あまりにも露骨だ。これから北大が――「センター」と書かれていないから、敢えてこう記す――開催する講演会やシンポジウムは、すべて国策の一環、「大本営発表」の流布の役割を負っているのだと見ることにする。だから、そこから流れ出るフェイスブックの情報やメディアへの情報も同じ性質をもつものとして勘ぐる慎重さも必要である――何となく作業部会報告の言葉遣いに感染してきた。

 「国のアイヌ政策の推進状況等の報告」というのは、本来、行政担当者が社会に向けて行うべきことではないのか。国の過去のアイヌ政策があるから、国の官僚が説明しても受け入れられ難い。だから、地元で絶大なる権威を誇る北大が行うというわけだ。
 しかし、諸会議に出ているアイヌ民族の「代表」たちは、同胞にどのように「報告」しているのだろうか。第7回有識者懇談会の「議事概要」に示されているような場合、持ち帰るべきことではなかったのだろうか。どのくらいの参加者がいるのか知らないが、海外からの講演者ばかりを招いているような北大の講演会やシンポジウムに出す金をアイヌ民族が集まって、アイヌ民族だけで課題を話し合う場を作るための資金として出す方が、よっぽど良いと思う。

 国策の一部となって、下請けをやっている研究機関、しかも人文社会科学系の研究機関では、大手を振って世間に「学問の独立」だなどと言えるのか。北大の中から、ほんの一部の例外的な研究者を除いて、現在の国策に批判が出てこないのも頷ける。国からいくら金を獲ってこれるかで選挙に当選していた/いる、特に田舎の利益誘導型の議員や配分できる資金を有する派閥のボスと子分的な権力関係が内部にあるのかどうかは知らないが、これまで「流し台のタンク(シンクタンク)」と揶揄してきた研究センターから政府の政策に異論や批判が出されることは期待できまい。積極的に宣伝役を買って出ている教官(←まさに「官」である)たちに比べれば、沈黙を守っている人たちはまだマシと言えるのだろうか?

内閣府調査

 この結果を受け、平成27年度、内閣官房において、「平等ではないと思う」理由や内容等、要因が分析できる調査項目を具体的に挙げた調査を実施することとなっている。調査結果が判明次第、当作業部会において、今後の対応方策を検討して参りたい。
政策推進作業部会報告、15ページ)

 この種の調査のあり方などに熟知しているはずのエリート官僚や「有識者」が、なぜ1回目の調査で「『平等ではないと思う』理由や内容等、要因が分析できる調査項目を具体的に挙げ」て問わなかったのだろう。調査も複数回に分けてインクリメンタルにやれば、その都度、予算を獲得できるということが手法として身についてしまっているのだろうか。
Cf. 2013-12-22 内閣府、初のアイヌ政策全国調査
2013-12-24 「アイヌ政策に関する世論調査」(続)

 さて、これで一休みすることにしよう。