AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

<アイヌ遺骨>ドイツに17体 北海道協会が返還要請へ/返還に壁、独研究140年の歴史(毎日新聞)(w/ P.S.3つ)

<アイヌ遺骨>ドイツに17体 北海道協会が返還要請へ毎日新聞 8月7日(日)7時30分配信)


 【ベルリン中西啓介】研究目的で収集されたアイヌ民族の遺骨が、ドイツに17体保管されていることが分かった。当時の記録から、1体は19世紀にドイツ人が札幌市内の墓から盗掘し、運び込んだことも判明。北海道アイヌ協会によると、独国内で遺骨が確認されたのは初めて。協会は今後、日本政府を通じてドイツ側に調査や返還を求める方針だ。

【当時描かれた頭骨のスケッチ】

 ◇頭骨1体は札幌で盗掘

 毎日新聞が入手した収蔵リストなどによると、独国内で保管されているのは、国所有の頭骨10体と骨1体▽民間団体「ベルリン人類学民族学先史学協会」(BGAEU)が所有する頭骨6体--の計17体の遺骨。

 このうち国所有4体とBGAEUの1体は日本国内で収集されたとみられる。11体は今のロシア・サハリンで収集され、1体の収集地は不明。いずれも19世紀後半以降、人類学などの研究資料として集められた。

 国所有の遺骨はシャリテー・ベルリン医大が資料として収集した約8000体の骨の一部で、政府系機関ベルリン博物館連合(SMB)が管理する。戦争や東西ドイツ分裂により、長期間放置された。現在、データベース化に向けた作業が進められている。

 SMBは、サハリンで収集された頭骨6体の写真を開示。頭骨の左側頭部に「Aino Sachalin Jacobsen」とあった。当時、アイヌの表記に使われた「Aino」と収集場所、収集者が記録された。

 BGAEUは頭骨6体の確認を終えており、今後SMBが作成するデータベースに統合される。また、BGAEUにある頭骨1体は、札幌で盗掘されたことが1880年発行のドイツの民族学誌から判明した。

 北海道アイヌ協会の佐藤幸雄事務局次長は「ドイツでの発見は、なぜアイヌが人類学のために研究され、盗掘の手法が用いられたのかを解明する手がかりになる」と話す。協会は海外に散逸した遺骨について国に調査の徹底を要請している。

<アイヌ遺骨>返還に壁、独研究140年の歴史毎日新聞 8月7日(日)8時0分配信)


 【ベルリン中西啓介】ドイツで見つかったアイヌ民族の遺骨について、北海道アイヌ協会は返還を求める方針だ。だが、ドイツ側は「不適切な収集」の裏付けなどが必要だとの考えだ。長年放置されてきた遺骨の調査には、140年以上という歴史の壁が立ちはだかっている。

 ◇「不適切収集」の証明必要

 ベルリン中心部の国立図書館に19世紀発行の民族学誌が収蔵されていた。すり切れた布張りの表紙を開くと、アイヌの頭骨のイラストが次々と現れた。

 執筆したのは、ベルリン大教授のルドルフ・ウィルヒョウ(1821~1902年)。細胞病理学や人類学の礎を作った「権威」だ。

 欧州でのアイヌ研究は、1860年代に英国で初めて遺骨が公開されたことで活発化した。「最も原始的な民族」とされたアイヌの骨を計測し、民族の特徴や人類の系統を解明しようとしたのだ。

 ウィルヒョウは、1873年、同誌でアイヌの遺骨を入手したことを報告。93年の同誌では、7体の頭骨を保有していることを明かし「サンプルを増やしたい。東アジアの仲間にアイヌの骨を送るようお願いしたい」と熱心に訴えた。

 「シュレージンガー氏が札幌の農業試験場偕楽園)で収集した頭骨」。82年の民族学誌で、ウィルヒョウは具体的な収集者や収集場所を記載した。偕楽園は1871(明治4)年開設の札幌初の公園だ。

