AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

第24回政策推進作業部会:「アイドルを探せ」

 昨夜、「議事概要」の議題1の(1)「国民意識調査の結果を踏まえた対応の方向性について」の部分を読んでパソコンから離れたのだが、いくつか強く印象に残った箇所があった。それぞれ、後日に取り上げようと思うが――急いたところで、1ヶ月前に終わっている会議だし、次の議事概要の公開までまた1ヶ月ある――最初に、この会議らしい典型的な発言を取り上げておきたい。

○ この調査結果を踏まえた課題の対応策として、接触機会や理解を増やす政策は正攻法でしっかりと行っていかなくてはならないことだと思う。先ほど差別の問題があったが、阿寒温泉ではアイヌ民族のポジションは非常に高く、まりも祭りで全国のアイヌの方々が来たときに、「阿寒はみんな胸張って自分たちをアイヌと言うよね、私たちは地元に帰ったらアイヌと言えない」と、そういう会話をされている。なぜ阿寒のアイヌが胸を張れるかというと、自分たちの持っている才能を活かして、例えば北海道文化賞をとられた藤田先生のような、みんなが尊敬するスターがいる。そして、地域のなかでもそういう才能を活かした役割をしっかり果たしている。そういうところから敬意が生じ、そしてそれが尊敬にもつながっていく、そのような流れがあると思う。<注:まあ、ここまでは良しとして・・・。>本当に関心のある方はいろいろな資料を調べるし、旅に来てアイヌ民族の方と触れあっていただく、そういうアプローチもあると思うが、もっと広く国民に知らしめるような、端的に言ってしまえばスターを生み出していくような、そういう仕組みづくりを考えることが大事だと思う。アイヌのすばらしい歌手がいるので、紅白に特別枠のようなものを設けたりアイヌには自然と共生するような民話がたくさんあるので、日本昔話のなかにそういう民話を一コマ必ずいれるとか。芸術面ですごく才能のある民族の方たちだと思うので、先住民の先進国ではなされている、そういう才能を活かすための大学教育や、アイヌの芸術学をつくってもらいたいと思っている。(p. 3)

 この方たちは「有識者」なのでしょう? どういう理論に基づいてこういう提案をしているのだろうか。こういうところでは座長代理や官僚たちは、「科学的根拠がない」とは言わないのだろうか。言いたいことを言わせてガス抜きして、あとは役人たちが好きなように小手先の手続を整えるだけである。
 みんな亡くなってしまったけれど、マイケル ジャクソンやプリンス、ホイットニー ヒューストン、等々、素晴らしいタレント(才能)の持ち主のスターが生まれてきたけれど、アメリカで「黒人」差別が解消されてきたのか?「黒人」の大統領まで誕生したのに。まあ、どこかの国会議員が発言したように、奴隷の地位に置かれていた人々の子孫が大統領になったからといって、それで差別が解消されたわけではなかろう。
 沖縄出身のスターたちが何人・何組も紅白歌合戦に出場してきているが、それが琉球・沖縄に対する差別をどのように変えてきた? 今年以降の紅白歌合戦にOKIさんを出場させるキャンペーンでも、政策推進会議で展開しますか? 会議メンバーに秋元康氏でも招聘したらいかがかな? あるいは、かつての「スター誕生」よろしく、萩本欽一さんにでもお願いしますかな。
 実のところ、ある領域で頂点に上りつめた「スター」の中にアイヌ民族を出自とする人たちがいる。しかし、その人たちが自らの出自を公けにはせずに、日本社会に「同化」していくことで認められてきたという事例がある。スターを誕生させれば、こういう支配社会の意識や構造を変えることにつながるのだろうか。まあ、「50年、100年先」はどうなるか分からないけれど、もしそのような変化が起こっていれば、それは、アイヌのスターの数によって引き起こされたものではないだろう。
 そもそも、「扇の要」としての「民族共生の象徴空間」も、「イランカラプテ キャンペーン」も、テディベアにアイヌ民族衣装を着せたのも皆、「差別解消」のためではなかったの? 先にするべきアンケート調査を後手にして、ようやくそれらの「政策推進」に綻びが見え始めたということなのかな。さらに、「人骨」研究者たちは、盗掘遺骨を材料に「日本人の起源」を「歴史的に研究」することは、アイヌに対する差別の解消につながると主張していなかったか? 誰も、そういうことを指摘していないのが不思議でならない。

スター誕生:
"Barbra Streisand - Evergreen (Love Theme from A Star Is Born) [Live from Back to Brooklyn] posted by barbrastreisandVEVO at https://youtu.be/-5th39yLuJ0

シルヴィ・ヴァルタンアイドルを探せ」1965年ライヴ/ LA PLUS BELLE POUR ALLER DANSER la légende de SYLVIE VARTAN LIVE 1965」 posted by SYLVISSIMA YOUTUBE at https://youtu.be/JHu5iWfTADE


P.S.:もう一つ、この会議でよくある「光景」である。事務局からの説明の後に「主な質疑応答」がある。しかし、1文字分下がった○の「応答」があるのは、最初の1つだけ。しかも、昔の「日本型」学校で生徒が先生に向かって発表するかのようで、意見を述べる者同士の横のディスカッションが見られない。例えば、次の2つの連続した発言を参照して戴きたい。

○ 調査のことで、理解をするにはどうしたらいいのかと言われているが、大きく言っておくと、公的差別を受けたアイヌは、公的な施策で修正をしないとなおらないという事実がある。公的に差別を受けたのだから、公的にその差別を修正しないと元に戻らない。100年前も同じことを言っている。50年前となにも変わっていない。ということは、100年前ともなにも変わっていない。公的な差別のもとで行われた国の施策だったのだから、公的な施策を講ずることで解消できる。これに尽きる。
 調査はずっと行ってきている。北海道も。その結果がきちっと出ているにも関わらず、まだ調査を行うのか。これからは調査ではなく、どう国が責任持って進めるかだと思う。それを何もしないで、ただ調査をやっているが、そうではないと思う。もう調査は終わった。貧しいのはわかっている。教育もないのはわかっている。だったら、生活と教育をどうするかが、きちっと明らかになっている。調査という言葉はいらない。そうではなく進めることだと思う。
アイヌの人々、アイヌ文化への接触機会を増やすためにどうしたらいいか。例えばアイヌ文化振興・研究推進機構アイヌ工芸品展を、ひとつは北海道の会場で、もうひとつは北海道以外の会場で開催している。今年度は入間市博物館において開催し、入間市民を中心にかなりの数の来館者が来られた。しかもそのとき入間市博物館は市民に、家にある熊の彫刻などを含めて、そういったものを出品していただけないか呼びかけ、かなりの数が集まった。そういったアイヌ文化振興・研究推進機構の行っている仕事をもう少しきちんとした形で支援し、あるいは会場を増やすという方向もあるのではないかと思う。北海道博物館においても展覧会を開催しており、また新しい展示にも結構お客さんが入っている。そういったものをもっと他の地域で開催していけば、一般の人たちがアイヌ文化に触れる機会を作っていけるのではないかと考える。入間市博物館の例は非常に参考になる事例。来年度は茨城県立博物館で開催するので、そこでまた広報効果が出てくるのではないかと考える。
(p. 2)

 過去何度も見られたことであるが、小手先で対応できない問題が提起されると、会議の雰囲気は、無視するか、話題を変えるかのようで――もちろん現場にいないので、そういう印象でしかないのだが――誰も、下手なことを発言して記録に残されたくないと思うのだろうか。