AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

アイヌの遺骨と血液の研究における類似の課題

 先に言及した海外の研究論文を読むと、「古人骨」研究体制の整備で述べられているこの国の「人骨」の置かれた状況と、1960-70年代に先住民族社会から「収集」されて冷凍保存されている血液標本が置かれた状況に類似した課題があることに気づく。

 オーストラリア先住民族社会におけるヒトゲノム研究の倫理と政治を研究する人類学者であり医師でもあるK氏は、2011年に、先住民のDNA標本の古いコレクションをどうしたらよいかについて彼女に助けを求めたオーストラリア国立大学の遺伝学教授のE氏を訪ねた。E教授は、血液のコレクションが科学的研究に対して閉じられてから10年以上にわたって、それをどうしたらよいかについて助言を求めていたが、効無しのままであった。

 大学の医学部の建物は、建て替えのために解体工事中であった。セキュリテイを通過して研究室に案内されると、机には1辺が20cmほどの木製箱が置かれていた。正面のラベルには「マスター研究記録帳索引第1巻」と書かれていた。箱の中には、AからZまでの手書き索引カードが仕切りカードと共に入っていた。それぞれのカードには、左上の角に3文字の暗号が書かれていて、それぞれの暗号はオーストラリア先住民族共同体や他の集団または国を意味していた。各暗号の下には、標本番号、採取日、それぞれの分析結果の記録簿が記録されていた。全部で10万件以上の標本がこの箱の中に索引化されていて、K氏がE教授と協議したかった特定の先住民族共同体から採取された約7,000の標本が含まれていた。K氏は、カードを繰っていきながら、圧倒される気持ちになった。すべてのカード、世界の隅々、一つひとつの3文字暗号が、何十年もの植民地主義の歴史と科学的努力を凝縮していた。これらの断片のすべてが、その箱の中に集約されていた。

(今夜は、ここまで。次は、また気が向いた時に。)