 他の記録では、旅行家のウィルヘルム・ヨーストら複数のドイツ人が遺骨を独国内に運んだことも分かった。

 運ばれた遺骨は今、どこにあるのか。人類学の資料を保管する研究機関に問い合わせる中で、ウィルヒョウが設立を主導した「ベルリン人類学民族学先史学協会」(BGAEU)と、彼が勤めたシャリテー・ベルリン医科大の収蔵品に残されていることが分かった。

 BGAEU代表のウォルフラーム・シーア・ベルリン自由大教授は6月上旬、6体の遺骨が記録された収蔵リストを提示。「33番にシュレージンガーとあります」と説明した。

 該当欄には「Aino(アイヌ) Yeso(蝦夷(えぞ)) Sapporo(札幌) Schlesinger(シュレージンガー)」とあった。毎日新聞の取材を受け、BGAEUは7月、ベルリン市内にある収蔵庫を調査。この遺骨を含む6体が今も保管されていることを確認した。

 シュレージンガーはどのように遺骨を入手したのか。それを解く鍵は、ベルリンから約540キロ離れた独西部ボンにあった。

 「冒とく行為がもたらす危険を避けるため、夜の闇に紛れ、素早く手前にあった頭骨を入手した」。1880年の民族学誌で、シュレージンガーが盗掘を報告したことが記録されていた。

 この民族学誌を所有するボン大のハンスディーター・ウールシュレーガー博士は「当時は墓の盗掘に恥の意識がなかったことの表れだ」と指摘。「さらに多くの遺骨が収集された可能性が高く、独国内の研究機関は独自に調査すべきだ」としている。

 ◇外交交渉、不可欠に

 ドイツにあるアイヌの遺骨の多くは19世紀に収集された。戦争などにより長期間放置されたことから、返還に必要な情報の不足も懸念される。今回取材で見つかった17体の遺骨のうち、国所有の11体を管理するベルリン博物館連合(SMB)が所属する国の財団は、遺骨などの扱いに関する基本方針を公表している。

 人体由来の収蔵品について、本人らの意思に反し「不適切に」収蔵された物でないかを調査。不適切だったり、収集地から異論が出たりした場合は話し合うとし「希望があれば返還も可能」とする。6体所有するBGAEUもこれに準拠する。

 だが、不適切の定義は、収蔵者側の判断に委ねられている。また、SMBの収蔵品は国に所有権があるため、SMBは「アイヌ側との話し合いには応じるが、返還は政府の判断だ」と言う。BGAEUは「アイヌだからという理由で包括返還することはない」とし、遺骨の由来の特定を優先させる考えだ。

 ベルリンには19世紀以降、人類学の研究拠点として1万体以上とも言われる遺骨が集められた。「20世紀最初の虐殺」とされるドイツの植民地・独領南西アフリカ(現ナミビア)でのヘレロ人虐殺でも、殺されたヘレロ人の遺骨が研究用として独国内に運ばれた。

 遺骨の存在が外交問題化したことから、2011年にシャリテー・ベルリン医科大は20体の遺骨をナミビアに返還している。

 ドイツ内のアイヌの遺骨のうち、取材で不適切な収集が確認できたのは、札幌で盗掘されたBGAEUの頭骨1体のみだが、北海道アイヌ協会は返還の対象を広げたい考えだ。

 SMBが保管する遺骨の一部は、収集したヤーコブセンの旅行記から、サハリン南部コルサコフで収集されたことが分かっている。協会は、これらの遺骨についても、北海道に住むアイヌの祖先である可能性があるとし、調査を求める考えだ。

 協会は日本国内に残された遺骨とドイツの頭骨を照合し、元の状態に復元した上で慰霊することを目指している。遺骨返還の実現には、日独の外交交渉が不可欠だ。

 ◇ドイツに運ばれた遺骨の収集地と数

国が所有し政府系機関SMBが管理=計11体

 ・サハリンで収集された頭骨6体

 ・北海道で収集されたとみられる頭骨4体

 ・収集地不明1体

民間団体BGAEUが所有=計6体

 ・札幌で収集された頭骨(シュレージンガーが収集)1体

 ・サハリンで収集されたとみられる頭骨5体

 なるほどね。重層的に絡み合い、捻じれてもきた。
Cf. ドイツの新「文化財保護法」:担当大臣とのインタビュー

P.S.(23:30):2カ月前に「遺骨・副葬品の国際的返還を求めて、いよいよ動き出すのか?」という記事を書いた。政府のアイヌ政策関連会議と北海道アイヌ協会の関係、そしてアイヌ遺骨の集約を含む「政策推進」の広報役も引き受けているような道新と毎日新聞の報道ということを合わせて考えると、慎重に見て行かざるを得ない。

