AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

A Double-edged Sword(諸刃の剣):遺伝人類学と先住民族の権利(1)

 古代人のDNAの分析結果が先住民族アイデンティティ、土地請求権、遺骨返還などにどのような意味合いを持つのかを議論する、6日の北海道アイヌ協会の「事業」の中身よりもはるかに面白そうな――「そうな」というのは、その「事業」の様子をまだ間接的にしか聞いていないからである――国際シンポジウムが昨年カナダで開催された。その「事業」報告書や動画を入手してはいるのだが、アイヌ協会の「事業」の様子を受けて、さらに、北の大地で「遺骨返還問題はまだ終わっていない」と闘っている人たち――サケ漁にでも出かけているのかと思っていたのだが(笑)*1――の気持ちを聞いて、その報告書をチビリチビリと、徒労に終わるのかもしれないが熱中症でダウンしないように注意しながら、ここで標題のシリーズの下、紹介していこうかと考えつつある。

 その準備をしていて、世界的に有名なある遺伝人類学*2者の名前に遭遇した。日本のことではないので、このブログには"Against the Wind"から転載していないが、古くからの読者は、その初期の「シッティング・ブルの遺骨をめぐって」という記事を記憶されているだろうか。そこに、Eske Willerslevというデンマークの遺伝人類学者が登場している。シッティング ブルの遺骨を取り戻すために、その子孫であるラポイントさんがDNA鑑定を依頼したデンマークの学者である。いつだったかは忘れたが、政府の関連会議でアイヌ遺骨のDNA鑑定問題が出た時に、過去を真摯に反省していない日本の研究者に行なわせるくらいなら海外の学者に行なってもらう方が良いというようなことをここで書いたことがある*3。彼は、本当は1本目に書こうとしていた「ケネウィック マン」の鑑定を行い、北米先住民族の祖先であると断定した研究グループの一人でもある*4

 その1本目を書き始めたところで、あることを調べようとしていたら、下に紹介する映像に先ほど遭遇した。Willerslev氏は、昨年夏(7月11日-12日)の京都大学でのシンポジウムに日本を訪れていたようである。私は、最初に英語版を見つけたのだが、幸いにも同時通訳版も公開されているので、後者をここにお借りして紹介しておきたい。映像自体は、どちらも先月の5日に公開されたばかりである。これを書き始めた約1時間前の時点で、英語版の視聴回数が59回、日本語版が47回であった。シンポジウムの参加者がどのくらいだったのか知らないが、当該分野の研究者がほとんどだったのではないだろうか。もったいなくもあり、そういうものかという思いもある。

 遺伝人類学研究の最先端報告であり、このような動向を背景に、今後、ゲノミックスと先住民族の権利の問題が議論されることになるであろう。アイヌ民族の「歴史の解明」に強い関心をお持ちの北海道アイヌ協会の「幹部」の方々には非常に興味深い講演だと思うが、どなたか参加されたのであろうか?

「第2回 京都大学稲盛財団合同京都賞シンポジウム [生物科学分野]「人類はどのように世界に広まり文化的・生物学的多様性を形成したのか?」エシュケ ウィラースレフ (Eske Willerslev)」posted by KyoDaiOcw at https://youtu.be/JAiY2rOEMHs

 原語版の"2nd KUIP Symposium [Biological Sciences] Eske Willerslev"は、こちら

*1:このことと関連して、実は、来年のエイプリルフールのネタが出来上がっている。来年まで現実とならないことを祈る。(笑)

*2:進化生物学、自然人類学、生物科学、古代DNA研究、等々の呼び方があるようであるが、ここでは一応、こう表記しておく。

*3:実際、現在、アイヌの個人の祭祀承継者への遺骨返還にあたってのDNA鑑定の可能性とその手続きが政府の関連会議で整えられつつあるが、仮に当該アイヌの請求者がDNA鑑定に同意する場合、その鑑定を誰に行なわせるかということに関して、請求者が選択する権利と、その際の政府による費用負担が明記されるべきだと考える。

*4:この映像でも、20分過ぎ辺りからその話が出てくる。関連して、アイヌとのつながりのなさについても。