AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

第24回政策推進作業部会:慰霊施設・アイヌ遺骨等(1/2)

 間に予定外の投稿が挟まってしまい、しかも連休に入っているので、しばらくは書かないでいるつもりだったのだが、下書きも溜まっていることゆえ、少しずつ出していこうと思う。(「なぞなぞ認証」を外していると、北海道知事の謝罪は不要という人も来ているのだろうな。)

 さて、標記作業部会の「議事概要」の中盤、「(2)慰霊施設に関する検討状況、及びアイヌ遺骨等に関する検討状況について」の感想を記しておきたい。まず、事務局と文部科学省からの説明である。(下線は追加。)

○ 慰霊施設の検討状況について説明する。
 施設整備のスケジュールについて、諸手続などに関して期間短縮等の措置を講じても完成は現状、平成31年度になる予定。立地場所については、ポロト湖の東側高台に整備する。慰霊施設周辺の部分については、白老町など地元の協力を得ながら進めてまいりたい。この整備予定地が民間所有地ということもあり、土地の取得については、現在、土地所有者と協議を行っているところだが、早くて平成29年度となり、土地取得後に埋蔵文化財の試掘調査を実施することになる。もし文化財が発掘された場合には、更に詳細な調査が必要になり、そうすると工程に遅れが生じるおそれがある。できる限り早期に整備してほしいという要望は承っているが、文化財保護も慎重に行ってほしいという意向も伺っているので、できる限り期間を短縮するとともに、丁寧に対応してまいりたいと考えている。(p. 4)

 地元の人にとっては周知の事実であったのだろうけれど、「慰霊施設」の建設予定地が私有地だとは知らなかった。地元では既に投機心が駆り立てられているのだろうか。土地所有者は、あっさりと売却に応じるのだろうか。さらに、1年余前に書いた記事で、カナダの考古学者が発掘調査に協力しなければ開発を阻止できるのだと主張していたことを紹介しておいたが、まず、日本の、しかも北海道の考古学者には、そのような骨のある人はいるだろうか。学会が総意で反対しなければ、政府や地方自治体の関係機関は、どこかから考古学者の補充要因を探して連れてくることだろう。とはいうものの、北海道アイヌ協会をはじめ、地元の関係者は、慰霊を願う遺骨のような「掘り出し物」が何も出てこないことを願いながら、やきもきすることであろう。次の質疑応答は、そういう関心/懸念とも関係しているのではないだろうか。

○ 慰霊施設の整備スケジュールについて、「文化財保護を慎重に行ってほしい」というのは、出土した文化財に対してということか。
 ○ そうです。
○ そのあたりは遺跡包含地なのか。
 ○ まずは試掘をしてみないとなんとも言えないが、あり得るとは聞いている。
(p. 6)

 上の説明は、さらに次のように続く。(下線、太字は追加。以下、同じ。)

 遺骨の集約については、まずはきちんと返還に向けた取り組みを引き続き推進することが前提の上で、アイヌの人々による尊厳ある慰霊を実現し、また、アイヌの人々による受け入れ体制が整うまでの間の遺骨等の適切な管理を目的に慰霊施設を整備する。そのような目的を踏まえ、静謐な慰霊環境を整備するということを主眼とし、一般の来訪者を積極的に迎え入れるような性格の施設とはしない。特に中核区域に博物館や公園を整備するので、そちらと重複する機能や、調査・学術研究といった機能は担わないこととしている。
(pp. 4-5)

 この部分を読みながら、風向きがやや変わりつつあるのかなと感じる。盗掘された遺骨を「慰霊」という偽装の下にさらに研究材料とするなどという批判が出れば、今後の文化財の返還に関する諸外国との交渉や国際的な威信に大きなマイナスとなりかねないということが政府官僚の間でようやく認識されてきたのかなと推測する。しかし、上位のアイヌ政策推進会議の決定は不変のままであり、「人骨」学者と北海道アイヌ協会はそれを根拠として研究を主張するのかもしれず、まだまだ予断は許されない状況であることに変わりはあるまい。

 次に、「大学が保管している特定遺骨等の返還についての手続」が説明されているが、これについてはここで取り上げたので省くことにする。文書は、それぞれで読んでいただければよいだろう。ここでは、説明の中のDNA鑑定に関する部分を抜粋しておく。

 まず、特定遺骨返還のためにDNA鑑定を実施することについて、アイヌ関係団体の皆さんに対して十分な説明をし、理解を得るということを前提としている。
 また、DNA鑑定だけではなく、関係する資料から一定の親族の関係が類推できることが必要であるということ。そもそも鑑定を実施したいという希望がある場合にこれを実施するのだが、複雑な血縁関係のDNA鑑定には限界があるので、DNA鑑定の有効性等について十分な説明をした上で、その実施の希望の有無を聞く必要があるとしている。
 DNA鑑定の具体的な実施方法については、戦没者遺骨等で行われているDNA鑑定の方法と同様としている。
 鑑定実施にあたっての課題は、アイヌ遺骨固有の課題となるが、まずはコンタミネーションの回避が挙げられる。特定遺骨は多くの方がその骨に触っている可能性があるので、DNA抽出の前に汚染を除去することが特に必要である。また、アイヌ遺骨の場合、遺骨と遺族の方の血縁が遠いので、戦没者遺骨等の場合と比べると血縁関係の判断の有用性が低くなる場合がある
 DNA鑑定を実施する際の遵守すべき事項については、尊厳を持って丁重に扱うこと、個人情報保護の観点から匿名化するといったことについて、まとめられている。
検討会における今後の課題については、今年度は特定遺骨の返還手続について詳細を検討したが、来年度は個体が特定されていない遺骨に係るDNA鑑定等についての実効性・可能性などについて検討する予定
(pp. 5-6)

 遺骨の問題が表面化してきた頃、「汚染の除去」が話題に上ったことがあった。(例えば、ここここここ。)「汚染」を除去してしまう前に、その「汚染」の中に遺骨の盗掘に関係した人々の証拠(DNA)が得られる可能性は皆無なのであろうか。これには遺骨を損傷する必要はないと思われるが。法医学の専門家が複数加わっていた同省の「検討会」では、恐らく話題にもなっていないだろうが、文部科学省は「きちんと国としての責任を果たしてまいりたいと考えている」(p. 6)とのことであり、その辺は何もしないのだろうか。
 
 「血縁関係の判断の有用性」に関しても、日本国の「戸籍」とは関係なく養子のような形で育てられたりして、文化的にアイヌになった子孫の場合にはDNAによる血縁関係の鑑定は無意味であろう。確かに、文科省の検討会はいろいろと学識と知恵を働かせた結果が出ていると理解できるが、アイヌアイデンティティという根幹の問題がある。そのように「血を引いて」いない子孫には、DNA鑑定は有用性がないであろう。

 質疑応答部分については、非常に「エキサイティング」な発言があるので、また別途、後日に取り上げることにする。