 まず第一に、ここここで報告されている調査報告との連携があるのか、ないのか。

①「日本政府を通じてドイツ側に調査や返還を求める方針」/「北海道アイヌ協会は返還を求める方針」
 このたびのアイヌ遺骨返還の経緯を見ているドイツ側の関係者は、祭祀承継者には返すと言ってくるかもしれない。北海道アイヌ協会は、「返還」とは「集約」の意味であり、そこでDNA鑑定によって「歴史を解明」するための貴重な材料でもある、これは「知る権利の希求」であると主張すれば、相手は納得するだろうか。実際、既に次のような当然予期される反応が返ってきている。

不適切の定義は、収蔵者側の判断に委ねられている。また、SMBの収蔵品は国に所有権があるため、SMBは「アイヌ側との話し合いには応じるが、返還は政府の判断だ」と言う。BGAEUは「アイヌだからという理由で包括返還することはない」とし、遺骨の由来の特定を優先させる考えだ。

 ある意味で、北海道アイヌ協会のこれまでの遺骨に対する態度と方針が国際的に試される機会でもあろう。

②「ドイツでの発見は、なぜアイヌが人類学のために研究され、盗掘の手法が用いられたのかを解明する手がかりになる」
 そりゃあ、「冒とく行為がもたらす危険を避けるため、夜の闇に紛れ、素早く手前にあった頭骨を入手した」と、真昼間に大っぴらに掘って持ち帰れないからでしょう。日本の人類学者も似たようなことを書いたり言ったりしていたと思いますが、日本でも同じことを解明しなくてよいのですか、佐藤次長!

③「ドイツ内のアイヌの遺骨のうち、取材で不適切な収集が確認できたのは、札幌で盗掘されたBGAEUの頭骨1体のみだが、北海道アイヌ協会は返還の対象を広げたい考えだ。」
 これも同じく、祭祀承継者には返すと言われるかも。すると、それは不明だから、新たに建設される「慰霊施設」に集約しますと言うのだろう。「戦争などにより長期間放置されたことから、返還に必要な情報の不足も懸念される」けれども、日本の優秀な人類学者たちは喜んでDNA鑑定を行って特定に協力してくれるでしょう。

④「サンプルを増やしたい。東アジアの仲間にアイヌの骨を送るようお願いしたい」
 現代でも日本国内の「人骨」学者(自然人類学者)は、同じことを言っております。

⓹「SMBが保管する遺骨の一部は、収集したヤーコブセンの旅行記から、サハリン南部コルサコフで収集されたことが分かっている。協会は、これらの遺骨についても、北海道に住むアイヌの祖先である可能性があるとし、調査を求める考えだ。」
 サハリンのアイヌに知らせて委ねた方が良くない? ドイツ側は、返還してから万一間違いが判明するといけないから、DNA鑑定で確認してからお返ししますと言ってくるかも。サハリンのアイヌは、それを素直に受け入れるだろうか?

 あと2つ、新聞記事には出ていない重要なことがあるけれど、それはまだここでは公開しないでおく。(どのくらいの期間のデータか分からないが、ここのところのアクセス先の43.7%が「従兄弟/従姉妹の日」というのを見ると、力が抜けてくる。)

P.S. #2(08.15, 0:03):この新聞記事について「疑義が多くあります」というコメントも戴いていたが、その後も時々、気にかかっている。
 熱心な毎日新聞の独自調査による記事なのか。しかし、普通なら、先住民族団体が先に、水面下で交渉をするのではないか? ドイツに関して北海道アイヌ協会は情報を持ってなかった? しかし、最初にリンクしたドイツ情報は、当然入手済みであろう。「協会は海外に散逸した遺骨について国に調査の徹底を要請している」とのことだが、国がまったく動かないからこういう記事が出て来たのか、それとも、国と一緒にやっていますよと煙幕を張るためか? いずれにせよ、まだ何もアプローチされていないのであれば、これから少なくとも数年、あるいはもっと長丁場の交渉となることだろう。
 札幌から持ち去られてということだが、札幌アイヌ協会は「返還」を求めるのだろうか、それとも「慰霊と研究」のために「慰霊施設」に「帰還」となるのだろうか。

P.S. #3(09.10):アイヌ遺骨に関する毎日新聞報道から推理する。
 上の記事は、6日の北海道アイヌ協会のシンポジウムの翌日に出たということにも意味がありそうである。
 さて、毎日新聞の続報(「独、研究で収集 『怒りを通り越した』協会理事長が返還訴え」「日本政府が調査着手 独から返還に向け」、そして「記者の目 ドイツで放置 アイヌ遺骨問題」の3本)に、上記の私の疑問に答えてくれる記述があった。

 ①ドイツの遺骨に関する情報発掘は、同紙の努力によるものであると強調されている。(「毎日新聞の取材で・・・判明した」、「毎日新聞の報道で明らかになった」、「独国内に17体のアイヌの遺骨・・・毎日新聞の報道で明らかになった」など。)

 ②「アイヌ総合政策室は『具体的な遺骨の情報は報道により初めて把握した』」という自らの怠慢を露呈している。

 ③「ドイツ人が遺骨を盗掘していた事実に、怒りを通り越した思いだ」と加藤理事長が述べたという8月9日の記事には、「ロシアなどでも遺骨が保管されている可能性が高く、協会は今後、遺骨問題の国際広報活動も強化する」と述べられている。ロシアに関する情報は、中西記者が加藤理事長から得た情報だろうか。7月28日の第26回作業部会の「議事概要」(p. 6)に、北海道アイヌ協会の代表者の一人による次のような発言がある。

 北海道アイヌ協会に海外にもアイヌ遺骨があるという情報が入ってきており、資料に基づいた確かな裏づけもあるドイツやロシアにあわせて75体ぐらいあると聞いている。遺骨は日本から行っているのだから、国から国への返還という形になるだろうし、先ほど申し上げた教育委員会との関係もあるので、それらを踏まえて今後の検討をお願いしたい。

 この発言に対する返事は、あったのか無かったのか、記録されていない。意図については分からないが、結果的に、毎日新聞の報道が政府を動かすために役に立ったということか? アイヌ総合政策室が「北海道アイヌ協会に対し、海外にある遺骨に関する資料の提供を要請した」のは、いつ(作業部会後あるいは報道後)なのだろうか。遺骨問題で「巻き返し」を目指す同協会と毎日新聞のコラボか?(だからといって、政府の政策室が絡んでいないという証拠はない。ドイツの記者を動かした毎日新聞本社に働きかけた人・団体などがある可能性もある。)

 それにしても、後でも述べるが、アイヌ協会が独自で外交を行うという意識はまったくなさそうである。9日の記事に、協会が「政府に海外に散逸した遺骨を調査するよう要請している」とあり、加藤理事長は「きちっとした対応をドイツ側にもお願いしたい」と話したとのこと。アメリカのケネディ大使や(領事館を通じて)オバマ大統領に民族衣装を贈ったりしているのに、なぜ直接、ドイツ大使館に行かないのだろう。

 ④ここからは、上の3本の記事の一部に対するコメントである。
 9日の記事:

 協会は今後、海外の学術関係者を対象に広報活動を展開する方針。加藤氏は8月末から京都で開かれる世界考古学会議に参加。先住民の歴史や文化保護などについて講演する予定で「ドイツでの遺骨発見を紹介し、人権問題としての遺骨の存在について、世界的関心を高めたい」と話している。

 下線を引いた箇所は、世界考古学会議を意識してのことであろうが、「広報活動」なんて、のん気に聞こえてしまう。直接、遺骨があるところへ「交渉」に行ったり、独自の担当者を派遣したりはしないようである。これまで北海道アイヌ協会が何もしない間に、他国の先住民族が「世界的関心を高め」る多大な努力をしてきたというのに。どれだけの団体やサイトが「人権問題」として先住民族の遺骨の返還に取り組んでいるか、私が把握しているものだけでもリストアップしてみましょうか? 国内にある遺骨に関しても、この四半世紀の間に北海道アイヌ協会がすっかり遅れてしまっていることを認識するべきである。加藤理事長は、今度は「目が覚めた」ではなく「怒りを通り越した思い」だそうであるから、今後の「理事長の動向」に期待をもって注目しよう。同協会の活動は、国内の関心をもつ人々にさえ見えていないのである。

 10日の記事:

 独国内に17体のアイヌの遺骨が収蔵されていることは、毎日新聞の報道で明らかになった。うち1体は19世紀末、札幌のアイヌの墓からドイツ人が盗掘していたことが分かっている。北海道アイヌ協会は遺骨の身元確認と返還を求めている。

 誰(どの機関)が手助けしたのかも含めて、このようなことがどのようにして可能だったのか明らかにされなければならないだろう。

 10日の記事:

 SMBの遺骨は、独中央政府と連邦州で構成する国の財団が所有権を持つ。独外務省は10日、「返還については、財団が国の支援によって作成した指針に基づいて行う」としている。盗掘により収集された遺骨は、ドイツの基準で返還対象となる可能性が高い。遺骨の調査が進んだ場合、返還には日本政府や北海道アイヌ協会による返還要請が必要になるとみられている。

 先住民族の権利宣言をしっかり利用しましょう。それに、せっかく政府代表団に入って先住民族に関する世界会議(WCIP)に出席してきたのだから、その「成果文書」を使う機会でもある。両文書がまったく言及されていないのも、どことなく気になる。(日本政府の要請が必要になるというのは、誰の見解なのでしょう? 「必要」という根拠は?)

 9月2日の「記者の目」:

 北海道アイヌ協会の加藤忠理事長(77)は「遺骨(の放置)はたとえ一体でも人間の尊厳の問題だ」と訴える。だが、独政府は「返還(するか否か)は所有財団の判断」と距離を置く。独側の指針では返還には「不適切な収集」の裏付けが必要になる。正確に遺骨の由来を全て特定することは現実的には困難だ。外交手段による解決を早期に模索すべきだ

 「外交手段」――ここでいう「外交」とは、既述のとおり、国家間の外交しか意識されていない――によって、特定できない遺骨を誰に、どういう根拠で返還することになるのだろうか。国内政策との整合性という点で、同協会だけでなく、今後の日本政府の対応が非常に興味深い。

 同じように、第26回作業部会の「議事概要」に、遺骨を返さないと言っている大学や博物館についての発言もあった。ここでのやり取りは面白いので、「議事概要」の記事で取り上げる予定でもあったが、少し長めに引用しておく。2つ目の〇は、とろい、とろい事務局(政府)の答弁である。3つめの〇の発言者はアイヌの誰かだろうが、意図がよく分からない。

○ 今、大学の遺骨は返還する、集約する方向で進めていると思うが、博物館についてはどうなのか。
 一時、大学でも、これは大学の骨なので返さないというような話も聞いており、博物館においてもこれは文化財だから博物館のものだというような話を噂として聞くのだが、どうなのか。
 ○ 本日は博物館にある現況についての報告なので、それについて今後どう扱うかについては各館の考え方を聴取するなど必要な情報を整理した上で、改めて次回以降の部会で議論させていただきたい。
○ 調査にあたって遺骨を返すとか返さないとか、そういうことを言わないようにしたほうがいいと思う。そういう話はアイヌに入ってくる。大学にもそういう噂がある。そういうことは言わないようにしないと、聞いているほうは何だと思ってしまう。
(p. 7)

遺骨返還訴訟を起こして苦闘してきた小川隆吉さんをはじめとする原告たちや、できれば自分で海外のアイヌ遺骨の返還を交渉しようと努力されていたあるアイヌの方々には、きっと強い言い分があることだろう。そのような人たちの声を聴いてみたい。

 毎日新聞に出し抜かれて悔しい思いをしている他紙は、アイヌの血液を探してみてはいかがかな。日本だけでなく、北米、欧州、豪州の大学や研究所できっと見つかることでしょう。